迷い子の月下美人

エウラ

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13 ノアとアークの事情 2

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ガクブルのノアに声をかけてひとまず身支度を整える事にした。

発情期はおそらく終わったはず。
ノアの意識はハッキリしているし、俺もフェロモンに釣られなくなった。
---釣られないだけで何時でもノアを抱きたいが。

発情期にヤれば孕みやすいってだけで、いつ性交しても問題はないのだから。

まあ、あの様子だとノアは発情期のこともよく分かってないみたいだが。
身近に教師となる相手がいないんだろうな。
・・・・・・ハブられてるし。


支度の済んだノアが振り向いた。

「・・・着替え終わった。・・・えと、お腹空いてない? 俺はお腹空いて・・・食べながらでも良い?」
「ああ、俺も食べるよ。リビングに行こう」
「・・・なんか、アークの方が家主みたい」
「この3日間、ノアのお世話をずっとしてたからな。ははは」
「・・・・・・はぁ」


リビングのテーブルにご飯を出そうとして、ノアが固まった。

---アレ、俺、発情期中に異空間収納魔法インベントリから出してなかった?

「・・・あの、アーク、俺・・・その」

内心冷や汗ダラダラでアークに声をかける。
アークはなんて事ないように言った。

「インベントリの事ならノアがテント内で普通に使ってたから気にしてないよ。いつもは人前では使ってないんだろ? 発情期でぼんやりしていたし」
「・・・・・・うん。ごめん、変なことに巻き込んじゃって。秘密なんだ。・・・・・・はぁ」

諦めて、インベントリから料理を出す。
発情期中は元々食べる余裕が余りないから、いつも終わった後は腹ぺこだ。

空腹だとろくな事を考えないから、ひとまず腹ごしらえだ、と爺さんはよく言ってたなあ。

「どうぞ、召し上がれ」
「じゃあ遠慮なく、頂く」

そうして和やかに食べ始めたアークを見て、自分もホッとして食べる。
いつもより飢餓感がないのは、さっき言ってたようにアークが俺の面倒を見ていてくれたんだろう。
時たま無理にでも食べさせてくれてたのかも。

ありがたいな。
独りじゃこうもいかなかった。


「---さて、じゃあするか」
「・・・ん?」
「番いになったことだし、俺はお前を死んでも護ることに決めたんだ。だから、その為にもお互いの情報の開示をしよう。・・・どうしても言えない事はあるかもしれんが、知らなかったことで番いを失うなんて目に遭いたくねえし、遭わせねえ」
「・・・・・・アーク」

アークの目は真剣だった。絶対、俺を裏切らない、守り抜くという目だ。
だから俺も頷いた。

番ったからか、心が通じ合っている感じがする。
うん。爺さん、心配ないよ。アークなら、大丈夫。

「分かった。俺は自分の情報を少ししか持ってないけど、話すよ」

そういってまずは自分の事を話し出した。


自分は捨て子で、生後間もない頃に薬師だった爺さんに拾われて育った事。
身元のわかるものはこの古代語の刻まれたプレートのみで、名前はこれからとったもの。
俺が15歳になった頃に爺さんは老衰でぽっくり逝ったこと。

店は元々爺さんが住んでいたものだが、爺さんも余所者だったらしい。
俺を拾う数年前から住んでいたようだ。

爺さんの本当の歳は俺も知らないし、腕の良い薬師で錬金術師だった事しか知らない。
自分の事は何も言わずに死んでしまったから。

「そのお爺さんの名前は? フルネームとか知らないか?」
「・・・普段は『ラグ』爺さんと。たぶん、愛称だったと思う。遺品整理の時、爺さんにあてた古い手紙が出てきて、その宛名が『ラグナロク・ニヴルヘイム』ってなってたから、それがフルネームだと思うんだけど」
「---ラグナロク・・・」

その名に聞き覚えがあるのか、アークは少し考える様子を見せた。

「・・・アーク。何か知ってるの?」
「・・・・・・いや、まだ分からん。お爺さんの件はまた後だな。後はノアの事でまだ何かあるか?」
「---あー、あるって言うか・・・これが一番厄介というか・・・」

ノアが躊躇いがちに言う。

「・・・・・・俺、自分の種族が分からないんだ」
「え? でもギルドに登録するとき鑑定で出るよな。それでも分からないのか?」
「うん。種族不明アンノウンだったんだ。俺も自分じゃ分からなくて・・・特にこれといった種族特性がないみたいで。発情期なんて、結構な種族が持つだろう?」

ノアはギルドタグの種族の欄を開示した。
確かに【種族不明】になっている。

「・・・・・・半分は俺と同じ種族だと思うんだけど。番ったから分かるんだけどさ、同じ感覚があるんだ。ただ、残りは未知のモノである可能性が高い」

そういって今度はアークが種族開示したギルドタグを見せてくれた。

そこには【竜人】と記載されていた。


---竜人---?!


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