【完結】壊された女神の箱庭ー姫と呼ばれていきなり異世界に連れ去られましたー

秋空花林

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最終章 運命を創る者

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「ルースさん、とりあえず座ってて下さい。今お茶入れますね」

 ルースと再会した太陽は、とりあえず一旦ルースを連れてアパートへ帰った。

 目の前のルースに麦茶を出して向かいに座ってから、改めて彼を観察した。

 髪も目も黒いし、何より服装が半袖シャツとデニムだった。どう見ても現代の人にしか見えない。

「…変かな?」

 あまりにも太陽にジロジロ見られたルースが照れて自分の髪をいじった。

「すごく似合ってます!ルースさんは何色でも何を着ててもカッコいいです!」
「…ありがとう」

 太陽に褒められて嬉しそうなルースに、何とか悶えそうになるのを堪える。自分の照れ顔がどれだけの破壊力があるか知って欲しい!

「ところで、何でルースさんがこの世界に?」
「それは…」

 ルースの語った内容は衝撃的だった。

 あの時、太陽を追って世界を渡ったのはいいが、過去に飛んでしまったらしい。そして約3年の間、太陽が向こうの世界から戻るタイミングまで待ってくれていたそうだ。

「ルースさん…ありがとうございました」

 慣れないこの世界で大変だったろう。それでも向こうの世界に帰らず、ひたすら太陽の帰還を待っててくれたのだ。

 感動でお礼を述べた太陽に、ルースは浮かない表情で気にしないでと顔を振った。

 それが気になって立ち上がった太陽のズボンからコロンと指輪が落ちた。慌ててそれを拾う。

「それ…瘴気の元になっていた物だね」
「あ、はい。そうです。もう浄化されてるので大丈夫ですよ」
「大事な物なの?」

 ルースには不思議だった。あんなに必死に止めたにも関わらず、あの時太陽は必死にこの指輪を追いかけていた。

 何故太陽はあんなに必死だったのか。緑色の美しいデザインだが、特に武器や身を守る御守りにも見えなかった。

「これは…ルースさんの物です」

 太陽がルースの手の平に、ソッと指輪を置いた。

「僕の?」
「俺とお揃いの指輪です」

 太陽が左手の指輪を見せた。

 この世界に来て数年。今ではルースも知っていた。この世界では恋人や伴侶が互いに揃いの指輪をつけるという事を。

 指輪の内側を見ると、この世界の言葉で「LOOSE & TAIYO」と書かれていた。

 前者はルースの名だ。
 では後者は誰?

「俺がつけてもいいですか?」

 呆然とルースが頷く。太陽がルースの左薬指に指輪を嵌めた。

 瞬間。失っていた記憶が泉の様に湧き上がって来た。

 太陽との初めての出会い。
 湖での出来事。
 初めて結ばれた日や2人の約束。
 そして、この指輪を贈られたことまで全て。

「…タイヨウ」
「ルースさん!?思い出したの?」
「思い出した。全て」
「ルースさん!」

 太陽が泣きながらルースに抱きついた。そんな太陽をルースも抱きしめる。

「あぁ…全て思い出した」

 ルースの頬を涙が伝った。

 愛しい人との大切な記憶を思い出せたという喜び。

 ずっと心の中に引っかかっていた記憶の数々。

 そしてー。

 己のしでかした行為への罪悪感が、ルースの胸を締め付けた。
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