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第六章 運命を壊す者
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「望まなければ王女の意識には塗り変わらない。そう言ってましたよね?私には元のセーヤがそれを望んだとは思えないのですが」
チラリとラリエスはルースを見た。
あれだけルースに執着していた彼が自らいなくなるとは思えない。
「…ここに来る前から、王女は目覚めていた」
「どういう事ですか?」
「前回も彼の中に既に王女の気配はあった。北に来る前に目覚めるきっかけがあったのだろう」
「ハッキリ言ってください、よくわかりません」
ラリエスの言葉に、魔王は溜め息を1つ吐き、空と悪男に目を向けた。
「例えば自ら消えたいと思ったとかな」
魔王の言葉に空と悪男は無言だった。だがその表情を見れば、心当たりがある事は一目瞭然だ。
「どういう事?」
2人の反応につられる様にルースの表情も険しくなる。
仕方なく、空は西の館での事を話した。ルースが死んだと思って、太陽が崖から飛び降りた時の事だ。
ルースは険しい表情のまま聞いていた。その顔は先程より青ざめている。ラリエスと魔王は特に表情を変える事は無かった。
「魔王、セーヤを元に戻す方法は…」
震える手を両手を合わせる事で、無理やり気持ちを落ち着かせてルースが尋ねた。太陽は自分を諦めないでくれた。今度はルースが太陽に向き合う番だ。
「金の封印を各地ですれば最後に金の力は消滅する。もしかしたらその時戻るかもしれん」
「消滅?金の力は無くなるの?」
ルース同様、空と悪男も初耳だった様で驚いていた。
「無くなりますよ。元々、魔王や瘴気を封印するのが役割です。それが終われば勇者も聖女も普通の人間に戻る。そしてそのまま夫婦になれば、いつかその血にまた金の力が宿ると言われてます」
「じゃあこの先は」
「恐らくもう金の者は生まれないですね。我々はどちら男ですから」
むしろ都合が良かったですよ、とラリエスはどこか嬉しそうだ。
以前の様に周囲が無理やり2人を結婚させる必要がないからだろう。これで後は瘴気を封印できれば、彼は望み通り恋人のキャスと思いを遂げられる。
「貴方達には悪いですけど、私は王女が蘇って良かったと思ってますよ」
「何だって?」
ルース、悪男がラリエスに対して殺気を向けた。
「だってそうでしょう?今は世界の命運がかかってるのに、恋愛に左右されて精神が不安定になる人間より、断固とした意思で成し遂げようとする人間の方が望ましい」
「でもここまで各地の結界を復活させて来たのはセーヤだ!」
「ソウダ」
王女様は鳥族にとって憧れの人物だが、友として過ごし、今の鳥族を救ったのは間違いなく太陽だ。
「それは認めてます。だが王女は私の幼馴染でもあり、友人でもある。本音を言えば、私は彼女には消えて欲しくない」
「……」
ラリエスの言葉にルースも悪男も表情が険しくなった。空は複雑そうな表情を浮かべながらも無言を貫いていた。
チラリとラリエスはルースを見た。
あれだけルースに執着していた彼が自らいなくなるとは思えない。
「…ここに来る前から、王女は目覚めていた」
「どういう事ですか?」
「前回も彼の中に既に王女の気配はあった。北に来る前に目覚めるきっかけがあったのだろう」
「ハッキリ言ってください、よくわかりません」
ラリエスの言葉に、魔王は溜め息を1つ吐き、空と悪男に目を向けた。
「例えば自ら消えたいと思ったとかな」
魔王の言葉に空と悪男は無言だった。だがその表情を見れば、心当たりがある事は一目瞭然だ。
「どういう事?」
2人の反応につられる様にルースの表情も険しくなる。
仕方なく、空は西の館での事を話した。ルースが死んだと思って、太陽が崖から飛び降りた時の事だ。
ルースは険しい表情のまま聞いていた。その顔は先程より青ざめている。ラリエスと魔王は特に表情を変える事は無かった。
「魔王、セーヤを元に戻す方法は…」
震える手を両手を合わせる事で、無理やり気持ちを落ち着かせてルースが尋ねた。太陽は自分を諦めないでくれた。今度はルースが太陽に向き合う番だ。
「金の封印を各地ですれば最後に金の力は消滅する。もしかしたらその時戻るかもしれん」
「消滅?金の力は無くなるの?」
ルース同様、空と悪男も初耳だった様で驚いていた。
「無くなりますよ。元々、魔王や瘴気を封印するのが役割です。それが終われば勇者も聖女も普通の人間に戻る。そしてそのまま夫婦になれば、いつかその血にまた金の力が宿ると言われてます」
「じゃあこの先は」
「恐らくもう金の者は生まれないですね。我々はどちら男ですから」
むしろ都合が良かったですよ、とラリエスはどこか嬉しそうだ。
以前の様に周囲が無理やり2人を結婚させる必要がないからだろう。これで後は瘴気を封印できれば、彼は望み通り恋人のキャスと思いを遂げられる。
「貴方達には悪いですけど、私は王女が蘇って良かったと思ってますよ」
「何だって?」
ルース、悪男がラリエスに対して殺気を向けた。
「だってそうでしょう?今は世界の命運がかかってるのに、恋愛に左右されて精神が不安定になる人間より、断固とした意思で成し遂げようとする人間の方が望ましい」
「でもここまで各地の結界を復活させて来たのはセーヤだ!」
「ソウダ」
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「それは認めてます。だが王女は私の幼馴染でもあり、友人でもある。本音を言えば、私は彼女には消えて欲しくない」
「……」
ラリエスの言葉にルースも悪男も表情が険しくなった。空は複雑そうな表情を浮かべながらも無言を貫いていた。
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