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第四夜
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今夜はどいつにしよう。
いつものBARで。
いつもの酒で。
喉を潤しながら、周囲を物色する筈だったのに…。
どうしてこうなった?
「小瀬くん。もう少しこっちに来るといい」
「……」
嫌だ。そう言えたら良かったけど。
それを口にするには、ココは寒すぎた。
無言で大和の側に寄る。
大和は畳に胡座をかいて、ボクをその上に座らせると、ボクごと毛布に包まった。それがとても暖かくて、正直ホッとした。
「冷えてるな」
大和がボクを抱きしめる。その体温がボクを温めてくれる。
窓から外を見れば、まだ深夜で。相変わらず吹雪いていた。
今夜は深夜から吹雪くでしょう。
週末の今朝。天気予報で言ってた。
だから今夜は早めにBARに寄って、相手を探すつもりだったのに。
急遽、急ぎの仕事が増えて。
急遽、遅くまで残業になり。
急遽、予定より早く吹雪いて。
まさかの会社が停電になり今に至る。
「課長はどうして残ってたんですか?」
「ん?例の企画に俺も関わってるんだ」
なるほど。週明けすぐに必要になる資料だから、ボク同様に残業してたのか。
それで停電に合って、ボク同様に暖を求めて仮眠室にやって来たわけだ。
「とりあえず、ほとんど終わったからな。あとは休もう」
「…はい」
仮眠室といっても簡易的な毛布や布団しかない。だからそのまま、2人で1枚の毛布で畳に横になった。
「寒…くしっ」
「こっち来い」
横になった時に開いた距離を埋める様に、大和がボクを引き寄せた。
暖かい。
だけど。
「…課長、何で硬くなってるですか」
「生理現象だ」
気にするな。そう言いながら、大和はしれっと目を閉じている。
そうは言っても…。
しっかり当たってるんだよ、おい!
「…こんな状況で変態ですか?」
睨むボクに、大和がはぁ、とため息を吐く。
「好きな奴が側にいるのに仕方ないだろ」
「…は?」
好きな奴?
何の冗談。
一夜を過ごして、たまたま偶然再会しただけなのに。
「安心しろ。こんな状況で手を出さねーよ」
大和がボクの後頭部に手を回して、胸に引き寄せた。
その胸が、心臓がバクバクしてるのが聞こえて。大和の言ってる事が真実だと教えてくれた。
「…なんで?なんで会ったばかりのボクのこと」
「…会ったばかりじゃない」
「え?」
「初めて会ったのは面接の時だ。あの時、俺は先輩の手伝いをしてた」
それは…ボクがこの会社に入る為、試験と面接を受けに来た時?
「俺好みの可愛い子がいるな、と思ったんだ」
「……」
仕事中に何を考えてんだよ、そう思いながら、なんだかボクの頬が赤くなった気がした。
「その次は入社式。あの子は無事入社できたかな?と思わず探した」
ボクの頭の上で、大和が笑った気配がした。
「名前も部署もチェックして。お近づきになりたいなと思った頃には俺が異動になったんだよ。あれは残念だったな」
「……」
それは、聞いた事がある。
元々、大和はこの本社にいて。
仕事で他へ出向して。
数年ぶりにこちらへ戻って来たんだって。
なら、大和は数年前からボクの事を…?
意外な大和の告白に、なんだかボクの心臓の鼓動が早くなる気がする。
「だからあの夜、お前に声をかけたくて後をつけた。あのBARに入ったのを見て、お前もこっち側だってわかったから。あの日声をかけたんだ」
「……」
「……何で、お前も硬くなってんだ」
「そ、それはっ」
恥ずかしくて言えない。
ちょっと嬉しいとか。
こんなボクでも本気で思ってくれる人がいるんだって感動したとか。
「もしかして」
大和がボクの顎を持ち上げて、ボクの顔を覗きこむ。
「ちょっと感動したか?」
「だ、誰がっ」
「そうか。残念」
チュッ。大和がボクにキスをした。
軽い。触れるだけのキス。
「もう寝ろ」
甘い笑顔。
こういう表情を知ってる。
好きで好きで、仕方ない時に見せる顔だ。
「…何で泣くんだ」
「…るさい」
「……勘違いするぞ?」
大和が、小声で囁きながら、顔を寄せて来る。
自分でもよくわからない。
何で涙が出るのか。
何で嬉しいと思うのか。
でも多分、この気持ちは、きっとあれだ。
