95 / 181
第四章 誰がために、その金は甦るのか
6
しおりを挟む
空と長が話し合いを設ける前に、時間は遡る。
「~~~~っ!」
強く寒い風を全身に浴びながら、太陽は必死に悲鳴を飲み込み恐怖に耐えていた。
今の状況は言うなれば深夜のダイビング!深夜のジェットコースター!
デートなんて甘い物じゃ無い。まさに生死をかけた冒険劇だ!
攫って欲しい、と泣いて縋った恋人にルースは優しく、いいよ、と返事した。
ルースは鳥族では無いから空は飛べない。なら西の館の頂きから降りるとなると力技しか無いわけで…。
みんなにバレない様に静かにしててね、と言った後。ルースは太陽を片手で抱きしめると、崖をダイブした。
ひえええーっ!!
バレたら連れ戻されると分かってるから、悲鳴は何とか抑えた。それでも、落下する浮遊感への恐怖は消せない。
闇夜の中、落ちていく恐怖に怯える太陽と違って、ルースは楽しそうに笑ってる。
「大丈夫。絶対落とさないからね。どんどん行くよ」
優男に見えて意外にルースは冒険家の様だ。
突然、落ちていく浮遊感から引っ張られる様な負荷がかかる。
それまで真下から受けていた風を横に受けた事で、今度は横に移動してるだと気づいた。
「ヘー!スゴイ!セーヤ見てごらん。綺麗だよ!」
ルースの言葉に恐る恐る目を開けると。そこは先ほど長と話し合う為に通った渓谷の合間だった。
「わぁ…綺麗…」
思わず感嘆が漏れる。
闇夜に幾つもの光る鉱石が浮かび上がる幻想的な場所だった。淡い光、強い光、点滅する光。様々な光の向こうにはほんのりと赤い地層が折り重なってるのが見えた。
ルースはその光る渓谷の合間を、次々と片手で蔦を生じさせては、振り子の要領で宙を移動していた。
ルースさん、ス○イダーマンみたい!
優しくてカッコ良くてセクシーな上に冒険も出来る!やっぱり俺の恋人は最高だ!
相変わらず全身に風を受けてるから寒いし、浮遊感を感じる為怖さは相変わらずだけど。
目の前の光景は素晴らしかった。
都会の夜景とは違う自然ならではの神秘さが目を奪う。
「西は昼も夜も美しいね」
ルースの言葉に思わず笑う。
太陽が長に述べた感想と同じだからだ。美しいと感動する事を共有できたことが嬉しかった。
「ルースさんと見れて嬉しいです」
「僕もだよ」
ルースへの信頼と眼前の美しい光景から、太陽は暫く恐怖を忘れて深夜のデートを楽しんだのだった。
◇◇◇
パチパチ パチッ
焚き火の様な乾燥した木の音がした。
耳馴染みの良いこの音が太陽は好きだった。
少しずつ意識が覚醒して目を覚ますと、木の天井が見えた。
前に見たことがある様な…。
何度か瞬きしてから、太陽は横を見た。
簡素な暖炉に焚き火が燃えている。それが部屋全体を暖かくしているのがわかった。
ココは…東の小屋だ。
太陽がルースと2人で帰りたかった場所。
太陽の願いを叶える為、ルースがココまで連れて来てくれたんだと分かった。
窓の向こうの景色が明るい。すでに昼だ。
隣にルースはいなかった。
「ルースさん?何処?」
太陽はベッドを起きると、靴を履いて外に飛び出る。これまで何度も引き裂かれたせいか、ルースの姿が見えないと不安になってしまう。
すると腕輪から緑色の細い光が伸びて行く。
それを辿って行くと、小屋の裏側にルースがいた。
「セーヤ?起きた?」
汗を拭いながらルースが微笑んだ。その足元にはいくつもの薪。暖炉に焚べる薪を準備してくれていた。
緑の光がルースの腕輪がある側の腕に巻きついて実体化した。ぐるぐる甘える様に巻きつく細い蔦を見て、ルースが吹き出す。
「大丈夫だよ。どこにも行かないから」
「ルースさん、これって」
「セーヤの気持ちが形になってるんだよ」
俺の気持ち。ぐるぐる甘える様にルースの腕に巻きつくのを見て、ものすごく恥ずかしくなった。
「ちょっと遅いけど、昼ごはんにしようか」
ルースが優しく太陽の手を取った。ルースの腕輪からも数本の細い蔦がニョキニョキはえて、優しく太陽の腕に絡まった。
嬉しさに頬が赤くなるのがわかった。
「はい…」
照れて顔を伏せる太陽に、ルースの笑う気配がした。
「~~~~っ!」
強く寒い風を全身に浴びながら、太陽は必死に悲鳴を飲み込み恐怖に耐えていた。
今の状況は言うなれば深夜のダイビング!深夜のジェットコースター!
