【完結】壊された女神の箱庭ー姫と呼ばれていきなり異世界に連れ去られましたー

秋空花林

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第二章 闇に囚われし緑よ、いずれ

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 みんなから見やすい様に、テーブルから少し離れて立つ。

 ダルタリが太陽の後ろに立ち、背中に手の平を置いた。

「今から少しセーヤ殿の力を引き出します。もしキツければ止めますので言ってください」
「わかりました」

 ダルタリの手の平が熱を帯びる。背中がだんだん温かくなってくる。

 カチャリ

 自分の中の奥深くで、鍵が開く音を聞いた気がした。

 今まで太陽さえ知らなかった自分が無理やり起こされるような感覚。

「まさかそんな!」

 長が叫び、周囲の人々が息を呑むのが聞こえた。何?何があったの?頭がボーッとしてなにも考えられない。

 背中が熱くなってきた。そこから全身に熱は広がる。

「金…」

 それは誰の声だったろうか。

 あぁ、やっぱり俺は聖女ってやつなのか?ぼんやりそう思いながら、足に力が入らず太陽は崩れ落ちた。

 それを抱きとめてくれた人がいた。

「セーヤ。大丈夫かい?」

 ルースだった。
 抱き止めたまま、心配そうに太陽の顔を覗き込んでくる。

「らいじょぶれす」

 何でかうまく舌が回らない。

 その様子を見てルースが太陽を横抱きにした。太陽もされるがまま、ルースにしがみつく。

「失礼、癒しましょう」

 ダルタリが太陽の頭に手の平を広げ翳して「癒しを」と唱えた。

 翳された部分からスーッと熱が冷えていく。先程までの疲れも消えた。

 パッと目を開けると、ルースの顔が思いのほか近くて驚く。キスでもしそうな距離に太陽の顔が赤くなった。

「ルースさん。もう大丈夫なので下ろしてください!」
「念の為、もう少し様子を見よう」

 言うとルースは太陽を横抱きにしたまま、自分の席に着いた。

 そのまま自分の太腿に太陽を横抱きのまま座らせる。

「ル、ル、ルースさん!恥ずかしいです!下ろしてください!」
「嫌だ。目を離さなくても、側にいても心配させる君が悪い。あきらめて」

 2人の様子に、長はポカンとして、ユナは太陽にサムズアップしていた。

 空は興味無さそうに欠伸して、ダルタリは無反応だった。

「んー2人はそういう関係だったのか。ルースが断るわけだ」
「お似合いよね」

 違うんです!ルースさんは多分善意でやってるんです!そしていつも俺を勘違いさせるんです!
 
 声を大にして言いたいのに、恥ずかしすぎて両手で顔を隠すので精一杯だ。

 太陽の心の声が聞こえたのか、空がハハッと軽く笑う声が聞こえた。

「ではそろそろ本題へ戻りましょうか」
「あぁ、そうだった」

 ダルタリの切り出しで一向は改めて、先程の太陽の色について話題にし始めた。

 太陽自身も気になる所なので、何とか気持ちを切り替えてみんなの話を聞く。

 どうやら最初に太陽から発せられた色は、予想を裏切って黒ではなく、白だったらしい。続いて眩い金が出てきたそうだ。

「これで間違いなくセーヤ殿は金を纏う者だとわかったな。だが、男性だから勇者という可能性も捨てきれない」
「でも色が2色なんて初めて聞いたわ」
「あの、白て確か今は無いんですよね?」

 太陽の言葉に、長がそうだ、と頷いた。

「白は本来の北の色だ。水と縁の深い白い妖精達が纏っていた」
「白い妖精…」
「魔王が甦った時に真っ先に北が瘴気で侵食されたからな。もう白を纏う者は闇堕ちして存在してない筈なんだ」

 東の村でも確かそう聞いた。

 なら何故自分がそんな色を持っているのか?そんなの太陽自身にも全くわからない。

「まぁ、理由は今は置いといて。良かったじゃないか、緑の長にルースよ」
「どういう事だ?」

 空の唐突の発言にみんなが注目する。空が楽しそうにニヤニヤしていた。

「お前らみんな忘れてるかもしれないけどよ。オレだって一度完全に闇堕ちしたんだ。それを金の力を持つセーヤが癒してくれたから元に戻った」
「確かそう言ってたな」

 長がチラリと太陽を見た。

 相変わらず太陽はルースの膝の上で大人しくしている。

「ならルースの背中の瘴気を完全に祓えなかったとしても、多少は効果があるんじゃないか?」
「確かにな。どうやって?」

 それまで大人しくしていた太陽が急に慌て出す。

「空、だめ、やめろ!」
「簡単だ。セーヤの体液を飲めば良い」

 完全に場が凍りついた。
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