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想いが通じ合ったので
しおりを挟む結局、俺達はパーティーを組んだまま、二人で冒険者稼業をしながらあちこち旅をすることになった。
特に行き先は決めずに、気の向くまま、のんびりと・・・。
だって、アルクもセインもこれからは歳も取らずに二人で長い時を生きるのだから。
焦ることはない。
「そう言えば、セインはずっとその姿のまま冒険者やってたんでしょ? 周りは変に思わなかったのかな?」
「それな。俺の存在性質上、認識を薄くして記憶に残りにくくしてるのよ。皆、だんだんぼやっとした印象になっていって、同一人物って気付かない」
「ふーん、便利なのか寂しいのか・・・」
「気にしたことは無いな。一人だったし。でもそうか、今度はアルクも俺と同じようになるんだな・・・平気?」
「何が? 俺、言ったよね、独りだったって。シリウスが全てだって。セインがいれば良いんだよ」
ちょっとむくれてそう言ったら、セインが顔を赤くした。
なにそれ、可愛い!
セインって、今まで割と無関心無感情で過ごしてたらしくて、こういう関わりがないから免疫無いみたい。
ストレートに愛情表現をするとリアクションに困るらしくて照れるんだよね。
それがめちゃくちゃ可愛くて!!
「その顔も俺だけが見られる・・・!!」
なんて幸せだよ!
「とりあえず、海に向かって行こうか」
俺、まだ行った事が無いんだよね。
聞いた話だとめちゃくちゃ大きい水溜まり?とか、塩辛いなんて事も聞いたな。
「セインは海は当然知ってるよね? どんな感じ?」
「---うーん。見渡す限りの水、かな? 魔物も棲んでるから危険も多いが、魚や貝が美味いぞ」
思い出したのか、涎が口の端から垂れそうだ。
「そっか。じゃあ海を目指してレッツゴー!」
「ここからはかなり遠いが、レッツゴー!!」
意気揚々と出発して海に向かうこと2カ月。
途中の街や村に寄って依頼を受けたり素材を売ったりしながら漸く着いた海辺の街。
「やった---!! 着いた---!!」
「おお、俺も久しぶり。とりあえず宿をとって、美味いモノ食べよう!」
意気揚々と入街して、魚介料理の美味いという宿を教えて貰い、とりあえず一週間宿を取った。
「うちの料理も美味いけど、屋台で焼いてるヤツも新鮮で美味いから食べてきな! でも夕飯が入るだけの余裕をもたせておきなよ」
そういって宿の女将さんがバチコーンとウインクしたのを笑いながら街へ繰り出した。
今はまだお昼前。
でもお腹は空いたし、あちらこちらから食欲をそそる匂いが・・・。
「美味しそう・・・」
「だな」
2人して顔を見合わせて・・・。
「とりあえず、気になる料理を片っ端から買い食い、だな」
「だね!」
ふふふ、と笑いながら目に付いた料理を買っていく。
時間停止付きのマジックバッグにぽいぽいと入れて、幾つかは口にする。
「・・・うっま!」
「良い塩加減だ」
「ナニコレ、めちゃくちゃ美味いんだけど!」
「ああ、久しぶりだなあ・・・2人で食べると更に美味く感じる・・・」
なんか二人とも恍惚として食べていたようで、周りの人が俺も私もとおっちゃんの屋台に買いに走っていったようだった。
少ししておっちゃんが。
「2人のおかげで完売したぜ! ありがとな!! 少しだが御礼だ」
そういって果汁のジュースを奢ってくれた。
俺達はそんなつもりは無くて、キョトンとしていたが、押し付けられた飲み物に罪はないので、ありがたく頂いた。
サッパリしていて美味かったです!
ありがとう。
そんな感じで買い食いをして、夕飯を宿で食べて舌鼓を打ち、俺達は満足して夜を迎えたのだった。
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