デートなんて甘い物じゃ無い。まさに生死をかけた冒険劇だ!
攫って欲しい、と泣いて縋った恋人にルースは優しく、いいよ、と返事した。
ルースは鳥族では無いから空は飛べない。なら西の館の頂きから降りるとなると力技しか無いわけで…。
みんなにバレない様に静かにしててね、と言った後。ルースは太陽を片手で抱きしめると、崖をダイブした。
ひえええーっ!!
バレたら連れ戻されると分かってるから、悲鳴は何とか抑えた。それでも、落下する浮遊感への恐怖は消せない。
闇夜の中、落ちていく恐怖に怯える太陽と違って、ルースは楽しそうに笑ってる。
「大丈夫。絶対落とさないからね。どんどん行くよ」
優男に見えて意外にルースは冒険家の様だ。
突然、落ちていく浮遊感から引っ張られる様な負荷がかかる。
それまで真下から受けていた風を横に受けた事で、今度は横に移動してるだと気づいた。
「ヘー!スゴイ!セーヤ見てごらん。綺麗だよ!」
ルースの言葉に恐る恐る目を開けると。そこは先ほど長と話し合う為に通った渓谷の合間だった。
「わぁ…綺麗…」
思わず感嘆が漏れる。
闇夜に幾つもの光る鉱石が浮かび上がる幻想的な場所だった。淡い光、強い光、点滅する光。様々な光の向こうにはほんのりと赤い地層が折り重なってるのが見えた。
ルースはその光る渓谷の合間を、次々と片手で蔦を生じさせては、振り子の要領で宙を移動していた。
ルースさん、ス○イダーマンみたい!
優しくてカッコ良くてセクシーな上に冒険も出来る!やっぱり俺の恋人は最高だ!
相変わらず全身に風を受けてるから寒いし、浮遊感を感じる為怖さは相変わらずだけど。
目の前の光景は素晴らしかった。
都会の夜景とは違う自然ならではの神秘さが目を奪う。
「西は昼も夜も美しいね」
ルースの言葉に思わず笑う。
太陽が長に述べた感想と同じだからだ。美しいと感動する事を共有できたことが嬉しかった。
「ルースさんと見れて嬉しいです」
「僕もだよ」
ルースへの信頼と眼前の美しい光景から、太陽は暫く恐怖を忘れて深夜のデートを楽しんだのだった。
◇◇◇
パチパチ パチッ
焚き火の様な乾燥した木の音がした。
耳馴染みの良いこの音が太陽は好きだった。
少しずつ意識が覚醒して目を覚ますと、木の天井が見えた。
前に見たことがある様な…。
何度か瞬きしてから、太陽は横を見た。
簡素な暖炉に焚き火が燃えている。それが部屋全体を暖かくしているのがわかった。
ココは…東の小屋だ。
太陽がルースと2人で帰りたかった場所。
太陽の願いを叶える為、ルースがココまで連れて来てくれたんだと分かった。
窓の向こうの景色が明るい。すでに昼だ。
隣にルースはいなかった。
「ルースさん?何処?」
太陽はベッドを起きると、靴を履いて外に飛び出る。これまで何度も引き裂かれたせいか、ルースの姿が見えないと不安になってしまう。
すると腕輪から緑色の細い光が伸びて行く。
それを辿って行くと、小屋の裏側にルースがいた。
「セーヤ?起きた?」
汗を拭いながらルースが微笑んだ。その足元にはいくつもの薪。暖炉に焚べる薪を準備してくれていた。
緑の光がルースの腕輪がある側の腕に巻きついて実体化した。ぐるぐる甘える様に巻きつく細い蔦を見て、ルースが吹き出す。
「大丈夫だよ。どこにも行かないから」
「ルースさん、これって」
「セーヤの気持ちが形になってるんだよ」
俺の気持ち。ぐるぐる甘える様にルースの腕に巻きつくのを見て、ものすごく恥ずかしくなった。
「ちょっと遅いけど、昼ごはんにしようか」
ルースが優しく太陽の手を取った。ルースの腕輪からも数本の細い蔦がニョキニョキはえて、優しく太陽の腕に絡まった。
嬉しさに頬が赤くなるのがわかった。
「はい…」
照れて顔を伏せる太陽に、ルースの笑う気配がした。
22
お気に入りに追加
147
あなたにおすすめの小説
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる