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第五章 果てなき旅路より戻りし者
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あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いします。
ーーー
「どうして、ずっと遠くを見てるんですか?もしかして魔王に会いたいんですか?」
金の少年の言葉に、一瞬ルースは目を見開いた。図星だったからだ。何だか居心地が悪くて、プイと顔を背けた。
「…わからない」
「魔王の事、好きになったんですか?」
視線は自然に北の方を見てしまう。
「ただ気になるんだ。目が追ってしまう」
「…っ」
ルースの腕を掴んで、少年が自分に振り向かせた。
「俺あきらめません」
「何を…」
「ルースさんが俺の事忘れて、他の奴好きになっても、きっとまた俺に振り向かせます」
金の両目が力強くルースを見つめる。
この瞳を知ってる気がする。
なのに思い出せなくて、それが辛くてルースは顔を伏せた。
「…思い出せないんだ。君の事」
「思い出せなくてもいいんです」
「……?」
「俺がまた貴方に俺の事を好きになってもらう為に、イチから頑張るから…」
美しい瞳から涙が溢れた。思わずルースは指で少年の涙を拭った。
「どうして、そこまで僕にこだわるの」
「貴方は俺にとって…この世界で生きる意味だから…だから俺を避けないで…お願いします」
悲痛な声に、それ以上拒めなくて、躊躇いがちにルースは太陽の肩を引き寄せた。
抱きしめる事も突き放す事もできず。ただ優しく寄り添う。
「わかった。もう避けない」
「……」
「戸惑ってたんだ。他の事は覚えてるのに、すっぽり君の記憶だけ抜けてて。それに…」
「…何ですか?」
「僕が金の者に手を出すなんてあり得ないと思ったんだ。金の者は金の者と結ばれる筈だから」
少年がムッとしてルースを睨んできた。自分は何かマズい事を言っただろうか。
「ルースさん、それ前も言ってました。そして空に怒られてた」
「怒られてた?」
「そうやって、勇者と結ばれるべきだと決めつけて、また500年前の王女の時みたいに俺を追い詰めるのかって」
「…参ったな」
ルースは溜め息を吐いた。これはもう観念するしかない。
「降参だよ。金の者だからって決めつけるのもやめる。思い出せる自信は無いけど、まずは瘴気の件が片付くまでは一緒にいるよ」
「ありがとうございます。俺、頑張りますから。あと…俺の事はセーヤて呼んで欲しいです」
「…セーヤ」
「はい。ルースさん」
そう言って少年は嬉しそうに笑った。
その笑顔が綺麗で、切なくて、思わず抱きしめてあげたくなった。
その気持ちをルースはどうにか押し留めた。
彼が自分に本気なのがわかるから。だから自分も本気で彼の気持ちに応えるつもりじゃないと、これ以上はダメだ。そう思った。
今年もどうぞよろしくお願いします。
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「どうして、ずっと遠くを見てるんですか?もしかして魔王に会いたいんですか?」
金の少年の言葉に、一瞬ルースは目を見開いた。図星だったからだ。何だか居心地が悪くて、プイと顔を背けた。
「…わからない」
「魔王の事、好きになったんですか?」
視線は自然に北の方を見てしまう。
「ただ気になるんだ。目が追ってしまう」
「…っ」
ルースの腕を掴んで、少年が自分に振り向かせた。
「俺あきらめません」
「何を…」
「ルースさんが俺の事忘れて、他の奴好きになっても、きっとまた俺に振り向かせます」
金の両目が力強くルースを見つめる。
この瞳を知ってる気がする。
なのに思い出せなくて、それが辛くてルースは顔を伏せた。
「…思い出せないんだ。君の事」
「思い出せなくてもいいんです」
「……?」
「俺がまた貴方に俺の事を好きになってもらう為に、イチから頑張るから…」
美しい瞳から涙が溢れた。思わずルースは指で少年の涙を拭った。
「どうして、そこまで僕にこだわるの」
「貴方は俺にとって…この世界で生きる意味だから…だから俺を避けないで…お願いします」
悲痛な声に、それ以上拒めなくて、躊躇いがちにルースは太陽の肩を引き寄せた。
抱きしめる事も突き放す事もできず。ただ優しく寄り添う。
「わかった。もう避けない」
「……」
「戸惑ってたんだ。他の事は覚えてるのに、すっぽり君の記憶だけ抜けてて。それに…」
「…何ですか?」
「僕が金の者に手を出すなんてあり得ないと思ったんだ。金の者は金の者と結ばれる筈だから」
少年がムッとしてルースを睨んできた。自分は何かマズい事を言っただろうか。
「ルースさん、それ前も言ってました。そして空に怒られてた」
「怒られてた?」
「そうやって、勇者と結ばれるべきだと決めつけて、また500年前の王女の時みたいに俺を追い詰めるのかって」
「…参ったな」
ルースは溜め息を吐いた。これはもう観念するしかない。
「降参だよ。金の者だからって決めつけるのもやめる。思い出せる自信は無いけど、まずは瘴気の件が片付くまでは一緒にいるよ」
「ありがとうございます。俺、頑張りますから。あと…俺の事はセーヤて呼んで欲しいです」
「…セーヤ」
「はい。ルースさん」
そう言って少年は嬉しそうに笑った。
その笑顔が綺麗で、切なくて、思わず抱きしめてあげたくなった。
その気持ちをルースはどうにか押し留めた。
彼が自分に本気なのがわかるから。だから自分も本気で彼の気持ちに応えるつもりじゃないと、これ以上はダメだ。そう思った。
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