最近、これはって相手に出会えなかったり、友人のハルが側からいなくなったせい。
「……っ」
大和の唇がボクの口を塞ぐ。
まるで大切なモノの様に、優しくボクを抱きしめて。
やがて舌が入ってきて。ボクの舌を愛撫する。
「ふぁ…」
「可愛いな」
「…るさい」
大和がボクのズボンの前をはだけさせる。すっかり立ち上がったナニが顔を出した。
大和も自分自身のモノを取り出す。
互いにすっかりギンギンだった。
「ここ、会社、」
「そうだな。だから本番はまた今度だ」
「え?」
一枚の毛布に包まって。
互いに性器だけを晒しての擦り合い。
激しくも動けず、微かに腰を動かすだけ。
それなのにー。
すごく、気持ち良い。
「小瀬。好きだ」
「ふ、う、」
「…中に挿れたい」
前を擦り合って、浮いた尻に、大和が手を伸ばして来た。
ボクの下着をずらして、指が穴をとらえる。
「あ、ダメ、声が、」
「なら、塞げばいいだろ」
「ん…」
大和がボクの口を塞ぐ。
指が、中に。
指が奥のコリコリを押さえて、グイッと押した。
あの、大和に抱かれた夜にだけ感じた、言いようのない快感が再び蘇る。
グチュグチュ
真っ暗な部屋の中。外から吹雪いてる音がして。それに混じって、擦り合ういやらしい音が響く。
クチュクチュ
やらしい舌が絡まる音も、響く。
仮眠室で2人きりといっても。
ここは会社で。
いつ守衛が来るかもわからないのに。
そんな緊張と背徳感が、ボクの感度を高めていくー。
コンコン
突如、仮眠室のドアがノックされた。
「!!」
やばい。こんな姿を見られたら!
ズボンや下着を直す余裕もない。
大和が急いでボクを毛布で隠した。
その時、無情にもドアは開けられた。
「誰かいますか?」
「ふわぁ~。守衛さんですか?良かった。停電は直ったんですか?」
ボクを毛布に包んだまま、大和が対応した。
ちょうどボクは背を向けた状態で、毛布にすっほり覆われてるから。
幸いにも暗闇でバレてはないみたいだ。
「まだです。でも非常用のドアは、非常用電気が稼働したので出れますよ」
「そうですか。良かった」
準備してから、帰ります。
大和の言葉で守衛は出て行った。
心臓が張り裂けそう位、バクバクしてる。
「残念。楽しい時間は終わりだ」
毛布を外して、大和がズボンを直す。
何とも言えない気分で、ボクも下着とズボンを直した。
気づけば。
いつの間か、外の吹雪はやんでいた。
ーーー
次の更新で、最終話まで一気に2話公開予定です。
いつものBARで。
いつもの酒で。
喉を潤しながら、周囲を物色する筈だったのに…。
どうしてこうなった?
「小瀬くん。もう少しこっちに来るといい」
「……」
嫌だ。そう言えたら良かったけど。
それを口にするには、ココは寒すぎた。
無言で大和の側に寄る。
大和は畳に胡座をかいて、ボクをその上に座らせると、ボクごと毛布に包まった。それがとても暖かくて、正直ホッとした。
「冷えてるな」
大和がボクを抱きしめる。その体温がボクを温めてくれる。
窓から外を見れば、まだ深夜で。相変わらず吹雪いていた。
今夜は深夜から吹雪くでしょう。
週末の今朝。天気予報で言ってた。
だから今夜は早めにBARに寄って、相手を探すつもりだったのに。
急遽、急ぎの仕事が増えて。
急遽、遅くまで残業になり。
急遽、予定より早く吹雪いて。
まさかの会社が停電になり今に至る。
「課長はどうして残ってたんですか?」
「ん?例の企画に俺も関わってるんだ」
なるほど。週明けすぐに必要になる資料だから、ボク同様に残業してたのか。
それで停電に合って、ボク同様に暖を求めて仮眠室にやって来たわけだ。
「とりあえず、ほとんど終わったからな。あとは休もう」
「…はい」
仮眠室といっても簡易的な毛布や布団しかない。だからそのまま、2人で1枚の毛布で畳に横になった。
「寒…くしっ」
「こっち来い」
横になった時に開いた距離を埋める様に、大和がボクを引き寄せた。
暖かい。
だけど。
「…課長、何で硬くなってるですか」
「生理現象だ」
気にするな。そう言いながら、大和はしれっと目を閉じている。
そうは言っても…。
しっかり当たってるんだよ、おい!
「…こんな状況で変態ですか?」
睨むボクに、大和がはぁ、とため息を吐く。
「好きな奴が側にいるのに仕方ないだろ」
「…は?」
好きな奴?
何の冗談。
一夜を過ごして、たまたま偶然再会しただけなのに。
「安心しろ。こんな状況で手を出さねーよ」
大和がボクの後頭部に手を回して、胸に引き寄せた。
その胸が、心臓がバクバクしてるのが聞こえて。大和の言ってる事が真実だと教えてくれた。
「…なんで?なんで会ったばかりのボクのこと」
「…会ったばかりじゃない」
「え?」
「初めて会ったのは面接の時だ。あの時、俺は先輩の手伝いをしてた」
それは…ボクがこの会社に入る為、試験と面接を受けに来た時?
「俺好みの可愛い子がいるな、と思ったんだ」
「……」
仕事中に何を考えてんだよ、そう思いながら、なんだかボクの頬が赤くなった気がした。
「その次は入社式。あの子は無事入社できたかな?と思わず探した」
ボクの頭の上で、大和が笑った気配がした。
「名前も部署もチェックして。お近づきになりたいなと思った頃には俺が異動になったんだよ。あれは残念だったな」
「……」
それは、聞いた事がある。
元々、大和はこの本社にいて。
仕事で他へ出向して。
数年ぶりにこちらへ戻って来たんだって。
なら、大和は数年前からボクの事を…?
意外な大和の告白に、なんだかボクの心臓の鼓動が早くなる気がする。
「だからあの夜、お前に声をかけたくて後をつけた。あのBARに入ったのを見て、お前もこっち側だってわかったから。あの日声をかけたんだ」
「……」
「……何で、お前も硬くなってんだ」
「そ、それはっ」
恥ずかしくて言えない。
ちょっと嬉しいとか。
こんなボクでも本気で思ってくれる人がいるんだって感動したとか。
「もしかして」
大和がボクの顎を持ち上げて、ボクの顔を覗きこむ。
「ちょっと感動したか?」
「だ、誰がっ」
「そうか。残念」
チュッ。大和がボクにキスをした。
軽い。触れるだけのキス。
「もう寝ろ」
甘い笑顔。
こういう表情を知ってる。
好きで好きで、仕方ない時に見せる顔だ。
「…何で泣くんだ」
「…るさい」
「……勘違いするぞ?」
大和が、小声で囁きながら、顔を寄せて来る。
自分でもよくわからない。
何で涙が出るのか。
何で嬉しいと思うのか。
でも多分、この気持ちは、きっとあれだ。
最近、これはって相手に出会えなかったり、友人のハルが側からいなくなったせい。
「……っ」
大和の唇がボクの口を塞ぐ。
まるで大切なモノの様に、優しくボクを抱きしめて。
やがて舌が入ってきて。ボクの舌を愛撫する。
「ふぁ…」
「可愛いな」
「…るさい」
大和がボクのズボンの前をはだけさせる。すっかり立ち上がったナニが顔を出した。
大和も自分自身のモノを取り出す。
互いにすっかりギンギンだった。
「ここ、会社、」
「そうだな。だから本番はまた今度だ」
「え?」
一枚の毛布に包まって。
互いに性器だけを晒しての擦り合い。
激しくも動けず、微かに腰を動かすだけ。
それなのにー。
すごく、気持ち良い。
「小瀬。好きだ」
「ふ、う、」
「…中に挿れたい」
前を擦り合って、浮いた尻に、大和が手を伸ばして来た。
ボクの下着をずらして、指が穴をとらえる。
「あ、ダメ、声が、」
「なら、塞げばいいだろ」
「ん…」
大和がボクの口を塞ぐ。
指が、中に。
指が奥のコリコリを押さえて、グイッと押した。
あの、大和に抱かれた夜にだけ感じた、言いようのない快感が再び蘇る。
グチュグチュ
真っ暗な部屋の中。外から吹雪いてる音がして。それに混じって、擦り合ういやらしい音が響く。
クチュクチュ
やらしい舌が絡まる音も、響く。
仮眠室で2人きりといっても。
ここは会社で。
いつ守衛が来るかもわからないのに。
そんな緊張と背徳感が、ボクの感度を高めていくー。
コンコン
突如、仮眠室のドアがノックされた。
「!!」
やばい。こんな姿を見られたら!
ズボンや下着を直す余裕もない。
大和が急いでボクを毛布で隠した。
その時、無情にもドアは開けられた。
「誰かいますか?」
「ふわぁ~。守衛さんですか?良かった。停電は直ったんですか?」
ボクを毛布に包んだまま、大和が対応した。
ちょうどボクは背を向けた状態で、毛布にすっほり覆われてるから。
幸いにも暗闇でバレてはないみたいだ。
「まだです。でも非常用のドアは、非常用電気が稼働したので出れますよ」
「そうですか。良かった」
準備してから、帰ります。
大和の言葉で守衛は出て行った。
心臓が張り裂けそう位、バクバクしてる。
「残念。楽しい時間は終わりだ」
毛布を外して、大和がズボンを直す。
何とも言えない気分で、ボクも下着とズボンを直した。
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