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第四章 誰がために、その金は甦るのか
19 最終話
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ルースサンハ アノ バケモノニ
クワレタ
クワレタ
クワレタ
「うわぁぁぁ!違う!違う!」
「セーヤ!?ちょっと、アンタ大丈夫かい!?」
長の手を振り払って、窓から外に飛び出した。
そんな筈ない。ルースさんが俺を置いて死ぬ筈無い。
前にルースと再会した頂きに向かって走った。そこに彼が待っている気がして。
墓の側に行っても誰もいなかった。
渓谷の頂きで1番全体が見渡せる場所。
そこから、周りを見回しても、誰もいない。
「ルースさん!」
返事は無い。そんな筈ない。あの人が俺を置いて遠くに行くわけない。
「ルースさん、出てきてよ!じゃないと俺飛び降りますよ!」
「セーヤ!」
太陽の名を呼んだのは空だった。人型の空が太陽を追ってこちらに向かってくる。その後ろにはベイティ達も続いてるのが見える。
「ルースさん…」
どこ?
空に腕を捕まれる寸前に、太陽は崖から飛び降りた。
前に経験した浮遊感が身体を包んだ。
でも恐怖は無かった。太陽にとってはルースのいない世界の方が怖かったから。
ドスンッ
落下する太陽を受け止めた腕があった。
赤い羽根が舞って、受け止めた人物がそのまま太陽を抱きしめた。
ルースでは…無かった。
「ばっかやろうっ。羽根も無い人間がこっから落ちて、無事な訳ないだろ」
「悪男…」
「頼むから、お前までいなくなるなよっ。ルース兄貴の代わりにはなれないけど、側にいてやるからっ」
「……」
「お前が少しでも寂しくないように、俺もソラ兄貴も側にいるからっ、だからお前までいなくなるなよ…」
そのまま悪男が太陽を抱いて、上空へ羽ばたく。
眼下に渓谷が広がってるのが見えた。ルースが美しいと言った赤い地層が幾重にも広がっていた。それが徐々に滲む。
「……うっ」
悪男にしがみついて、泣いた。ルースは来なかった。それがどういう意味を持つのか考えたくなかった。
◇◇◇
悪男に連れられて、西の館の側に降り立つ。足に力が入らず、その場に座り込んだ。すぐに空達が駆け寄って来た。
泣いて項垂れる太陽に、誰も声がかけられずにいると、太陽の腕輪が再び緑色に淡く光った。細い緑色の光がベイティに向かって伸びて、その指に巻き付いて実体化した。
太陽が泣きながら、ぼんやりした目でそれを見る。実体化した緑の先に指輪が見えた。
「…ルースさん、そこにいるの?」
ハラハラと涙が止まらない。なんだかそこにルースがいる気がして視線が外せない。
「セーヤ君…これは、本当は君に見せるつもりは無かった…」
ベイティが観念した様に近づいて来た。
指輪から取り出した物を太陽に見せる。
人の右腕だった。それはまるで引きちぎったかの様に切断されていた。
ベイティの指に絡まっていた緑が再び淡い緑の光に戻ると、今度はベイティの取り出した腕に向かって伸びていく。
淡い緑の光は指や腕に巻きついて実体化した。まるでルースに甘える時の様に、その指にその腕に緑が巻きついていた。
「ルースさん、そこに居たんですね」
泣きながら微笑んで、太陽がその腕を優しく手に取った。
腕は冷たかった。指は固くなっている。
それでも、見覚えのある手先だった。
それを胸に抱きしめる。
やっと会えた。
もう離れたくない。もう離されたくない。
どうしたらいい?ねえルースさん。
「あ、そうだ」
良いことを思いついた。太陽はニッコリ微笑んだ。
泣きながらニッコリ笑う太陽は、周囲から見ると不気味に映った。まるで精神が壊れてしまった様な不安定さを感じさせた。
そして、その予感通り、太陽は信じられない行動に出た。ルースの腕を手に取り、口元に持っていくと、まるで食べるかの様に口を開けた。
空が慌ててルースの腕を奪った。太陽の口の中で歯がカツンと音を鳴らした。
「セーヤ!お前何を…」
「ひどいよ、空。ルースさん返して」
「何をするつもりだ…」
「食べるんだよ。そしたら、ルースさんは俺の一部になるでしょ?そしたら、もう誰にも引き離せないから」
名案でしょ?と微笑むその目はどこか虚だった。
◇◇◇
名もない世界の大陸中央部。
そこはかつて栄華を極めた場所。
この地の瘴気を祓うには聖女の誕生が必須であった。
そんな中、聖女の能力の開花と引き替えにした代償は大きかった。聖女が正気を失う程にー。
聖女の能力が開花したのは偶然か、はたまた意図的な物かー。
その真意は気づかれる事なく物語は転がって行く。
第四章 誰がために、その金は甦るのか。完。
ーーー
BL大賞の期間は毎日更新予定です。
第五章は明日から始まります。
引き続きお読み頂けたら嬉しいです。
クワレタ
クワレタ
クワレタ
「うわぁぁぁ!違う!違う!」
「セーヤ!?ちょっと、アンタ大丈夫かい!?」
長の手を振り払って、窓から外に飛び出した。
そんな筈ない。ルースさんが俺を置いて死ぬ筈無い。
前にルースと再会した頂きに向かって走った。そこに彼が待っている気がして。
墓の側に行っても誰もいなかった。
渓谷の頂きで1番全体が見渡せる場所。
そこから、周りを見回しても、誰もいない。
「ルースさん!」
返事は無い。そんな筈ない。あの人が俺を置いて遠くに行くわけない。
「ルースさん、出てきてよ!じゃないと俺飛び降りますよ!」
「セーヤ!」
太陽の名を呼んだのは空だった。人型の空が太陽を追ってこちらに向かってくる。その後ろにはベイティ達も続いてるのが見える。
「ルースさん…」
どこ?
