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第五章 果てなき旅路より戻りし者
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アキエスの演説後、そこにいた全員の協力によって、群衆に紛れていた元王族の関係者達は速やかに捕らえられた。
呆れた事に、彼らは太陽達がやって来る迄の間「自分達は元王族である。代表として話し合いに行った元王族の身内が金の者を従えてやって来るだろう」と吹聴していたらしい。
アキエスが演説の最後に、元王族を捕らえるのに協力して欲しいと締め括った後は、吹聴していた元王族に一斉に視線が向き、あっという間にみんなで拘束されたのだ。
「セーヤ様。これで仮に元王族が他にいても、もう名乗り出る事は無いでしょう。他の残り3種族も敵に回す事になりますからね」
ふふふ、と楽しそうに笑ったアキエスに、彼は敵に回してはいけない相手だと太陽は悟った。
◇◇◇
元王族の件が落ち着いた後は、本当であればそのまま北に乗り込む予定だった。
だがここまで人が集まっているのであれば、瘴気の事も発表した方がいい。それが長全員からの提案だった。
一刻も早く北に向かいたい太陽も、ルースを無事助けた後の事を考えるなら仕方ない、と承諾した。
瘴気に関しての発表は太陽から伝える事になった。金の色を纏う者の発言なら、どの種族も受け入れやすいからだ。
「俺達はこれから魔王と瘴気の問題を解決する為。そして捕えられている仲間を助ける為、北に乗り込みます。でもその前に、みんなにも知っていて欲しい。瘴気の正体を」
太陽が語った瘴気の正体に人々は驚愕した。
その正体はこの世界に波風を立てず平和に保つ為に、無理やり無くした自然現象だったからだ。
本来、少しずつ起こる筈だった現象を無理やり歪めた結果、それらは膨れ上がり、逆に今世界を滅ぼそうとしている。
「そんなの…本末転倒だ!それならまだ少しずつ起こり来る困難に立ち向かう方がマシだ!」
そうだ!そうだ!と人々も呼応した。
「では、では魔王とはどんな存在なのですか?我々はこれまで魔王が瘴気をばら撒いていると聞いてきました!」
誰かが叫んだ。それに太陽が静かな声で答えた。
「正体は北の白の妖精王です」
「妖精王…様?」
今この場にいるほとんどの者にとって、もはや北の精霊王は過去の人物。伝説の様な存在だった。
500年前、瘴気が北に溢れ白い妖精達が闇堕ちした時、妖精王も共に闇堕ちしたか、魔王に殺されたとされていた。
だが、集まった古参エルフの中には、実際に妖精王に会った者達もいた。
「金の者よ!では、我らの同胞達が300年前魔王に挑み殺されたのは…妖精王に殺されたのですか!?何故です?我ら南と北は親交があったのに!」
悲痛な声が辺りに響く。エルフ一族にとって300年前はまだ昔とは言えない時間だった。
「魔王となった彼が何故そんな行動をしたかは分かりません。でも今皆さんに知っていて欲しいのは、何故彼が魔王になったかです」
「どういう事ですか?」
エルフ達は太陽から視線を逸らさない。彼らも知りたいのだ。300年前の悲劇は何故起きたのか。何故世界は壊れてしまったのか。その理由を。
「ここから先はアタイが話すよ。これは代々西の鳥族の長だけに語られてきた事だから」
太陽の後を継いで、鳥族の長が話し出した。
歪めて溢れた瘴気を、女神は初め西の土地と鳥族に押しつけ様とした事。それを北の妖精王が庇ってくれた事。それ以来、彼は何百年もその身に瘴気を引き受けて、瘴気が発生する度に封印され1人瘴気を浄化し続けてきていた事を。
聞いてる間、言葉を発する者は居なかった。
これまで崇拝してきた金の女神にそんな残酷な一面があった事に人々は戦慄し怯えた。
嘘だと思いたかった。でも、その女神の能力を具現化すると言われる金の者がそこにいる事で、話は真実味を帯びた。
家族や仲間を殺した魔王を許す事は出来ない。だが、この世界の為に女神に瘴気を押し付けられ狂ってしまったと知ってしまえば、エルフ達もただ一方的に恨むとは言えなかった。
「金の者よ。この世界をどうなってしまうのでしょうか?私達はどうやって生きて行けばいいのでしょう?」
人間側から縋る様な声が聞こえた。
知ってしまった瘴気の正体。女神の一面。魔王の正体。もう知らない前には戻れない。
この先、何を信じて生きて行けばいいのか。指針が欲しかった。
「このまま…ただ瘴気を抑えて封印しても、もうこの世界は元に戻らないと思います。ここまで増えて溢れた瘴気をまた封印しようとしたら、きっとまた違う土地や種族が犠牲になる」
ひっ!と人々が恐怖に声が上げた。
そう。女神の次に力が強いと言われていた妖精王で抑えきれないなら、次の封印場所が必要になる。そしてそれは、自分達かもしれないのだー。
「だから、俺が北に行って来ます。話し合えるのか、封印するのか、倒すのか。正直まだ分かりません。でも北に行ってこれからどうするべきか見極めて来ます。そして、帰って来たら、みんなで考えましょう。この世界の為に」
呆れた事に、彼らは太陽達がやって来る迄の間「自分達は元王族である。代表として話し合いに行った元王族の身内が金の者を従えてやって来るだろう」と吹聴していたらしい。
アキエスが演説の最後に、元王族を捕らえるのに協力して欲しいと締め括った後は、吹聴していた元王族に一斉に視線が向き、あっという間にみんなで拘束されたのだ。
「セーヤ様。これで仮に元王族が他にいても、もう名乗り出る事は無いでしょう。他の残り3種族も敵に回す事になりますからね」
ふふふ、と楽しそうに笑ったアキエスに、彼は敵に回してはいけない相手だと太陽は悟った。
◇◇◇
元王族の件が落ち着いた後は、本当であればそのまま北に乗り込む予定だった。
だがここまで人が集まっているのであれば、瘴気の事も発表した方がいい。それが長全員からの提案だった。
一刻も早く北に向かいたい太陽も、ルースを無事助けた後の事を考えるなら仕方ない、と承諾した。
瘴気に関しての発表は太陽から伝える事になった。金の色を纏う者の発言なら、どの種族も受け入れやすいからだ。
「俺達はこれから魔王と瘴気の問題を解決する為。そして捕えられている仲間を助ける為、北に乗り込みます。でもその前に、みんなにも知っていて欲しい。瘴気の正体を」
太陽が語った瘴気の正体に人々は驚愕した。
その正体はこの世界に波風を立てず平和に保つ為に、無理やり無くした自然現象だったからだ。
本来、少しずつ起こる筈だった現象を無理やり歪めた結果、それらは膨れ上がり、逆に今世界を滅ぼそうとしている。
「そんなの…本末転倒だ!それならまだ少しずつ起こり来る困難に立ち向かう方がマシだ!」
そうだ!そうだ!と人々も呼応した。
「では、では魔王とはどんな存在なのですか?我々はこれまで魔王が瘴気をばら撒いていると聞いてきました!」
誰かが叫んだ。それに太陽が静かな声で答えた。
「正体は北の白の妖精王です」
「妖精王…様?」
今この場にいるほとんどの者にとって、もはや北の精霊王は過去の人物。伝説の様な存在だった。
500年前、瘴気が北に溢れ白い妖精達が闇堕ちした時、妖精王も共に闇堕ちしたか、魔王に殺されたとされていた。
だが、集まった古参エルフの中には、実際に妖精王に会った者達もいた。
「金の者よ!では、我らの同胞達が300年前魔王に挑み殺されたのは…妖精王に殺されたのですか!?何故です?我ら南と北は親交があったのに!」
悲痛な声が辺りに響く。エルフ一族にとって300年前はまだ昔とは言えない時間だった。
「魔王となった彼が何故そんな行動をしたかは分かりません。でも今皆さんに知っていて欲しいのは、何故彼が魔王になったかです」
「どういう事ですか?」
エルフ達は太陽から視線を逸らさない。彼らも知りたいのだ。300年前の悲劇は何故起きたのか。何故世界は壊れてしまったのか。その理由を。
「ここから先はアタイが話すよ。これは代々西の鳥族の長だけに語られてきた事だから」
太陽の後を継いで、鳥族の長が話し出した。
歪めて溢れた瘴気を、女神は初め西の土地と鳥族に押しつけ様とした事。それを北の妖精王が庇ってくれた事。それ以来、彼は何百年もその身に瘴気を引き受けて、瘴気が発生する度に封印され1人瘴気を浄化し続けてきていた事を。
聞いてる間、言葉を発する者は居なかった。
これまで崇拝してきた金の女神にそんな残酷な一面があった事に人々は戦慄し怯えた。
嘘だと思いたかった。でも、その女神の能力を具現化すると言われる金の者がそこにいる事で、話は真実味を帯びた。
家族や仲間を殺した魔王を許す事は出来ない。だが、この世界の為に女神に瘴気を押し付けられ狂ってしまったと知ってしまえば、エルフ達もただ一方的に恨むとは言えなかった。
「金の者よ。この世界をどうなってしまうのでしょうか?私達はどうやって生きて行けばいいのでしょう?」
人間側から縋る様な声が聞こえた。
知ってしまった瘴気の正体。女神の一面。魔王の正体。もう知らない前には戻れない。
この先、何を信じて生きて行けばいいのか。指針が欲しかった。
「このまま…ただ瘴気を抑えて封印しても、もうこの世界は元に戻らないと思います。ここまで増えて溢れた瘴気をまた封印しようとしたら、きっとまた違う土地や種族が犠牲になる」
ひっ!と人々が恐怖に声が上げた。
そう。女神の次に力が強いと言われていた妖精王で抑えきれないなら、次の封印場所が必要になる。そしてそれは、自分達かもしれないのだー。
「だから、俺が北に行って来ます。話し合えるのか、封印するのか、倒すのか。正直まだ分かりません。でも北に行ってこれからどうするべきか見極めて来ます。そして、帰って来たら、みんなで考えましょう。この世界の為に」
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