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34 おっ買いっ物!
しおりを挟むあの後、薬師ギルド前でマーカスと別れた俺達は市場に向かって歩いていた。
「そういえばアーク、薬師ギルドタグの事、いつ許可を出したの?」
「・・・ああ、あれな。お前を抱き潰した後に副ギルド長が宿に来てな、その時に。宿の方には連絡があったら教えてくれと頼んでおいたからな」
「・・・・・・なるほど、俺が抱き潰・・・・・・!」
さり気なく言われて何気なく呟いたノアは、その事に思い至って、かあーっと顔を真っ赤にして口籠もった。
それを見てクスッと笑うアーク。
ノアは揶揄われた事に気付いて頬を膨らませていた。
ほんわかした空気で市場へ辿り着くと、買い物を楽しみにしていたノアの機嫌は爆上がりした。
---見たこと無い食材がいっぱい! ナニアレ、美味しそう!
「ノア」
---あっ! あっちはいろんな調味料置いてる!
「・・・ノア」
---綺麗な髪飾り。見てみたい!
「---ノア、落ち着け」
「え?!」
アークにギュッと抱きしめられてハッとすれば、周りの買い物客や店の人がこちらをチラチラ見ていた。
え、あれ?
「・・・・・・えーと・・・?」
「はしゃぐ気持ちは分かるが、ふらふらするな。俺と手を繋げ。無理なら紐で繋ぐぞ」
「っえ?! あ、あの、ごごごめんなさい・・・」
自分じゃ気が付かなかったけど、あっちこっちふらふらしてたみたいだ。
初めての街での初めての買い物に浮かれすぎた。
「ほら、店は逃げないぞ」
そういってアークが手を繋いでくれた。
ほんっとうにスミマセン!
お手数おかけします。
「俺は別に迷惑とか思ってないから。寧ろもっと頼って甘えて欲しい」
「ぅえ、うん・・・ありがとう」
何でアークは俺の気持ち分かるんだろう。
「お前は無愛想だが、結構顔に出てるぞ。後、目がな、感情で揺れ動く。俺はそういうの読むの上手いし、何より番いだからな」
「そんなに出てる? でもまあ、番いだからっていうのは分かるかも。心の奥で繋がっている安心感がある」
「だろ? 気にしないで好きなことをしていいが、俺から離れたりするなよ? 何をしでかすか分からないからな(俺が)」
「・・・分かった。(俺がしでかすから)離れないように気をつける」
周りで聞き耳を立てていた人は引いていた。
『凄い独占欲。お相手の番いさん、気付いてないよな。貴方に何かあったら旦那さんが暴走するって、そういう意味だよ!』
そう思ってても教えてあげられない。
牽制が凄いな!
『美人な番いさん、そのまま彼の腕の中で大人しくしててね?!』
皆、心の中で祈っていた。
そんなやり取りをして、目的である薬草屋へと辿り着くと、店内には見慣れた薬草のほかに、この土地独自のモノらしい薬草もあった。
一般的な薬草は誰でも買えるが、一部の薬草は管理されていて、薬師ギルドタグで身元確認が取れた者にしか販売しないそうだ。
「確かに稀少だったり劇物だったら取り扱えないし危険だものね」
「おお、お前さんよく分かっているのお。そうなんじゃよ、それを分かってない若いヤツも多くての、タグのランクによっては売れないんじゃ」
「えーと、じゃあ俺は買えるかな?」
そういって店主のお爺さんにタグを見せた。
お爺さんは一目見るなり手をぶるぶる震えさせてそっとタグを触った。
「---おおお、マイスターのタグなんて初めてじゃ・・・! しかも王都の本部のお墨付きなんて・・・、お前さん、若いのに凄いんじゃな」
「---えーと、成り行き?」
「じゃねえよ。ノアの実力だ」
そうかな? 照れる。
お爺さんはひとしきりうんうんと考えていたが、おもむろに奥へと入っていき、暫くして小ぶりな箱を持って戻ってきた。
30㎝四方のサイズだ。
「コレは?」
「マジックボックスじゃよ。マジックバッグの箱形で薬草の保存に使っている。この中に稀少な薬草を保管しておる。時間停止付きじゃからの」
「なるほど」
「お前さんはマイスターだ。この薬草も扱えるだろう。買っていくかの?」
ノアの目がキランと輝いたのが一目で分かった。
アークで無くても一目瞭然だった。
思わずクスッと笑ってしまったが、興奮状態のノアは気付かなかった。
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