9 / 534
5 旅は道連れ世は情け 2
しおりを挟むアークを見たら、何故か呆然としていた。
が、今の俺にはそれに拘っている時間はない。
「アーク、悪い。ちょっと訳ありで今から一週間くらい籠もるから、荷物をマジックバッグに片付けてしまうよ?」
そう声をかけたが返事がない。
とりあえず竈の火を落としてから竈ごと鍋をしまう。
皿やカトラリーは浄化魔法で綺麗にしてからしまう。
荷物が片付いたタイミングでアークが我に返った。
「ええっと、ノア、それは一人で籠もるのか?」
「そう。今までも一人だったし「なら俺も一緒に!」・・・はぁ・・・?!」
名案とばかりに俺の腰を抱いてぐいぐいテントまで押してきた。
だがしかし、アークはテントには入れない。
このテントは俺特製の魔導具だからだ。
「ちょっと、タンマ。コレにアークは入れないよ」
「どうやったら入れる?」
被せるように聞いてきた。
勢いについ敬語になってしまう。
「・・・あ、はい。魔力登録すれば・・・」
「じゃあすぐやっちゃって」
「はい、この魔石に、魔力流して、コレで・・・登録完了、デス」
さわやかなのに有無を言わせない笑顔で頼んで?くるアーク。
なんか俺、流されてる気がするんだけど、コレってマズくないか?
それに、アークが何を思ってこんな行動をしてるのか分からないのがちょっと怖い。
でも確実にアークは発情期の事を知っている。
だから一緒に籠もるって言ってるんだ。
理性では『ヤバい、逃げろ』と言ってるのに、本能が『このままヤっちまえ』と訴える。
---何を迷ってる?
いつも独りで辛い思いをしていたじゃないか。
最初の数日は何をしても体が疼いて、俺は独りベッドで己の欲を自分の手で何度も吐き出す。
出しても出しても中々おさまらない熱を、どうしようもなくて、時たま扱いて吐き出すだけで、後はひたすらシーツや枕を掴んで抱き込んで耐えるしかなかった。
後ろが疼いても、どうすれば良いかなんて知らないから。
でも、そういう相手がいなかっただけで、今はアークに好意を抱いてる。
・・・・・・あれ?
---好意を・・・?
---俺は、アークが・・・好き?
---ついさっき知り合ったばかりなのに?
だけど発情期で徐々に靄がかった頭が考える事を放棄し出した。
気付けばアークは俺とテント内に入っていて、興味深そうに室内を見渡している。
室内の配置を確認しているようだ。
「こっちはトイレで、ここがバスルームと。キッチンにリビング、奥は寝室だな。・・・凄いな、コレ全部ノアがやったのか? まさか、錬金術?」
「・・・・・・ん、俺が・・・錬成した。・・・ね、もういい?」
---ベッド、行きたい。
予定外に来た発情期のせいで、いつもは徐々に疼く体が今回は急激に昂っていた。
腰が砕けてきて立っていられない。
早くベッドで横になりたかった。
だんだん荒い息になってアークに寄りかかってしまう俺をどう思ったか、急に横抱きにして寝室へ向かうアーク。
---良い匂い。
こんなこと初めてだ。
人見知りな俺が、今日知り合ったばかりの男と、発情期を一緒に過ごす・・・なんて。
ベッドで初めての口づけを受けた俺に、理性はもはや残っていなかった。
分かっているのは、アークがSランク冒険者だっていうことと。
俺が今から抱かれるって事だけ・・・。
その先になにが待っているかなんて、今の俺にはどうでも良いことだった。
527
お気に入りに追加
7,355
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
フェンリルさんちの末っ子は人間でした ~神獣に転生した少年の雪原を駆ける狼スローライフ~
空色蜻蛉
ファンタジー
真白山脈に棲むフェンリル三兄弟、末っ子ゼフィリアは元人間である。
どうでもいいことで山が消し飛ぶ大喧嘩を始める兄二匹を「兄たん大好き!」幼児メロメロ作戦で仲裁したり、たまに襲撃してくる神獣ハンターは、人間時代につちかった得意の剣舞で撃退したり。
そう、最強は末っ子ゼフィなのであった。知らないのは本狼ばかりなり。
ブラコンの兄に溺愛され、自由気ままに雪原を駆ける日々を過ごす中、ゼフィは人間時代に負った心の傷を少しずつ癒していく。
スノードームを覗きこむような輝く氷雪の物語をお届けします。
※今回はバトル成分やシリアスは少なめ。ほのぼの明るい話で、主人公がひたすら可愛いです!
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな?
そして今日も何故かオレの服が脱げそうです?
そんなある日、義弟の親友と出会って…。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる