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第五章 果てなき旅路より戻りし者
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「…だが瘴気を放っておくと世界に広がり皆狂い出すぞ」
呆れた様子の妖精王に、王女が憤慨した。
「そんなの!世界のみんなに呼びかけて、みんなで浄化すればいいじゃない!この世界全体で受けていた恩恵なら全体で取組むべきよ!貴女もそう思うでしょ!?キャス!」
「思いますが…女神様の意向に逆らう等、皆が納得しますでしょうか?」
この世界は全て金の女神様の恩恵で成り立っている。そんな思想の世の中だ。女神が我々の為に取り除いてくれた災害や苦難を自ら進んで受け入れようと思うだろうか?
「…無理だろう。それこそ女神を嫌い憎むキッカケでもなければ」
「貴方は!」
「っ!?」
「ひ、姫様!?」
急に王女に胸ぐらを掴まれて、妖精王は目を白黒させた。王女の非常識な行動にキャスは青ざめた。ラリエスは面白そうに見ている。
「貴方は!悔しくないの!?辛くないの!?こんな…世界の、クソ女の尻拭いをさせられて!」
「…辛いに決まっている。そなたは想像つくか?魔王となり封印され…延々と身を焼かれ、刻まれ、毒に侵され…それでも死ねずに浄化し続けねばならない苦しみが」
いつも無表情の魔王が表情を歪め、吐き捨てる様に言葉を紡いだ。
それを見て王女を含めた3人は気づいた。彼は無表情、無感情なのでは無い。そうしなければ耐えられないから、そうならざるをえなかったのだと。
「なら。貴方が1人で苦しむ事は無い。大きな荷物でもみんなで分ければいいのよ。私達にもそのおっきな荷物を分けてちょうだい」
王女の言葉に妖精王は信じられない物を見る様に目を見開いた。
「そなたは…」
「教えて妖精王様。歪めていた理を正したらどうなるの?」
「…穏やかだった世に、災害が起こる。地の炎が大地を焼き、海は荒れ、風害や水害が起こるだろうが具体的な事は分からぬ」
「起きた時の対処法は?」
「知らぬ。起きる前に女神が取り除くのだ。どうすべきか等わかる筈なかろう」
女神なりの愛。
それは起こるべき苦難を取り除き、穏やかに暮らせる代わりに女神の決めた通りに生きる事を義務づけられた世界。女神の箱庭。
もし、その愛を拒否するなら。
箱庭を壊すなら、苦難を乗り越える力が必要になる。
「なら…それを手に入れる方法はない?」
「何?」
「貴方は時を操ると聞いたわ。女神様の次に強い能力を持っていると。過去や未来、どこでもいい。何か手立ては無い?」
「……」
「お願い。もう…こんな残酷な連鎖は、私達の代で終わらせたいの」
睨みつける様な王女の視線に、妖精王が先に視線を逸らした。元々、金の力を宿した聖女や勇者には妖精王は逆らえない。
「別世界へ送る事なら出来る」
「別世界?」
「別の災害のある世界へ送り、体験し学び、そなたが知識を得た時、こちらへ戻って来れる様になら…出来る」
「ダ、ダメです!姫様!」
キャスが反対の声を上げた。
彼女はこの世界で守られるべき光の聖女。それに王女だ。自ら危険に飛び込んでいい人では無い。
「それは何十年、何百年かかるかもわからん。途中で向こうで生死を繰り返し、いつ戻って来れるかもわからん、危険な…」
「何て楽しそうなの!」
「…危険な旅だぞ」
「誰も行った事の無い世界で旅が出来るなんて!私行くわ!きっとこの世界にとって助けになる物を得て帰って来るわ!」
興奮気味の王女。
唖然とする妖精王。
慌てる女騎士。
大笑いする勇者。
そんな軽いノリで決めていいの?傍観者として観ていた自分でさえ、心配になってしまう。
もしかして…これが俺の…前世?
そこから先を観る事なく、意識が暗転した。
呆れた様子の妖精王に、王女が憤慨した。
「そんなの!世界のみんなに呼びかけて、みんなで浄化すればいいじゃない!この世界全体で受けていた恩恵なら全体で取組むべきよ!貴女もそう思うでしょ!?キャス!」
「思いますが…女神様の意向に逆らう等、皆が納得しますでしょうか?」
この世界は全て金の女神様の恩恵で成り立っている。そんな思想の世の中だ。女神が我々の為に取り除いてくれた災害や苦難を自ら進んで受け入れようと思うだろうか?
「…無理だろう。それこそ女神を嫌い憎むキッカケでもなければ」
「貴方は!」
「っ!?」
「ひ、姫様!?」
急に王女に胸ぐらを掴まれて、妖精王は目を白黒させた。王女の非常識な行動にキャスは青ざめた。ラリエスは面白そうに見ている。
「貴方は!悔しくないの!?辛くないの!?こんな…世界の、クソ女の尻拭いをさせられて!」
「…辛いに決まっている。そなたは想像つくか?魔王となり封印され…延々と身を焼かれ、刻まれ、毒に侵され…それでも死ねずに浄化し続けねばならない苦しみが」
いつも無表情の魔王が表情を歪め、吐き捨てる様に言葉を紡いだ。
それを見て王女を含めた3人は気づいた。彼は無表情、無感情なのでは無い。そうしなければ耐えられないから、そうならざるをえなかったのだと。
「なら。貴方が1人で苦しむ事は無い。大きな荷物でもみんなで分ければいいのよ。私達にもそのおっきな荷物を分けてちょうだい」
王女の言葉に妖精王は信じられない物を見る様に目を見開いた。
「そなたは…」
「教えて妖精王様。歪めていた理を正したらどうなるの?」
「…穏やかだった世に、災害が起こる。地の炎が大地を焼き、海は荒れ、風害や水害が起こるだろうが具体的な事は分からぬ」
「起きた時の対処法は?」
「知らぬ。起きる前に女神が取り除くのだ。どうすべきか等わかる筈なかろう」
女神なりの愛。
それは起こるべき苦難を取り除き、穏やかに暮らせる代わりに女神の決めた通りに生きる事を義務づけられた世界。女神の箱庭。
もし、その愛を拒否するなら。
箱庭を壊すなら、苦難を乗り越える力が必要になる。
「なら…それを手に入れる方法はない?」
「何?」
「貴方は時を操ると聞いたわ。女神様の次に強い能力を持っていると。過去や未来、どこでもいい。何か手立ては無い?」
「……」
「お願い。もう…こんな残酷な連鎖は、私達の代で終わらせたいの」
睨みつける様な王女の視線に、妖精王が先に視線を逸らした。元々、金の力を宿した聖女や勇者には妖精王は逆らえない。
「別世界へ送る事なら出来る」
「別世界?」
「別の災害のある世界へ送り、体験し学び、そなたが知識を得た時、こちらへ戻って来れる様になら…出来る」
「ダ、ダメです!姫様!」
キャスが反対の声を上げた。
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「それは何十年、何百年かかるかもわからん。途中で向こうで生死を繰り返し、いつ戻って来れるかもわからん、危険な…」
「何て楽しそうなの!」
「…危険な旅だぞ」
「誰も行った事の無い世界で旅が出来るなんて!私行くわ!きっとこの世界にとって助けになる物を得て帰って来るわ!」
興奮気味の王女。
唖然とする妖精王。
慌てる女騎士。
大笑いする勇者。
そんな軽いノリで決めていいの?傍観者として観ていた自分でさえ、心配になってしまう。
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そこから先を観る事なく、意識が暗転した。
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