【完結】壊された女神の箱庭ー姫と呼ばれていきなり異世界に連れ去られましたー

秋空花林

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第五章 果てなき旅路より戻りし者

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「悪男!ごめんな!南に着いたら肉やるから!」
「本当だな!嘘ついたら、もう家族やめてやる!」
「わー!悪男もショーキも空も本当にごめん!」
「ウソ、カゾクやめない」
「ゔぅショーキ!」
「…………(拗)」

 太陽は今、鳥になった悪男の背中で南へ移動しながら全力で謝っていた。

 ルースと幸せな朝ご飯を摂って外に出たら、いつも通りの空と、プンプン怒っている悪男が待っていた。

 2人の食事を忘れてた!

 昨日、乗り物酔い(?)で小屋で休んだ後、すっかり2人の事を忘れていた!主人失格だー!

 落ち込む太陽に、空は適当に食事はしたと言った。ただ、空は肉を。悪男には木の実をやったので、不貞腐れたという事だった。

 それで、そのまま悪男は機嫌が悪いにも関わらず、こうやってまた太陽達を南に運んでくれてるのだ。

 ちなみに、ガソルやその側近達は自分の脚でむかっている。

「なら、僕の家で美味しい肉料理を作るよ」
「ぐす、ルースさん」

 半泣きの太陽を見兼ねたのか、ルースが申し出てくれた。

「焼いたやつ!?」
「ニク!」
「もちろん。良ければ味もつけるよ」
「やったー!」
「ジュル(よだれ)」

 ルースの提案に悪男の機嫌も直った様だ。

「ルースさん、ありがとうございます」
「いいよ。ワルオには北からずっと頑張ってもらってるし。それに、君の大切な家族なんだろう?」

 風に煽られる髪を押さえながら、ルースが微笑んだ。その言葉が、仕草が、以前のルースの様で、何だか胸がギュッと締め付けられるみたいだった。

「互いの溝は埋まった様だな」

 空の声がした。先程から人型のまま静かに座って、ずっと景色を見ているが、機嫌良さそうに尻尾が左右に揺れている。

 昨日までのルースとのギクシャクを解消させる為、小屋に2人きりにしてくれたのか、と気づいた。

「空も…いつも、ありがとう」
「ふん」

 素直じゃない銀狼は、代わりに尻尾を左右に振って答えた。



◇◇◇



 南の街の手前で降りた後は、空は子犬に、悪男は小鳥に変化した。ルースと太陽は以前の様に髪と目の色を茶色に変化させた。空と悪男も見た目は茶系のよくいる種類に変化させた。

 街に入ると、早速声をかけてきた人物がいた。その人物が走り寄ってルースの腕にしがみつく。

「ルースさん!やっと見つけた!」

 懐かしのマノスだった。色んな事にバタバタして忘れていたが、南には太陽の恋敵がいっぱいだ!

「最近、全然見なくて心配してたんだよ!」
「マノス。旅に出て何かと忙しかったんだ」
「まだセーヤなんかと旅してるの!?」

 ルースの腕に掴まったまま、太陽をキッと睨んでくる。可愛い顔が台無しだ。

「マノスはセーヤを知ってるの?」
「はぁ?前に東の村から馬車で一緒に運んだじゃん」

 マノスが不思議そうにルースを見る。当のルースは何故か太陽に関わる記憶がゴッソリ抜けているので、その事も覚えて無い様だ。

「聖女様が現れたり、瘴気の正体が分かったり、大騒ぎだったのに!ラドも消えちゃうし、ルースさんも見つからないし、寂しかったんだから…」

 しゅんと元気無さそうに項垂れたマノスを見て、太陽の危険察知アンテナがピンと反応した!

 パッと太陽がマノスの両手を胸の前で掴んだ。

「それは大変だったね!マノス!何かあったら話を聞くよ!が!」
「はぁ~!?何であんたが?」
「俺達、同じ位の歳だろ?だから年齢の離れたルースさんよりが相談に乗れると思うんだ!」

 邪魔すんなよ!
 水臭いなー!

 お互い笑顔でやり合う2人を見て、ルースは1人納得した。

「2人そんなに仲良かったんだね。マノスに友達が出来て良かったよ」
「ちがっ…」
「という事でマノス。今日は俺たち行くとこあるから、またな!行こうルースさん」

 一方的にマノスに別れを告げて、太陽はルースの手を繋いで街中の雑踏に紛れ込んだ。

 危なかった。ルースは優しすぎて、困ったり弱ったりした人をほっとけ無い。あのままマノスのペースに巻き込まれたら、あざといマノスにルースを連れ去られる所だった!

 そんな2人の攻防に気づく事なく、ルースは太陽にされるがまま手を引かれてる。久しぶりの南の街並みに目を奪われてる様だ。

 そこにまた、声をかけて来た人物がいた。

「よお!ルース!久しぶり、今夜どうだ?」

 恋敵第2弾、鞄屋の店主だ!
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