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リッカとアッシュ(sideリッカ)
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僕がアッシュと初めて言葉を交わしたのは偶然だった。
VRMMO『Free Fantasy Online』での僕は、基本、生産メインで。
生産に必要な素材を集める為にアバターを鍛えまくっていたら、どういう訳か、ソロでレイドボスを倒せるくらいになっていて。
元々無表情でコミュ障な僕には友達らしい友達もいなかったから、FFOでもフレンドなんて一人もいなくて。
ソコに来て、バグを疑うレベルの戦闘力が付いたモノだから、遠巻きにされて話しかける人もいない。
ぼっちはいつものことだけど、やっぱり辛い。そんな気持ちも顔に出ないポーカーフェイスで、ひたすら趣味の小物を作っては素材収集に勤しんでいた。
幸いな事に、素材には困らなかったので小物も武器や防具もガンガン最高品質のモノが出来て、それを目当てに声をかける人も結構いて。
不定期で開く露店に、ある日来たのがアッシュだった。
彼はどうやら龍人族アバターらしく、がっしりとした長身の体格で、黒髪のウルフカットに切れ長の黄金色の瞳が綺麗な男性だった。
僕はというと、背は男にしては低い方で顔もわりと女顔。
黒髪を腰までの長さにしたから更に女の子っぽい。
普段の僕とは違う自分になりたくて、目だけは有り得ない色にしようとした結果、右目は琥珀色に左目は紫水晶色になった。
生産職を極めるつもりだったから、手先が器用という理由で種族を人族にした。
この『FFO』は、生体をスキャンしてアバターを作るので、元々の容姿からあまりにもかけ離れたアバターを作れないようになっている。
犯罪防止の為だ。基本R18からの使用なので、規格が厳しくなっている。
なので、この人もリアルではこのくらいの身長なんだろう。・・・羨ましい。
そんな彼が、僕が好んで作っている『桜』と『雪の結晶』シリーズの小物を手にして真剣に考えこんでいる。
見た目と小物のギャップに思わず
「ふっ」
と笑ってしまい(もちろん顔には出ない)、ハッとした彼が思わずという感じで頬を染めてコッチを見た時に、何故かドキリとして。
「そのデザイン、好きでシリーズ化してるんです。よかったらゆっくり見ていって下さい」
と慌てて言ったら、自己紹介をしてくれた。
「龍人族のアッシュと言う。よろしく」
「人族のリッカです。こちらこそ、よろしくお願いします」
「貴方の事はちょっと知ってるよ。ソロでレイドボスを倒す凄い人」
「・・・気付いたらそうなってたんですけど、僕は生産メインで、素材収集の為に仕方なく・・・」
ソレにぼっちだから、なんてぽそっと口にしたら、アッシュからフレンド申請が来てビックリした。
「ダメかな?」
シュンとした大型犬のようで、嬉しさもあって首をぶんぶんと振って。
「嬉しい。初めてのフレンドだ」
この時の僕はたぶん笑っていたと思う。
アッシュが頬を染めて驚いていたから。
僕のフレンドリストにきっと最初で最後の名前。
そんな予感がした。
結局、アッシュは悩んだ末に桜と雪の結晶の幸運のピアスを買って、その場で耳に付けてくれた。
それからは、約束をするでもなくたまたま会えば話をするくらいで、リアルでは会ったことはなかったが、会うたびに惹かれていった。
彼の側は心地よかったから。
でも、この気持ちは伝えられない。
彼は社会人のようだし、恋人もいるだろう。
たまたまゲーム内で会うだけの男に興味はないはず。
そう思って、蓋をした。
この関係を壊したくなかった。
VRMMO『Free Fantasy Online』での僕は、基本、生産メインで。
生産に必要な素材を集める為にアバターを鍛えまくっていたら、どういう訳か、ソロでレイドボスを倒せるくらいになっていて。
元々無表情でコミュ障な僕には友達らしい友達もいなかったから、FFOでもフレンドなんて一人もいなくて。
ソコに来て、バグを疑うレベルの戦闘力が付いたモノだから、遠巻きにされて話しかける人もいない。
ぼっちはいつものことだけど、やっぱり辛い。そんな気持ちも顔に出ないポーカーフェイスで、ひたすら趣味の小物を作っては素材収集に勤しんでいた。
幸いな事に、素材には困らなかったので小物も武器や防具もガンガン最高品質のモノが出来て、それを目当てに声をかける人も結構いて。
不定期で開く露店に、ある日来たのがアッシュだった。
彼はどうやら龍人族アバターらしく、がっしりとした長身の体格で、黒髪のウルフカットに切れ長の黄金色の瞳が綺麗な男性だった。
僕はというと、背は男にしては低い方で顔もわりと女顔。
黒髪を腰までの長さにしたから更に女の子っぽい。
普段の僕とは違う自分になりたくて、目だけは有り得ない色にしようとした結果、右目は琥珀色に左目は紫水晶色になった。
生産職を極めるつもりだったから、手先が器用という理由で種族を人族にした。
この『FFO』は、生体をスキャンしてアバターを作るので、元々の容姿からあまりにもかけ離れたアバターを作れないようになっている。
犯罪防止の為だ。基本R18からの使用なので、規格が厳しくなっている。
なので、この人もリアルではこのくらいの身長なんだろう。・・・羨ましい。
そんな彼が、僕が好んで作っている『桜』と『雪の結晶』シリーズの小物を手にして真剣に考えこんでいる。
見た目と小物のギャップに思わず
「ふっ」
と笑ってしまい(もちろん顔には出ない)、ハッとした彼が思わずという感じで頬を染めてコッチを見た時に、何故かドキリとして。
「そのデザイン、好きでシリーズ化してるんです。よかったらゆっくり見ていって下さい」
と慌てて言ったら、自己紹介をしてくれた。
「龍人族のアッシュと言う。よろしく」
「人族のリッカです。こちらこそ、よろしくお願いします」
「貴方の事はちょっと知ってるよ。ソロでレイドボスを倒す凄い人」
「・・・気付いたらそうなってたんですけど、僕は生産メインで、素材収集の為に仕方なく・・・」
ソレにぼっちだから、なんてぽそっと口にしたら、アッシュからフレンド申請が来てビックリした。
「ダメかな?」
シュンとした大型犬のようで、嬉しさもあって首をぶんぶんと振って。
「嬉しい。初めてのフレンドだ」
この時の僕はたぶん笑っていたと思う。
アッシュが頬を染めて驚いていたから。
僕のフレンドリストにきっと最初で最後の名前。
そんな予感がした。
結局、アッシュは悩んだ末に桜と雪の結晶の幸運のピアスを買って、その場で耳に付けてくれた。
それからは、約束をするでもなくたまたま会えば話をするくらいで、リアルでは会ったことはなかったが、会うたびに惹かれていった。
彼の側は心地よかったから。
でも、この気持ちは伝えられない。
彼は社会人のようだし、恋人もいるだろう。
たまたまゲーム内で会うだけの男に興味はないはず。
そう思って、蓋をした。
この関係を壊したくなかった。
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