【完結】たっくんとコウちゃん【小・中学生編】

秋空花林

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6 中学校

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 オレ達は中学生になった!

 もちろんコウちゃんも一緒の学校だ。
 残念ながらクラスは違う。

 でも登校する時はいつも一緒に通ってる。



 新しいクラスでは他の小学校から来た奴もいて。沢山友達が出来た。

 サッカー好きな奴も多いから、やっぱりオレは相変わらずのサッカー三昧だ。

 コウちゃんは料理クラブに入った。メキメキ料理の腕前を上げている。

「コウちゃんお待たせ!」
「大丈夫だよ。今日はハンバーグ作ったんだ」
「やったー!楽しみだ!」

 部活が重なる日は、コウちゃんを教室に迎えに行って、一緒に帰る。今も夕飯はオレの家で一緒に食べるから、コウちゃんの作る料理も夕飯の一品だ。

「楽しみだなー」

 グー。

 やばい。盛大に腹が鳴った。それを聞いたコウちゃんが、目をまん丸にした後、クスクス笑った。

「実は、余ったご飯でコレ作ったんだ」

 コウちゃんがリュックから取り出したのは。

「のりたま!」

 オレの大好きなのりたまおにぎりだった!

 帰り道。ちょっと寄り道して公園に寄った。ブランコに座って、のりたまを頬張る。

 うまい!

 そんなオレを見て、コウちゃんは何か嬉しそうに笑ってる。

「何だよ」
「たっくん、美味しそうに食べるなーって」
「だってうまいんだもん!コウちゃんののりたまが1番好きだ」

 コウちゃんは照れながら、へへと笑った。相変わらず可愛い。

 周りのみんなより身体が強くないコウちゃんは、身長も低いし、あまり外に出ないから色が白い。年中日焼けしてるオレとは対極でまるでオセロだ。

「ついてるよ」

 コウちゃんがオレの頬についていた米粒を取って、パクと食べた。

「ん、お米もいい固さだね」
「…………」

 何だろ。なんが…恥ずかしい。他の奴といる時は感じないけど、最近コウちゃんといると、何か自分が変な気持ちになる。何でだろう?

「ねぇ、たっくん。そういえば」
「ん?」

 米粒がついてたのが恥ずかしくて、自分の顔周りを触ってると。コウちゃんがもじもじしながら質問してきた。

「告白されたって本当?」
「え?あーあれ?断った」

 何でもない風に言うとコウちゃんがびっくりしてる。

「何で?可愛いって噂の子でしょ?」
「んー可愛いけど」

 さすがに中学生になったら、周囲の友達が言ってた様に「女の子の可愛いさ」は何となく分かる様になってきた。

 だけど。

「付き合うって一緒に遊んだり帰ったりするんだろう?それならコウちゃんと一瞬にいる方が楽しい」
「っ!?」
「あー、また腹減ってきた。帰ろうぜ」

 ブランコから立ち上がってコウちゃんを振り返ると、何故か真っ赤になってコウちゃんが俯いていた。もしかして、また風邪でも引いた?

 おでこに手をやると、何かちょっと熱かった。

「たっくん、大丈夫だから!」
「えー?でも熱い…」
「本当に大丈夫だから…」

 頑なに拒否するコウちゃんに、オレは体調を確認するのをあきらめた。代わりに手を差し出す。

「じゃ、帰ろう」
「うん」

 コウちゃんの手を掴んで立ち上がらせて、オレ達は帰途についた。



◆◆◆



 ぼく達は中学生になった。

 今も行きは一緒に。帰りは部活が同じ日は一緒に帰る。

 中学では料理クラブに入った。たっくんに美味しい料理を食べさせたいから。でも、さすがにそれを人に話すのは恥ずかしいから、将来料理の道に進みたいって事にしている。

 ずっと一緒にいれたらいいな。

 漠然とそう思っていた矢先に、その噂は耳に入って来た。

「あの宮内が、隣の有川に告白したらしいぞ」

 ドキリとした。隣の有川は、たっくんの事だ。

 そして、あの宮内は、学年で一番可愛いと噂されている女子だ。

 小学6年生の頃から、たっくんはグングン身長が伸び出した。体格も大きくて、ヤンチャな感じだったのが、凛々しい男らしい顔になってきた。

 女の子に注目されるのも仕方ない。今たっくんの1番近くにいるのはぼくなのに。もしかしたら、いつか他の女の子に取られるのかな?

 最近では、たっくんも「女に興味ない」とは言わなくなった。年相応には興味が出てきたみたいだし。

 そう考えたら胸がキリキリした。ぼく、もしかしてたっくんの事がー。

 その気持ちを認めてたくなくて。それ以上、考えるのをやめた。

 なのに。

「付き合うって一緒に遊んだり帰ったりするんだろう?それならコウちゃんと一瞬にいる方が楽しい」
「っ!?」
「あー、また腹減ってきた。帰ろうぜ」

 なんで、そんな事言うの?
 期待しちゃうじゃないか。

 期待?何を?

 もしかして、たっくんもぼくと同じ気持ちなんじゃないかって。

 同じ気持ち?

 たっくんも、ぼくの事が好きなんじゃないかって。

 好き。

 ぼくはたっくんの事が好き。

 自分の気持ちを実感したら。何だか恥ずかしくて顔を上げられなかった。

 そんな僕のおでこに、たっくんが手を置いた。たっくんに触れられてると思うと、更に恥ずかしくなった。

「たっくん、大丈夫だから!」
「えー?でも熱い…」
「本当に大丈夫だから…」

 代わりにたっくんが手を差し出してきた。

「じゃ、帰ろう」
「うん」

 たっくんの手は、ぼくの手より、大きくて温かかった。
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