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最終章 運命を創る者
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「王女の時を止めたんですか?」
キャスに肩を貸しながらラリエスが近づいて来た。妖精王が今施したのは、かつてラリエスとキャス、ルースの時を止めた魔法だ。
「一時的かもしれぬ。ずっとかもしれぬ。だが我はこの様な形でも側にいれるのなら構わぬ」
妖精王は氷に閉じ込められた妖精を愛おしそうに抱きしめた。
それを一瞥してラリエスはキャスと共に、床に散った土の様な物に触れた。もう瘴気は感じない。
「さっきのあの男は一体何なのです?」
「アイツは前に俺が殺したヤツだ。瘴気に蝕まれて西に向かって来たから殺した」
「セーヤつれてた」
「では死人ですか?」
悪男とショーキの言葉にラリエスが眉を顰めた。死人を操る術など聞いた事ない。
「彼奴は体内に瘴気を宿していた。恐らく死してなお操られていたのだろう」
妖精王の言葉に、誰が?と返す者はいなかった。そんな事が出来る存在は1つしかない。
「ルースよ。そろそろ行くがよい」
妖精王がルースに視線を向けた。もう涙は止まっていた。
「今ならまだ気配を追って飛ばせる。ただ数年の誤差は許せ」
「わかった。ありがとう」
ルースがしっかりと頷き、空と悪男を見た。
「ソラ、ワルオ行って来るよ」
「アイツを頼む。きっとまた1人になったと泣いてる筈だ」
泣き虫で寂しがり屋の彼を1番に迎えに行ってやりたいところだが、ここはルースに譲るべきだ。空はそう自分を納得させた。
「ルース兄貴!セーヤの側にいてやってな」
「サミシイ!」
悪男とショーキが泣きながら見送りの言葉を述べた。
2人とも太陽を連れて帰って来いとは言わなかった。少なくとも今太陽がいる場所は安全な筈だからだ。
各地に長達が聖気で結果を張り、金の者が名をつけたこの世界でさえ、まだ瘴気の脅威は残っていた。
本当に彼の事を思うなら、この世界に帰って来いとは言えないのだ。
「準備は良いか?」
妖精王の問いかけにルースは頷いた。もとより準備など必要ない。ただこの身一つで恋人を追いかけるだけだ。
妖精王が片手で氷を抱きながら、もう片方の手で人差し指を立てる。そこに白い光の粒が宿る。
「もし、この世界に戻る事を選択するなら願え。縁ある者が迎えに行く」
くるん。妖精王が人差し指を回した瞬間。ルースの意識は暗転した。
◇◇◇
騒がしい音が耳を刺激する。聞きなれない騒々しさに、ルースは目を覚ました。
ここは?
倒れたままの状態で、ルースは視線だけでまず周囲の状況を確認した。目の前には固い石が広がり、上空は闇が広がっていた。
幸い他の者の気配は無い様だ。ルースは誰もいない事を確認して身を起こした。
ルースの眼前に広がったのは見た事もない景色だった。
幾つもの大きな建物と色とりどりの光、騒がしい音。そしてルースのいる場所より遥か眼下に、多くの人達が行き来していた。
太陽と同じ様に真っ黒な髪をした男女が、見た事もない服装で沢山行き来していた。
ここがセーヤの住んでいる世界。
ビルの屋上から地上を見下ろしながら、ルースは1人知らない世界に息を呑んだ。
キャスに肩を貸しながらラリエスが近づいて来た。妖精王が今施したのは、かつてラリエスとキャス、ルースの時を止めた魔法だ。
「一時的かもしれぬ。ずっとかもしれぬ。だが我はこの様な形でも側にいれるのなら構わぬ」
妖精王は氷に閉じ込められた妖精を愛おしそうに抱きしめた。
それを一瞥してラリエスはキャスと共に、床に散った土の様な物に触れた。もう瘴気は感じない。
「さっきのあの男は一体何なのです?」
「アイツは前に俺が殺したヤツだ。瘴気に蝕まれて西に向かって来たから殺した」
「セーヤつれてた」
「では死人ですか?」
悪男とショーキの言葉にラリエスが眉を顰めた。死人を操る術など聞いた事ない。
「彼奴は体内に瘴気を宿していた。恐らく死してなお操られていたのだろう」
妖精王の言葉に、誰が?と返す者はいなかった。そんな事が出来る存在は1つしかない。
「ルースよ。そろそろ行くがよい」
妖精王がルースに視線を向けた。もう涙は止まっていた。
「今ならまだ気配を追って飛ばせる。ただ数年の誤差は許せ」
「わかった。ありがとう」
ルースがしっかりと頷き、空と悪男を見た。
「ソラ、ワルオ行って来るよ」
「アイツを頼む。きっとまた1人になったと泣いてる筈だ」
泣き虫で寂しがり屋の彼を1番に迎えに行ってやりたいところだが、ここはルースに譲るべきだ。空はそう自分を納得させた。
「ルース兄貴!セーヤの側にいてやってな」
「サミシイ!」
悪男とショーキが泣きながら見送りの言葉を述べた。
2人とも太陽を連れて帰って来いとは言わなかった。少なくとも今太陽がいる場所は安全な筈だからだ。
各地に長達が聖気で結果を張り、金の者が名をつけたこの世界でさえ、まだ瘴気の脅威は残っていた。
本当に彼の事を思うなら、この世界に帰って来いとは言えないのだ。
「準備は良いか?」
妖精王の問いかけにルースは頷いた。もとより準備など必要ない。ただこの身一つで恋人を追いかけるだけだ。
妖精王が片手で氷を抱きながら、もう片方の手で人差し指を立てる。そこに白い光の粒が宿る。
「もし、この世界に戻る事を選択するなら願え。縁ある者が迎えに行く」
くるん。妖精王が人差し指を回した瞬間。ルースの意識は暗転した。
◇◇◇
騒がしい音が耳を刺激する。聞きなれない騒々しさに、ルースは目を覚ました。
ここは?
倒れたままの状態で、ルースは視線だけでまず周囲の状況を確認した。目の前には固い石が広がり、上空は闇が広がっていた。
幸い他の者の気配は無い様だ。ルースは誰もいない事を確認して身を起こした。
ルースの眼前に広がったのは見た事もない景色だった。
幾つもの大きな建物と色とりどりの光、騒がしい音。そしてルースのいる場所より遥か眼下に、多くの人達が行き来していた。
太陽と同じ様に真っ黒な髪をした男女が、見た事もない服装で沢山行き来していた。
ここがセーヤの住んでいる世界。
ビルの屋上から地上を見下ろしながら、ルースは1人知らない世界に息を呑んだ。
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