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それからの二人は

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泥のように眠り、まだ空気が冷たくて空が真っ暗な時間にふっと目が覚めた。

隣には愛しいアルクトゥルス
俺が散々抱き潰したせいで全く目覚めない。

結局、一日中抱いていた。

アルクの声が、仕草が、痴態が、どれも俺を滾らせて止まない。

それ以上に---。

アルクトゥルスの裸の左胸をそっと指でなぞる。

そこには、きめ細やかで染み一つ無い綺麗な肌に不釣り合いな、一筋の傷痕があった。
だいぶ古い傷だった。
魔物の爪痕であろうその傷が、彼の命を脅かしたに相違ない。




・・・・・・この傷には見覚えがあった。
アルクトゥルスの服を剥いだ時に思い出した。

15年ほど前の、魔物に襲われた商人の家族、その中にいた小さな男の子。

偶然だった。

たまたま移動先の街の近く、街の警備隊や冒険者も良く行き交うこんな場所でまさか魔物が襲ってくるなんて。

不運としか言い様が無かった。

俺が気付いて駆けつけた時には魔物に襲われ、食い散らかされた親らしき男女の下に、庇われたのだろう小さな男の子。

俺が魔物を蹴散らかすと、魔物は去って行った。

「親は駄目だな。・・・・・・子供は・・・死にそうだが、生きてる」

そっと助け起こすと、左胸の心臓の辺りが鋭い爪で裂かれていた。
ポーションをかけると傷は何とか塞がったが、出血が多かったのだろう。

鼓動はどんどん弱くなっていった。

青白い顔に、俺は何故か焦燥感に駆られて、今まで全くする気のなかった行動に出た。

いわゆるを与えることに。

実は天狼シリウスには、あらゆる怪我や病を癒す力があると言われているが、それは本当のことで。

体液を摂取すれば効果てきめんなのだ。
だが、代償も大きい。
もとより神獣である天狼の力は只人には強すぎる猛毒と成り得るのだ。

それに耐えられるモノなどいないだろう・・・。

だが俺はイチかバチかの賭に出た。
自分の腕を切って血を口に含むと、意識のないその子の口に、咽せないように慎重に流し込んで。

コクンと嚥下されたソレは瞬く間に子供を癒した。

力強く打つ鼓動にホッとしたのも束の間、目を覚ましたその子の瞳が金茶から徐々に紅くなっていき、髪も金茶から真っ白になりつつあったのに驚く。

「---完全に馴染むと、俺みたいになるのか?」

ここにいるとになりそうだ。
まだ意識がぽーっとしている子供の頭を撫ぜてから、天狼の姿に戻るとこの場を去ろうとした・・・その時。

「もしかして、しりうす? たすけてくれたの? ありがとう」
「・・・ああ」

夢うつつで子供がそう言ったのを、後になるときっと覚えていないんだろうなと思いつつ、返事をした。

「すごいねぇ、カッコいいねぇ。あのね、あのね。ぼく、おおきくなったら、しりうすのおよめさんになる!」
「・・・・・・そうか、待ってるよ」

眩しそうにそう言われて、子供の戯れ言と思い、そう言い返すとすりっと一度、子供に体を押し付けてから振り返らずにその場をあとにした。

その後、人伝にその子が孤児院に預けられたようだと聞き、ホッとしてそのまま忘れていた。

まさかそんなに苦労しながら、を探していたなんて・・・・・・。

既視感は間違いじゃ無かった。

「・・・ごめんね、何も告げずに、抱いちゃった」

そう呟いて、もう一度目を瞑った。



朝日が高くなった頃、アルクが目を覚ましたようで、俺の毛を弄った・・・・・・ん?

起きようとして起きれなかったアルクに思わず声をかければ。

「・・・・・・セイン?」
「ああ・・・・・・あああ! やべっ」

自分の今の状態に気付いて焦る。

あれ、何で・・・・・・あっあああ・・・・・・!

忘れていた。
朔月だった!

天狼の姿に戻っている。
朔月は力が不安定になりやすく、人の姿になりにくい。

俺はアルクに断って、人型になった・・・・・・が、耳と尻尾が消せない。

「悪いな、黙っていて」

自分の耳と尻尾がへにょってるのが分かる。
ソレをきらきらした瞳で見つめているアルクが可愛い。

俺も大概だな・・・・・・。



結局、両想いなことが分かって、俺はちょっと言い辛かった事を告げた。

「---あのな、俺の血を与えたって言ったろう? アレのせいでさ、お前、俺の眷属になってるんだよ」
「・・・・・・へ?」
「そもそも、俺の精液体液を普通に受け止める事が出来るのはお前だけなんだ」

アルクがキョトンとした。
可愛いなあ、じゃなくて!

「つまりな、俺と同じ生き物になってしまったって事だ。俺には他に眷属はいない。・・・ようは、俺の嫁になって、コレからは歳をとらずに俺と一緒にこのまま永い時を生きるって事で・・・・・・すまない。幼かったお前に何も言わずに、事後承諾のような形になってしまって・・・」

まだ朔月の影響で耳とか出てる状態で、ぺしょんとしていると思う。
アルクは不思議そうな顔で言った。

「ソレって、セインと死ぬまで一緒って事でしょ? 俺にはご褒美でしか無いんだけど?」
「---え」
「だってだって、ずっとシリウスのお嫁さんになりたくて探して、えっと、最初はセイリオスに惹かれて戸惑ったけど、シリウスはセイリオスだったし、俺は喜んで嫁になるよ?」

何処に問題が?と言うアルクをぎゅうっと抱き締めた。

「ずっとずっと、たぶん神様が殺さない限りずっと生きてるんだけど・・・?」

俺の声はたぶん震えている。
拒絶されたら、どうしよう・・・。

「ふふ、そうなんだ。でもまあ、それでも良いよ。独りの寂しさは俺も知ってる。コレからはずっと二人で、ね。楽しいことも辛いことも、半分こ。半分背負えるよ、良かったね!」

なんてことないように、明るい声でアルクトゥルスが告げる。

「・・・・・・アルクトゥルス・・・ありがとう、俺を探してくれて、好きでいてくれて・・・」
「俺こそ、ありがとう。生かしてくれて、セイリオスに出逢えた。神様ありがとうございます。俺にセイリオスを与えて下さって・・・」

今回ばかりは、俺も神様に感謝した。
うん。
何時も割と不敬だけど。

神様、俺に番いをくれてありがとうございます。



遠くで《末永く仲良くね》と言う声が聞こえた気がした。







※一応、キリ良く終わります。
呼んで下さってありがとうございます。

実は、最後まで書いてから『あれ?コレ自分の過去作の【三度目の~】の話となんか被って無いか?』と読み直して見たら、名前とか描写が被ってる・・・!
でも今更変更とか大変だし、自分の作品だからもう良いかなと・・・スミマセン!

こんなぐだぐだ設定でも需要があれば、そして自分に余力があればその後の話を書いてもいいかなぁと思っているので、当分『連載中』のままにしておきます。

・・・他の作品を書かねば!(怒られそうw)

ではでは、ひとまず失礼します。




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