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初めての共同作業 後

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岩山に辿り着いて確認すると、山の中腹に巣くっているのか見えた。

「どうやって行く?」

あいにくと岩肌は絶壁で、周りにイケそうな道は無い。

「---風魔法、使えるか?」
「今更、ここで聞くの? 使えるけど。・・・・・・ああ、そういう・・・」

呆れて言い返すが、使えなかったらどうするつもりだったんだ。
まあ、俺も人のこと言えないけど。
セインの事、Aランクって事しか知らないもんな。

風魔法で体を浮かして翔んで行く。
セインも軽々と翔んで行った。

いやまじ、ここまで来て出来なかったらどうするつもりだったのか、そこら辺、小一時間ほど問い詰めたい。

グリフォンが俺達に気付いて騒ぎ出した。

セインが先手必勝とばかりに突き進もうとするのを手で制して、俺は水魔法で出した水球でグリフォンの顔を覆った。

苦しくて藻掻くが、それくらいじゃ水球は外れない。
暫く藻掻いていたが、溺れて息絶えた。

ソレを確認してからマジックバッグに収納する。
振り向くと、セインはポカンとしている。

---あ。

「え? え? なにそれ、何なの?! 俺の出番一つもないんだけど、ええ・・・?!」
「・・・・・・えーと、ごめん?」

つい、いつもの通りにやっちゃった。

いや、素材を取るのにはコレが効率的で綺麗なもんで、ほとんどこのやり方で済ましてたから、ルーティンと化していた。

「・・・・・・はぁ・・・、さすがアルクってか。そういう感じで素材の品質を高くしてるんだ?」

風魔法で下に下りながらセインがはーっと溜息を吐く。

「ああ、まあ・・・つい。・・・だからごめんて」
「いや別に怒ってるんじゃなくて、そういう魔法の使い方があるんだと思ってさあ。・・・なるほど、次は俺もそうやろう。コレなら潰さないで済むな!」

急にガッツポーズで張り切るセイン。
うん、まあ、頑張れ。


下の開けた場所で昼ご飯を広げる。
俺がマジックバッグに手製の弁当を入れていたので、セインの分も出してやると喜んで食べてくれた。

水筒にスープを作って入れておいたので、ソレもカップに注いで渡す。

「美味い! アルク、料理人になれるんじゃないか? 何で冒険者なんてやってるんだ?」

不思議そうに聞かれて、ああ、そう言えば言ってなかったなと思い至った。

「俺が冒険者になったのは、天狼シリウスを探すためなんだ」
「天狼を・・・? 何故? どこにいるのか分からないのに・・・」
「うん。探して見つけて、言いたいことがあってさ。その為に冒険者になって世界中をまわってるんだ」

たぶん自己満足の為。
生きる意味を見いだしたいだけかも知れない。
けど。

「ケジメ・・・かな」

恋い焦がれている気持ちに、決着を着けないと。
きっと、前に進めないから。

「---そうか。アルクの気持ちはアルクのモノだから、俺は否定も肯定もしないけど。そっか・・・見つかると良いな」

何とも言えないようなセインの顔が心に引っかかったが。


昼休憩をしてから、元来た道を戻って街へと入る。
寄り道はせずにまっすぐギルドに向かった。

今は早い時間だからまだそんなに混んではいないだろう。

案の定、受付窓口はかなり空いていた。

「お帰りなさい、セイリオスさん。依頼達成の報告ですか?」
「ああ、これ。グリフォン狩ってきたからよろしく」
「・・・ぇ、本当ですか?! エミルさん! グ、グリフォンですって! 準備しといて下さいよ!」
「まじ?!」

受付の子が興奮して大騒ぎになった。

「あの、とりあえず依頼完了の手続き・・・」

アルクがおずおずとギルドタグを出して言った。

「あああ、スミマセン! ただいまっ!!」

セインも苦笑してタグを出す。
魔導具で確認して、達成のポイントが入った。

「セイリオスさん、いい加減Sランク昇級試験受けたらどうですか? もったいない」

受付の子がセインに声をかける。
でもセインは眉間にシワを寄せている。

「・・・・・・面倒」

面倒って言ったよ、この人。
そんな理由で昇級蹴ってるんだ?
変わってるなあ。

「へえ、ポイント溜まってるんだ?」
「あっ、アルクトゥルスさんも今回ので溜まりましたよ!! セイリオスさんと一緒にSランク昇級試験受けます?!」

え、マジかぁ・・・。
上がると自由度も高いけど、制約も付くんだよなぁ・・・。
例えば、スタンピードとか戦は今のところ無いけど、国からの要請があれば駆り出されたりする。
基本、ギルドは国とは別機関だけど、国が潰れればギルドの存続も危うい。

だからか、そういう有事の際は垣根を越える約束になってるんだって。

まあ断れるけど、心証は良くない。

だから・・・。

「・・・・・・あー、今は良いかな?」
「ええ---、もったいない!」

---面倒臭い。
俺も人のこと言えなかった(笑)。

「じゃあ、エミルのところに行くかー」
「了解」

すでに手ぐすね引いて待っている姿に二人して噴き出しながら向かった。



「---良い金になったな」

道すがら、セインがぽそっと呟いた。
今日はこのまま宿に戻ろうということになって、そちらに向かって歩いているところだ。

「うん、かなりの額で嬉しい。暫くは大きな依頼を受けなくても大丈夫だな」
「何だ、俺が何時でも手伝ってやるのに」
「ちまちまやるから大丈夫だよ。・・・・・・あ、パーティー解除してないや」

うっかり忘れてた。
まあ、後でも良いか。

「なあ、別にこのままでも良いよ? 俺とずっとパーティー登録してよう?」
「・・・・・・いや、だって俺は数日したらこの街を出るんだけど?」

セインがなんてことないように告げた言葉にギョッとした。

ずっと、なんて無理だろう。
俺は俺のために冒険者になって旅をしているんだ。
それにセインを付き合わせる気はない。

「大丈夫だよ。俺だって別に目的があって冒険者になった訳じゃないんだ。だから、暇つぶし? アルクが気にすることはないよ」
「・・・・・・だが・・・」
「ほら、とりあえず宿で一休みしよう」

セインに言われて、宿が目の前なのに気付いた。

「---うん」

渋りながら宿に入ると、何故かセインはアルクを自分の部屋に連れ込んだ。

「・・・・・・セイン?」

訝しんでアルクが声をかけると、マジックバッグから酒瓶を数本取り出した。

「初共同作業のお祝い。呑もうぜ。・・・呑めるよな?」
「・・・余り強くはないが、呑める」
「ヨシ、じゃあ、初共同作業、そんで初討伐! イエーイ!」
「イ、イエーイ・・・?」

流されてつい酒を口に入れてしまった。
途端に、カーッと胃が熱くなった。
相当強い酒らしい。

自己申告したとおり、アルクは早い段階で酔いが回った。

紅い顔で目が潤んで、呼吸が浅い。

---セインは、ニタリ、とした。



その瞳は、紫から深紅に染まっていた。






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