【完結】ワンナイラブ派ですが何か

秋空花林

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第一夜

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 今夜はどいつにしよう。

 いつものBARで。
 いつもの酒で。
 喉を潤しながら、ボクは周りを物色する。

 顔はいまいちだけど、ガタイのいい奴。
 顔は好みだけど細マッチョの奴。
 イケメンだけどガリガリな奴。

 ここには色んな男がいて。
 互いに相手を求めてる。

「オール・ドファッションドか。渋いな」

 そいつは、そうボクに声をかけると隣のカウンター席に座った。

「グランド・スラムを」

 言いながら、男は春物のシャツのネクタイを緩めた。

 その手の甲や、捲った袖から見える腕の筋がやたらセクシーで。
 
 ボクの目を引いた。

 よく見れば、その手の平は大きく指も長い。

 綺麗な手の男。それが第一印象だった。

 仕事帰りらしいが、よほどキチッとしてる性格なのか、まだシャツはパリッとしてるし。

 長めの前髪は、こんな時間でも綺麗にセットされてて清潔感を醸し出している。

 ……悪くない。

 やがて作られたカクテルが男の前に差し出されー。

 ボクらは互いに目線を交わして、カクテルに口をつけた。



◇◇◇



「見た目より、ずいぶん強情だな」
「アンタは、見た目どおり、だよ」

 はぁ、はぁ、とボクの口から浅い息が漏れる。男の綺麗な指と手の平が、ボクの喉を優しく撫でた。

 そのまま下に滑り、ボクの胸を撫でてー。

 2本の指でソコをキュッと摘んだ。

「締まった…ココが弱いのか」
「うるさ…黙って、腰ふれよ…」
「ふ。楽でいいな」

 男はボクの胸から手を離すと、両手でボクの腰を掴んで一気に腰を前に打ちつけてきた。

 男のモノが奥に突き刺さる。
 そして、腰を引く時に、排泄感にも似た快感がゾクゾクと込み上げてくる。

「ふ、あ、ん、」
「ふっ、ふっ、ふっ」

 もう会話は無い。
 初めから身体だけの関係なんだから。

 BARで一杯飲んで。
 すぐにホテルに移動して。

 ろくに言葉を交わさずに。
 ただ相手の身体に欲情して。
 ただ快感だけを貪る。

 男のピストンがスピードを増した。
 フィニッシュの合図だ。

「ほら受け止めろよ」

 男が背後からボクの頭を押して来た。

 ベッドの上で、四つん這いでバックから攻められていたボクは、いきなり押された事で体勢を崩す。

 そのまま前のめりに倒れて、結果的に尻を男に突き出す状態になった。

「なにすん…」
「ほら、出すぞ」

 男のアレが、深くボクの奥に入り込んでー。

 熱い感覚が胎の奥に広がった。



 コトが済んだあと。男がシャワーを浴びて出て来た。

 固めてた髪が濡れて、さっきより若く見える。

「どうした」
「別に」

 無視してシャワー室に向かおうとしたボクを、男が腕を掴んで止める。

 そして、そのままボクを引き寄せた。

「身体を繋げたのにそっけないな」
「別に。どうせ今夜だけの関係なんだから、いいだろ?離せよ」
「抵抗されると燃えるんだよ」
「な、ん、」

 男が突然キスしてきた。

 もちろん、触れるだけの子供みたいなキスじゃなくて。

 男の舌がボクの舌を絡めとる。

 吸ったり舐めたりして。たかが舌なのに、なんだかー。

「ん、ふ、」
「ん、何だ。こんなキスは初めてか?」

 その綺麗な指で僕の唇を拭いながら、男は笑った。

「るさい、誰がキスしていいって…」
「そのわりには、もっとして欲しそうだ」
「ん、ん、」

 抵抗しても、男はボクの後頭部に手を回して、更に深く口づけてくる。

 そのまま、なし崩し的にベッドに押し倒してきやがった。

 男の指がボクの胸の粒をつまみ、擦る。もう片方の手が尻に伸びてきてー。

 指がソコに入ってきた。

「ん!んー!」

 指は嫌だ。どうせされるなら、ぶち込まれる方がマシだ。

 抵抗しても、背の高い男がのしかかってきて、ビクともしない。

 そのうち、指が奥に入り込んでー。

「んん!?」

 男の指が中でクイッと曲がって、中のコリコリした所をいじり出した。

 身体に変な刺激が走って、なんだかビクビクする。

