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東雲は黄昏に囲われていた(物理的に)
しおりを挟む俺がこの世界に転移してはや4年。
今日は俺の18歳の誕生日。
そしてこの世界に転移してちょうど4年。
あっという間だったな。
つい先日の事のように思い出される日々。
デュカス公爵家の正式な騎士団の盛装を身に纏い、成人の儀を受ける。
本来ならばその月生まれの成人予定者でまとめて神殿で行うのだが、なぜか今月は俺しか居らず、アレクシオと騎士団の団長、副団長、そして領地から前デュカス公爵夫妻-アレクシオの両親で俺を本当の息子のように可愛がってくれている二人が参列した。
厳かな雰囲気の中、神官長が祝詞を読み上げ、俺の名を呼ぶ。
「シノノメ・レイ。其方は無事に成人の儀を迎えられました。これから先の人生も幸多からんことを願っています」
「---ありがとうございます」
ついていた膝をあげ、立ち上がって神官長に一礼するとアレクシオ達に向かい合って深く礼をする。
「デュカス公爵様方、団長様方、今まで保護をして頂き、誠にありがとう御座いました。本日より公爵家騎士団に正式に騎士として仕えられる事、望外の喜びです。これからも宜しく御願い致します」
そういって頭を下げていたら、目線の先にアレクシオの靴が目に入った。
何か声をかけられるのかと思って待っていると、アレクシオの両手が俺の頬に向かい・・・。
---へ?
ぐいっと顔を持ち上げられてアレクシオの顔が目の前に・・・イヤ俺の方がやや低いせいで見上げる形だが。
知らず上目遣いのキス待ち顔になっている事も気付かないレイの顔にアレクシオがどんどん近づいて・・・。
ちゅ。
---?
・・・・・・??
今、口にキスされた?
え、なぜ?!
混乱状態のレイの手を恋人繋ぎして歩いて行くアレクシオの後をヨロヨロしながらもついていくレイ。
前デュカス公爵夫妻は笑いを堪えて、騎士団長達は呆れて見送った。
神官長は温かい眼差しだった。
黙々とレイの手を引いてレイが乗ってきた馬のところへとやってくると、何も言わずにレイを乗せてから自分もひらりとレイの後ろに跨がった。
「え? あの、デュカス公爵様?」
「---アレクシオ」
「は?」
「アレクやアルがイヤならせめてアレクシオと呼んで欲しい」
ブスッとした言い方でアレクシオが告げる。
---そう言えば、4年前にも言われたっけ。
恩人を愛称や呼び捨てには出来ないと頑なに断って。
以来、アレクシオ様と言っていたが、これからは仕える家の主で。
だから公爵様と言ったんだけど・・・。
気にしてたんだ、ずっと。
---なんか可愛い。
「・・・アレクシオ様」
「アレクシオ」
「・・・・・・アレクシオ」
「うん、それでいい、今は」
納得した様子で馬首を向けると走り出した。
「・・・・・・えーと、アレクシオ? 何処へ?」
そっちは騎士団の詰め所じゃ無いよね?
「・・・・・・内緒」
そう言ったきり、黙って馬を走らせた。
レイはされるがままに身を任せた。
◇◇◇
少し走った先には可愛らしいロッジ。
公爵家の敷地内の、森に近いところだ。
こんな所にこんな建物があったんだ。
知らなかった。
馬を降りて厩に繋ぐと、再びレイの手を握ってロッジへと入っていく。
キョロキョロと辺りを見回すレイは、アレクシオがなぜこんな所に自分を連れて来たのか全く予想がつかなかった。
普通に考えて成人の儀の後は騎士団の任命式。それが終わったら住処を公爵家の屋敷から騎士団の詰め所に移動する手はずで・・・。
そもそも見習いになった時点でそちらに住むのが本来の手順なのだが、渡り人ということもあって成人まではと、先送りされていたのだ。
無言で部屋の中に入っていくアレクシオを、手を掴まれたままのレイが追いかけて入ると、そこには・・・。
今日詰め所に運び入れるはずのレイの荷物が一式納められた部屋だった。
イヤ、レイの荷物以外にも見慣れた服がある。
「---何で、俺とアレクシオの荷物がここに・・・?」
ポカンとしたのは仕方がないだろう。
手を離さずにくるりと向きを変えたアレクシオがにっこり笑って言った。
「今日から暫くここに住むから。二人きりで」
「・・・・・・」
今日から、ここで、二人きりで?
住む---っ?!
何で?! 何でこうなったんだ?!
えええ、どういう事---?!
訳分かんないんだけどっ?!
「ああ、通いで料理人とかメイドとかは来るけど、気にしないで良いよ」
違う。
そういう問題じゃ無い。
「後は、レイはこの家の柵から外には出られないよ。ある条件が無いとね?」
その条件って何?
てか、監禁だよね?!
イヤかろうじて軟禁?!
「レイは私とここで子作りするんだよ。孕むまで出られない魔法陣が敷かれてるからね」
「・・・・・・」
うおい、ハートマークが付きそうな声音で言うことじゃないぞ!
え、つまりどーゆーこと?!
パニクって脳みそが仕事を放棄し始めたレイ。
アレクシオが混乱状態のレイに跪いて、レイの左手を取って懇願した。
「順番を間違えた。済まない。私と結婚してくれ、レイ。君に初めて逢ったときから一目惚れだったんだ。ずっとこの日を待っていた。お願いだ。『はい』以外聞けない」
真剣な顔で懇願するアレクシオ。
「---それ、『はい』以外言えないでしょ。何なの、もう、俺の気持ちはどうなるんだよ。ずっと、最初から諦めてたのにさあ。だから騎士になって、ずっと・・・そばに居ようって・・・・・・思っ・・・・・・って」
レイの綺麗な東雲色の瞳からはぼろぼろと涙が零れ落ちて。
「っ・・・・・・俺の・・・かっ、覚悟を、返せよぉ・・」
ぐずぐずと鼻を啜りながら止まらない涙を懸命に拭うレイ。
騎士団の盛装がビチャビチャになるのも構わずぐしぐし拭う。
「---それで、返事は?」
苦笑しながらアレクシオは返事を促す。
拭っていた腕を下ろしてアレクシオを真っ直ぐに見つめてレイは言った。
「っはい! 俺と結婚して下さい!」
涙で濡れたその顔は満面の笑みで輝いていた。
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