空に腕を捕まれる寸前に、太陽は崖から飛び降りた。
前に経験した浮遊感が身体を包んだ。
でも恐怖は無かった。太陽にとってはルースのいない世界の方が怖かったから。
ドスンッ
落下する太陽を受け止めた腕があった。
赤い羽根が舞って、受け止めた人物がそのまま太陽を抱きしめた。
ルースでは…無かった。
「ばっかやろうっ。羽根も無い人間がこっから落ちて、無事な訳ないだろ」
「悪男…」
「頼むから、お前までいなくなるなよっ。ルース兄貴の代わりにはなれないけど、側にいてやるからっ」
「……」
「お前が少しでも寂しくないように、俺もソラ兄貴も側にいるからっ、だからお前までいなくなるなよ…」
そのまま悪男が太陽を抱いて、上空へ羽ばたく。
眼下に渓谷が広がってるのが見えた。ルースが美しいと言った赤い地層が幾重にも広がっていた。それが徐々に滲む。
「……うっ」
悪男にしがみついて、泣いた。ルースは来なかった。それがどういう意味を持つのか考えたくなかった。
◇◇◇
悪男に連れられて、西の館の側に降り立つ。足に力が入らず、その場に座り込んだ。すぐに空達が駆け寄って来た。
泣いて項垂れる太陽に、誰も声がかけられずにいると、太陽の腕輪が再び緑色に淡く光った。細い緑色の光がベイティに向かって伸びて、その指に巻き付いて実体化した。
太陽が泣きながら、ぼんやりした目でそれを見る。実体化した緑の先に指輪が見えた。
「…ルースさん、そこにいるの?」
ハラハラと涙が止まらない。なんだかそこにルースがいる気がして視線が外せない。
「セーヤ君…これは、本当は君に見せるつもりは無かった…」
ベイティが観念した様に近づいて来た。
指輪から取り出した物を太陽に見せる。
人の右腕だった。それはまるで引きちぎったかの様に切断されていた。
ベイティの指に絡まっていた緑が再び淡い緑の光に戻ると、今度はベイティの取り出した腕に向かって伸びていく。
淡い緑の光は指や腕に巻きついて実体化した。まるでルースに甘える時の様に、その指にその腕に緑が巻きついていた。
「ルースさん、そこに居たんですね」
泣きながら微笑んで、太陽がその腕を優しく手に取った。
腕は冷たかった。指は固くなっている。
それでも、見覚えのある手先だった。
それを胸に抱きしめる。
やっと会えた。
もう離れたくない。もう離されたくない。
どうしたらいい?ねえルースさん。
「あ、そうだ」
良いことを思いついた。太陽はニッコリ微笑んだ。
泣きながらニッコリ笑う太陽は、周囲から見ると不気味に映った。まるで精神が壊れてしまった様な不安定さを感じさせた。
そして、その予感通り、太陽は信じられない行動に出た。ルースの腕を手に取り、口元に持っていくと、まるで食べるかの様に口を開けた。
空が慌ててルースの腕を奪った。太陽の口の中で歯がカツンと音を鳴らした。
「セーヤ!お前何を…」
「ひどいよ、空。ルースさん返して」
「何をするつもりだ…」
「食べるんだよ。そしたら、ルースさんは俺の一部になるでしょ?そしたら、もう誰にも引き離せないから」
名案でしょ?と微笑むその目はどこか虚だった。
◇◇◇
名もない世界の大陸中央部。
そこはかつて栄華を極めた場所。
この地の瘴気を祓うには聖女の誕生が必須であった。
そんな中、聖女の能力の開花と引き替えにした代償は大きかった。聖女が正気を失う程にー。
聖女の能力が開花したのは偶然か、はたまた意図的な物かー。
その真意は気づかれる事なく物語は転がって行く。
第四章 誰がために、その金は甦るのか。完。
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