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第二章 闇に囚われし緑よ、いずれ
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住宅街を歩いて行くと小さな家にたどり着いた。白くオシャレな造りの一階建の家だった。
ルースがドアを開け、どうぞと太陽と空を中に入れてくれた。
部屋の中はシンプルで、ソファやテーブル等、最低限の家具しかなかった。
そこに座ってて、と言われてソファに腰を下ろす。空も太陽の隣に座って甘える様にグリグリ頭を擦り付けて来た。
「鞄の中身を移すまで、ゆっくりしてていいよ」
ルースが鞄から中身を取り出して、太陽の荷物を移していく。
暫く空の頭を撫でて眺めていたが、手持ち無沙汰で太陽は立ち上がった。
「ルースさん、良ければ俺お茶でも淹れます」
「ありがとう。キッチンはそっちだよ」
キッチンには一通り道具が揃っていたが、あまり使われた様子が無かった。生活感が無いキッチンだった。
そこに子犬の空がトコトコやって来た。
「セーヤよ。確認しておきたい事がある。お前はルースの顔が好きなのか?」
は?顔?急な質問に一瞬キョトンとする。
言われて自問自答してみる。顔も勿論好きだけど、1番のキッカケは東の森の小屋で一緒に生活した事だ。ルースとこれからもあんな風に過ごしたいと思ったのだ。
「そうか。なら良い」
空は興味が失せた様に、ふいと居間に戻って行った。
今の質問は何だったんだ?
不思議に思いながらも、とりあえず太陽は3人分のお茶の準備に取りかかった。
3人分のお茶を準備して戻ると、ルースは相変わらずソファに座って鞄の整理をしていて、空は反対のソファで丸まっていた。
その光景を見て、こういうの何かいいな、と気持ちがホッコリする。こんな時間がずっと続けばいいのにー。
3人分のお茶を置いて太陽はソファに座った。そのまま横で寝てる空を撫でた。太陽に撫でられて、空は気持ち良さそうだ。
「セーヤ出来たよ。はい。もう荷物は移したからね」
ルースが鞄と指輪を渡してくれたが、受け取るのを躊躇ってしまう。
「どうしたの?」
「ルースさんの伯父さんに会ったらもうお別れですか?」
「え?」
「前にいつまで一緒にいれるか分からないからって」
「あれは…」
いつまで一緒にいれるかわからないから鞄を。確かルースはそう言った。
ルースもそれを思い出して、フッと笑った。
「これはそんなつもりじゃないよ」
「本当に?」
「少なくとも、君が眼帯の男に会えて無事帰れるまでは側にいるよ。それまでは一緒に旅をしよう」
ルースは立ち上がり太陽の側に行くと、鞄を太陽にかけて、黄緑に煌めく指輪を渡してくれた。
「ルースさん」
太陽の声には答えず、ルースは向かいのソファに戻って、これを飲んだら出発しようと言った。
前のルースなら、不安になっている太陽を抱きしめてキスの1つもしてくれたと思う。今は必要以上に触れてくれない。
「わかりました」
寂しさを押し殺して、太陽は紅茶に口をつけた。
◇◇◇
「そろそろ向かうね」
お茶を飲んで気持ちが落ち着いた頃、ルースが立ち上がった。
白い壁に向かって歩いて立ち止まった。
壁には緑色の美しい模様が描かれている。花の様にも葉や蔦の様にも見えるデザインだった。
そこにルースが手を置くと、手の平から緑色の光が水の様に流れて全体を光らせていった。
その後、カッ!と一瞬強く光ってゆっくり消えた。
「何が…」
何が起きたか分からずルースを見ると、その容姿が変わっていた。
先ほど迄の明るい茶色の髪や瞳は、彼本来の緑色に戻っていた。
そして目についたのは耳だった。
今までと違って上に尖った形をしていた。服装もこれまでの簡素な服から、シースルーの素材を幾重にも重ねた質の良さそうな服になっていた。
「ルースさん見た目が…」
「ここではまやかしの術は全て無効化されるんだ。南の大陸の聖地だからね。ソラも戻ってるよ」
言われて横を見ると、空は獣耳と尻尾のついた人の姿に変わっていた。つまらなさそうに尻尾を軽くふっている。