「ここを触られるのは初めてか?」
「な、なんだよ、これ、いやだ…」
「気持ちいいんだろ?」

 グイグイ、中を押される。その度に腰から変な刺激が這い上がってきて。身体がビクビクする。

「胸が寂しそうだな」
「ふ、あ、」

 いつの間か立ち上がった乳首に、男が吸いついた。熱い舌でベロリと舐められて、吸われながら、噛まれる。

「んー、んー」

 生理的な現象で、涙が溢れてくる。

「さっきと全然違うな」
「ふ、ん、」
「イイ顔だ」

 また男がキスしてきた。

 さっきよりも優しく、愛撫する様にボクの口内を犯す。だらしなく開いた口からよだれが流れる。

「や、ら、やめれよ」
「無理だな。次は優しく抱いてやる」
「やら、やさしく、するな、よ」

 ボクの言葉を無視して。
 
 今度は正常位で、男はボクに挿入した。

 ゆっくり、優しく、ボクを労る様に。

「や、ら、こんなの、」
「ふふ。泣くぐらいいいのか?」

 男のモノがさっきのコリコリした場所を擦る。それが、更なる快感を生む。

 そのまま下半身に刺激を送り続けながら、男がボクの胸を口で刺激する。

 やだ、やめろよ。

 そう言いたいのに。

 いつの間にかボクの口からは喘ぐ声しか出なくなっていた。

 でも。こんな一夜はボクは望んでないんだ。

 こんな、恋人同士みたいな。

 まるで愛されてとると錯覚してしまうような。

 こんな関係は望んでないのにー…。

「可愛いな、こんなに感じて」
「ふぁ、あぁ、」
「もっとさらけ出せよ、ほら!」
「あぁ!」

 ソレがボクの中をツク。

 コリコリした、その場所を。

 今までに感じたコトがないクライの。

 カイカン。

「イ…ク…ゥ」
「ほら!ここだろ!ここがいいんだろ?」

 男の腰が早まって。

 ソコをツカれて。

 全身を徐々に快感で埋め尽くされる。

 男の手がボクのモノを包み込んだ。

 あの綺麗な手が。指が。ボクのモノを握って。擦った。

 覚えてるのはそこまでだった。

 あとは、頭が真っ白になって。

 ボクの意識は途切れた。



◇◇◇



「連絡先、交換しないか」
「誰が!」

 意識が回復して。

 すっかり身支度を整えたボクに。

 男は連絡先を聞いてきた。誰が教えるか!

「ボク、ワンナイ派なんだよね。同じ男と寝ない」
「…………残念。落ちなかったか」
「なに?何か言った?」

 ギロッとボクが睨むと、男は肩をすくめた。

 初めに会った時はクールでSっ気が強そうに見えたのに。

 よれよれのシャツにクシャクシャの髪だと、すっかり普通の兄ちゃんだ。顔は整ってるけどな。

「せめて、名前ー」
「もう会わないのに必要ないだろ」
「わかった。じゃあ名前の代わりに1つだけ」

 近づいてきて、片手でボクの顎をクイッと上向かせる。

 ムカつく奴。

「俺、良かっただろ?」
「…………」
「……悪くはなかっただろ?」
「……まぁね」

 ボクの返事を聞くと男はニヤッと笑った。

大和ヤマト
「え?」
「俺の名前。俺は教えたから。次に会った時に名前教えろよ」
「は?」

 大和と名乗った男は、そのまま、じゃあまたな、と笑って部屋から出て行った。

「誰が、二度と、会うかよ!」

 ドアが閉まる寸前。大和の笑い声が聞こえた気がした。



 その日から数日間。

 ボクはそのBARを訪れるのをやめた。

 待ち伏せでもされてそうで、嫌だったからだ。

 だから、ちょっと欲求不満にもなるけど。

 我慢した。

 そんなある日。

「小瀬。隣の課に新しい課長が赴任するらしいぜ」
「新しい課長?」

 職場で。デスクが隣の同僚、里中が声をかけてきた。

「1週間前も来てただろ?出向先から戻って来たらしい」
「ふーん」
「ほら、あの人だよ」

 里中の指差した方向にソイツはいた。

 高い背にパリッとしたシャツがよく似合っていて。キッチリとセットされた髪に、銀縁メガネがよく似合っている男だった。

 …って、メガネかけてるけど、あいつ!

「…大和!?」
「おい、小瀬、呼び捨てはまずいって!」

 里中の静止虚しく、ボクの声は意外に大きかった様で。

 離れた場所にいた大和がこっちを見て、ニヤリと笑った。
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