【完結】壊された女神の箱庭ー姫と呼ばれていきなり異世界に連れ去られましたー

秋空花林

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第三章 空を舞う赤、狂いて

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 空は視線は床を見ているが、昔の事を思い出そうとしている様だった。

「確か王女が読んだ歴史書に書かれていたはずだ」

 そして、それを読んだ王女が「女神様って性格が悪い!」と大層憤慨していたから覚えていたそうだ。

 …王女様に激しく同意!太陽も女神様は性格が悪いと思う。

「だがその時に鳥を庇ったのは、確か白の妖精王だった筈だ」
「白の…妖精王?」

 初めて聞く言葉だった。
 悪男を見ると、悪男も口を相変わらず押さえたまま、首をふった。

 ルースは顔を伏せたままだ。

「妖精王は北の長だ。当時、光の女神の次に力を持つ存在だった」

 歴史書では鳥を庇った妖精王が女神の怒りを買った。そして鳥の代わりに呪いを受けたとされたらしい。

 だけど、王女がいた当時にはちゃんと北の妖精王は存在していた。
 実際に王城に来た妖精王に、空もルースの伯父ベイティも会った事がある。

 だからそれは遥か昔の出来事くらいに思っていたそうだ。

 なら一旦この話は置いておいてもいいかもしれない。

 話題は金の勇者の話に移った。

 金の勇者はハッキリ明言していた。

 瘴気を抑えているのは魔王と勇者だと。それは今まで聞いていた常識とは真逆の事だった。

「魔王が瘴気を抑えてる…それは聞いた事がないな。魔王が北に現れたせいで白の者達は全滅した筈だが…」

 500年生きた空でもわからない様だった。それだけ魔王については謎に包まれている。

 この様子では北で魔王本人に対峙してみないとわからないだろう。

「魔王で言われた西でやらなきゃいけない事って何だと思う?」

 考えてもやはりわからなくて、太陽はみんなに尋ねた。それには空が当たり前の様に答えてくれた。

「セーヤのすべき事なら1つだ。この地に聖気を取り戻す事だろう」
「聖気…東の森の時みたいに?」
「そうだ。本来の聖女の役割はその金の力で国を護る事だからな」
「え!?セーヤお前聖女なのか!?」
「セーヤおんな?」
「ち、ちげーし!俺は立派な男だ!」

 言いつつも、最近自信は無くなってきた。性別は男で間違いないが、この世界での役割は聖女の代わりをする事…な気がしたきた。認めたくはないが。

「それより!聖気ってどうやって取り戻すんだよ!」

 恥ずかしさに太陽が声を荒げた。
 空が膝の悪男をチラリと見る。

「コイツでは力不足だな」
「悪かったな!」
「長、タニとんでる!」
「長を正気に戻すのが一番だろうな」

 わかった、と言いかけて、太陽は言葉に詰まった。待って…てことは、空の時みたいに俺が長と…。

「何を考えてるんだ?」

 空がニヤニヤと太陽を楽しそうに見てる。気づいてるくせに、あえて聞いてきてるんだ!太陽は赤くなった。

「体液以外で…元に戻す方法て…」
「ある事はある」
「え!?あるの!?」

 驚く太陽に空が何でも無い事の様に言った。

「ワルオは体液を与えて無いだろう?救いたいと強く願えば治癒の時の様に一緒に浄化される筈だ」
「……」

 実は密かに薄めた血を飲ませたが何となく言い出せなかった。

「ただセーヤは能力が不安定だからな。もし治癒や浄化が意識的に出来ないなら、やはり体液が1番だろう」
「体液…涙とか血でもいいの?」
「涙でも何度かに分けて与えればいい。だが血はやめておけ」
「え?」
「血は能力そのものの原液だ。強い力が宿るから相手に毒になりかねない」

 ゾッとした。あの時、ショーキに飲ませた時にショーキが即座に反応したのは、彼にとって太陽の血が強すぎたのかもしれない。今さらそう思った。
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