「ルースさん、貴方は…」
それには答えずルースは玄関に向かった。そしてドアを開けながら振り向いた。
「セーヤ、ソラ。ようこそエルフの里へ。歓迎するよ」
ルースがドアを開け、どうぞと太陽と空を中に入れてくれた。
部屋の中はシンプルで、ソファやテーブル等、最低限の家具しかなかった。
そこに座ってて、と言われてソファに腰を下ろす。空も太陽の隣に座って甘える様にグリグリ頭を擦り付けて来た。
「鞄の中身を移すまで、ゆっくりしてていいよ」
ルースが鞄から中身を取り出して、太陽の荷物を移していく。
暫く空の頭を撫でて眺めていたが、手持ち無沙汰で太陽は立ち上がった。
「ルースさん、良ければ俺お茶でも淹れます」
「ありがとう。キッチンはそっちだよ」
キッチンには一通り道具が揃っていたが、あまり使われた様子が無かった。生活感が無いキッチンだった。
そこに子犬の空がトコトコやって来た。
「セーヤよ。確認しておきたい事がある。お前はルースの顔が好きなのか?」
は?顔?急な質問に一瞬キョトンとする。
言われて自問自答してみる。顔も勿論好きだけど、1番のキッカケは東の森の小屋で一緒に生活した事だ。ルースとこれからもあんな風に過ごしたいと思ったのだ。
「そうか。なら良い」
空は興味が失せた様に、ふいと居間に戻って行った。
今の質問は何だったんだ?
不思議に思いながらも、とりあえず太陽は3人分のお茶の準備に取りかかった。
3人分のお茶を準備して戻ると、ルースは相変わらずソファに座って鞄の整理をしていて、空は反対のソファで丸まっていた。
その光景を見て、こういうの何かいいな、と気持ちがホッコリする。こんな時間がずっと続けばいいのにー。
3人分のお茶を置いて太陽はソファに座った。そのまま横で寝てる空を撫でた。太陽に撫でられて、空は気持ち良さそうだ。
「セーヤ出来たよ。はい。もう荷物は移したからね」
ルースが鞄と指輪を渡してくれたが、受け取るのを躊躇ってしまう。
「どうしたの?」
「ルースさんの伯父さんに会ったらもうお別れですか?」
「え?」
「前にいつまで一緒にいれるか分からないからって」
「あれは…」
いつまで一緒にいれるかわからないから鞄を。確かルースはそう言った。
ルースもそれを思い出して、フッと笑った。
「これはそんなつもりじゃないよ」
「本当に?」
「少なくとも、君が眼帯の男に会えて無事帰れるまでは側にいるよ。それまでは一緒に旅をしよう」
ルースは立ち上がり太陽の側に行くと、鞄を太陽にかけて、黄緑に煌めく指輪を渡してくれた。
「ルースさん」
太陽の声には答えず、ルースは向かいのソファに戻って、これを飲んだら出発しようと言った。
前のルースなら、不安になっている太陽を抱きしめてキスの1つもしてくれたと思う。今は必要以上に触れてくれない。
「わかりました」
寂しさを押し殺して、太陽は紅茶に口をつけた。
◇◇◇
「そろそろ向かうね」
お茶を飲んで気持ちが落ち着いた頃、ルースが立ち上がった。
白い壁に向かって歩いて立ち止まった。
壁には緑色の美しい模様が描かれている。花の様にも葉や蔦の様にも見えるデザインだった。
そこにルースが手を置くと、手の平から緑色の光が水の様に流れて全体を光らせていった。
その後、カッ!と一瞬強く光ってゆっくり消えた。
「何が…」
何が起きたか分からずルースを見ると、その容姿が変わっていた。
先ほど迄の明るい茶色の髪や瞳は、彼本来の緑色に戻っていた。
そして目についたのは耳だった。
今までと違って上に尖った形をしていた。服装もこれまでの簡素な服から、シースルーの素材を幾重にも重ねた質の良さそうな服になっていた。
「ルースさん見た目が…」
「ここではまやかしの術は全て無効化されるんだ。南の大陸の聖地だからね。ソラも戻ってるよ」
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「ルースさん、貴方は…」
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