112 / 181
第五章 果てなき旅路より戻りし者
3
しおりを挟む
人間側の代表として、西の館にやって来たのは男3人だった。
偉そうな態度の恰幅の良い50代位の男と、チャラそうな20代位の優男と、ガタイの良いイカつい顔の30代位の男だった。
「おおー。そなたが光の力を宿す者か!」
偉そうな恰幅の良い50代位の男が太陽を見ると、早速近づいて来てジロジロと太陽を見回した。
「胸は無いが大層な美人だな!よし決めた、お前をワシの第3の妻にしてやろう!ワシは王族の末裔ぞ。喜ぶがいい」
「はぁー!!!?」
太陽、悪男、鳥の長の声が合わさった。
空とガソルは耳と尻尾が逆立ち臨戦体制になった。
ベイティは静かに成り行きを見守っている。
「第3の…あの…俺男ですけど…」
「何だと!ではお前は勇者の方か?」
「聖女の方だと思います。勇者は別にいますから」
「何だと!では今代の金の者はどちらも男か!では仕方ない、そちと勇者にワシの娘達をやろう。世が世なら王女だぞ」
「お断りします!」
何なんだコイツ!
空が先程言っていた、太陽を王族に取り込みたいという発言は当たっていた様だ。だけど、こんなに一方的な相手とは思わなかった。
こちらの事情を全く聞こうともしない男にムカムカしてくる。
「何故じゃ?ワシの娘と結婚し、聖女か勇者のどちらの子に金の力が伝われば、そちも役目は果たせるだろう」
「…あなたの言ってる事が分かりません」
この男は何を言ってるんだろう。何故太陽と勇者の未来をコイツが決めつけるのか。
だんだんムカムカを通り越して、吐き気がしてきた。
「お前こそ何を言っている?王族は次世代に金の血を残すのが役割じゃ。お前と勇者が男同士で産めないなら、他の王族の女に産ませるのが役割だろう。これが昔からの王族の掟じゃ」
王族の掟。
自由を望めず、飼い殺され、次世代を産むだけの存在。
気分が悪くて立ち眩みでよろけた太陽を、空が支えた。
「人間よ。コイツにはそれは当てはまらん」
「何?」
「コイツはそもそもこの世界の人間では無い。この滅びゆく世界を救う為に異世界から来た者だ。よって、お前達の為に犠牲になる必要は無い」
「何だと!お前は東の獣だな!獣風情が光の王族に盾突くとは何事か!」
瞬間、男の足元の数箇所がザシュッという音と共に削れた。
驚いて、足を大きくバタバタさせた男の足元に、更に追加で数本の赤い羽根が刺さった。ガソルと鳥の長だった。
「ひい~!何をする!」
「我が一族ばかりか、聖女に祝福を受けた聖獣を獣呼ばわりするか!死にたいらしいな!」
「だから人間の王族は大嫌いなんだよ!こんなヤツ殺して、皮を剥いで、砂漠の虫達にくれてやろう!」
「ひい~!おい!お前達、ワシを助けんか!」
男がわめきながら自分の背後を振り向いた。
チャラい優男はニヤニヤして様子を見ている。護衛の方は微動だにせず控えたままだ。
「お前達も我らを愚弄するなら容赦せんぞ」
「支援と後処理は任せな。アタシらの得意分野だよ」
ガソルと鳥の長の目が、それぞれ青く、赤く光っている。興奮して好戦的になっている証拠だ。
それを見て優男が先程から静かなベイティに視線を向けた。
「そちらのエルフはどういう立場ですか?」
「我々エルフは金の者につく。彼が望まない事に手を貸すつもりは無い」
「東、南、西は王族で無く、あくまで金の力を宿す彼につくという事ですね?」
優男の言葉に、ガソル、鳥の長、ベイティがそれぞれに肯定した。
「という事みたいですよ元王族様」
優男が、先程から顔を真っ青にしている恰幅の良い元王族の男に近づいた。
「阿呆、阿呆だと思ってたけど。ここまで愚かだと思わなかったです。金の者に無礼を働いた阿呆様はもう人間の代表にも王族にも相応しく無いから、退場でいいですね」
「何を…ムグッ」
優男は偉そうな男の口に布を詰め込んで、一気に紐でグルグル巻きにすると、男を護衛の男へ放り投げた。
それを護衛の男がまるで荷物を受け取る様に一度腕で受け止め、足元に捨てた。床に落ちた元王族の男はグフッと変な声を上げて動かなくなった。
「さて」
優男がターバンの様に被っていた布を外しながら振り向く。天然パーマのかかった見事なウェーブが広がった。優男の髪はまるで透け具合で金に見えるかの様な薄い茶色だった。
優男はそのままその場に跪いた。護衛の男も優男に倣い跪く。
展開についていけず空に支えられたままだった太陽に向かって、優男が頭を垂れた。
「金の者よ。数々のご無礼申し訳ございませんでした。我が名はアキエス。元勇者の末裔に連なる者。阿呆の元王族に代わり私が人間族をまとめ上げ、貴方様に従いましょう」
偉そうな態度の恰幅の良い50代位の男と、チャラそうな20代位の優男と、ガタイの良いイカつい顔の30代位の男だった。
「おおー。そなたが光の力を宿す者か!」
偉そうな恰幅の良い50代位の男が太陽を見ると、早速近づいて来てジロジロと太陽を見回した。
「胸は無いが大層な美人だな!よし決めた、お前をワシの第3の妻にしてやろう!ワシは王族の末裔ぞ。喜ぶがいい」
「はぁー!!!?」
太陽、悪男、鳥の長の声が合わさった。
空とガソルは耳と尻尾が逆立ち臨戦体制になった。
ベイティは静かに成り行きを見守っている。
「第3の…あの…俺男ですけど…」
「何だと!ではお前は勇者の方か?」
「聖女の方だと思います。勇者は別にいますから」
「何だと!では今代の金の者はどちらも男か!では仕方ない、そちと勇者にワシの娘達をやろう。世が世なら王女だぞ」
「お断りします!」
何なんだコイツ!
空が先程言っていた、太陽を王族に取り込みたいという発言は当たっていた様だ。だけど、こんなに一方的な相手とは思わなかった。
こちらの事情を全く聞こうともしない男にムカムカしてくる。
「何故じゃ?ワシの娘と結婚し、聖女か勇者のどちらの子に金の力が伝われば、そちも役目は果たせるだろう」
「…あなたの言ってる事が分かりません」
この男は何を言ってるんだろう。何故太陽と勇者の未来をコイツが決めつけるのか。
だんだんムカムカを通り越して、吐き気がしてきた。
「お前こそ何を言っている?王族は次世代に金の血を残すのが役割じゃ。お前と勇者が男同士で産めないなら、他の王族の女に産ませるのが役割だろう。これが昔からの王族の掟じゃ」
王族の掟。
自由を望めず、飼い殺され、次世代を産むだけの存在。
気分が悪くて立ち眩みでよろけた太陽を、空が支えた。
「人間よ。コイツにはそれは当てはまらん」
「何?」
「コイツはそもそもこの世界の人間では無い。この滅びゆく世界を救う為に異世界から来た者だ。よって、お前達の為に犠牲になる必要は無い」
「何だと!お前は東の獣だな!獣風情が光の王族に盾突くとは何事か!」
瞬間、男の足元の数箇所がザシュッという音と共に削れた。
驚いて、足を大きくバタバタさせた男の足元に、更に追加で数本の赤い羽根が刺さった。ガソルと鳥の長だった。
「ひい~!何をする!」
「我が一族ばかりか、聖女に祝福を受けた聖獣を獣呼ばわりするか!死にたいらしいな!」
「だから人間の王族は大嫌いなんだよ!こんなヤツ殺して、皮を剥いで、砂漠の虫達にくれてやろう!」
「ひい~!おい!お前達、ワシを助けんか!」
男がわめきながら自分の背後を振り向いた。
チャラい優男はニヤニヤして様子を見ている。護衛の方は微動だにせず控えたままだ。
「お前達も我らを愚弄するなら容赦せんぞ」
「支援と後処理は任せな。アタシらの得意分野だよ」
ガソルと鳥の長の目が、それぞれ青く、赤く光っている。興奮して好戦的になっている証拠だ。
それを見て優男が先程から静かなベイティに視線を向けた。
「そちらのエルフはどういう立場ですか?」
「我々エルフは金の者につく。彼が望まない事に手を貸すつもりは無い」
「東、南、西は王族で無く、あくまで金の力を宿す彼につくという事ですね?」
優男の言葉に、ガソル、鳥の長、ベイティがそれぞれに肯定した。
「という事みたいですよ元王族様」
優男が、先程から顔を真っ青にしている恰幅の良い元王族の男に近づいた。
「阿呆、阿呆だと思ってたけど。ここまで愚かだと思わなかったです。金の者に無礼を働いた阿呆様はもう人間の代表にも王族にも相応しく無いから、退場でいいですね」
「何を…ムグッ」
優男は偉そうな男の口に布を詰め込んで、一気に紐でグルグル巻きにすると、男を護衛の男へ放り投げた。
それを護衛の男がまるで荷物を受け取る様に一度腕で受け止め、足元に捨てた。床に落ちた元王族の男はグフッと変な声を上げて動かなくなった。
「さて」
優男がターバンの様に被っていた布を外しながら振り向く。天然パーマのかかった見事なウェーブが広がった。優男の髪はまるで透け具合で金に見えるかの様な薄い茶色だった。
優男はそのままその場に跪いた。護衛の男も優男に倣い跪く。
展開についていけず空に支えられたままだった太陽に向かって、優男が頭を垂れた。
「金の者よ。数々のご無礼申し訳ございませんでした。我が名はアキエス。元勇者の末裔に連なる者。阿呆の元王族に代わり私が人間族をまとめ上げ、貴方様に従いましょう」
23
お気に入りに追加
146
あなたにおすすめの小説

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。

【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!
つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。
冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。
全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。
巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる