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第一章 銀狼は青に還りて
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「あの。今さらですけど、言葉遣いが悪くてすみませんでした」
太陽のいきなりの言葉遣いの変化に男がキョトンとした表情になる。
「気にするな。お前は今までの態度で構わない」
「いや、そんな訳には、てか今さらですけどお名前聞いてもいいですか?」
「今ではオレの名を呼ぶ者はいない」
「じゃあ何て呼べば」
「…その話は後にしよう」
男は太陽の手を引いてスタスタと表に向かって歩いていく。
男は軽く見て180cmは越えている。足の長さの違いのせいで、ほとんど引きずられる様にして洞穴の入口に着いた。
雲の向こうはまだ薄暗い。
だからまだ早朝だ、多分。
この世界に居ると太陽や空の変化が見えないから、時間の感覚も曖昧だ。
崖からの見晴らしは相変わらず美しかった。
少ないながらも所々に生える木々は懸命に生きようとしている。僅かながら見かけた花々も色とりどりで綺麗だった。
なのにココに生きる動物達は狂っていると言う。この男の仲間も、きっと。
「お前は洞窟の中から見ていろ。強い風が吹くから吹き飛ばされるかもしれん」
そう言って男は太陽を洞窟の入り口付近へ移動させてから、1人崖の端に立った。
男の身体が淡い青と銀の光りに包まれ四つ脚の獣になった。
風に揺れる銀色の毛並みは艶々に輝き、鋭く青い瞳は青空を思わせる程に澄んでいた。
パノラマに広がる雄大な山の景色の中、まるで1枚の絵画の様に美しい銀狼がそこにいた。
森神。
ふとその単語が浮かんだ。
ルースが言っていた森や動物を守る聖獣。
きっと彼がその聖獣だと思った。
崖下から吹き上げる風を受けながらも、雄々しく立つその姿はそれ程に神々しく美しかった。
その銀狼の周りに、いきなりつむじ風の如く風が巻き起こった。
その風は青と銀の光の粒を纏っている。少しずつ巻き起こる風が大きくなり、光の粒も増えていく。
とても幻想的な光景だった。
ワオォーン
銀狼が吠えた。
同時に、銀狼を中心に渦巻いていた大きな風が青と銀の光を纏い、一気に放射線状に放たれた。
太陽の元にも強い風が吹きこんで来た。飛ばされない様に洞穴の岩を掴んだが、不思議な事に光る風は太陽を避ける様に側を通り抜けた。
そのまま洞内を浄化していく様に光る風が駆け抜けていく。
銀狼の遠吠えが山びこで幾重にも広がって行き、それに呼応する様に、光を纏った風も遥か遠くまで広がって行くのが見えた。
「すごい…」
銀狼の力が声と風に乗って森全体に広がって行く。その幻想的な不思議な現象に太陽は感動し見惚れた。
銀狼はそのまま崖上から眼下を見下ろしている。太陽も声はかけず見守った。彼は何かを待っている。何となくそう思った。
オオーン
遥か遠くから遠吠えが聞こえてきた。それは1つ2つと増え、まるで銀狼の声に応える様に、遠くから近くからどんどん数が増えていった。
そしてー。
銀狼のいる崖下から、数匹の銀狼が飛び出て来た。洞内の広場側からも、十数匹の銀狼が入口側へ集まって来た。
どれも美しい銀の毛並みに青い瞳の狼だった。恐らくあの男が言っていた狂ってしまった仲間達だろう。
きっと、さっきの銀狼の力で仲間を正気に戻したのだ。
すごい。こんな事が出来るなんて。
太陽はただただ目の前の光景に圧倒された。
太陽のいきなりの言葉遣いの変化に男がキョトンとした表情になる。
「気にするな。お前は今までの態度で構わない」
「いや、そんな訳には、てか今さらですけどお名前聞いてもいいですか?」
「今ではオレの名を呼ぶ者はいない」
「じゃあ何て呼べば」
「…その話は後にしよう」
男は太陽の手を引いてスタスタと表に向かって歩いていく。
男は軽く見て180cmは越えている。足の長さの違いのせいで、ほとんど引きずられる様にして洞穴の入口に着いた。
雲の向こうはまだ薄暗い。
だからまだ早朝だ、多分。
この世界に居ると太陽や空の変化が見えないから、時間の感覚も曖昧だ。
崖からの見晴らしは相変わらず美しかった。
少ないながらも所々に生える木々は懸命に生きようとしている。僅かながら見かけた花々も色とりどりで綺麗だった。
なのにココに生きる動物達は狂っていると言う。この男の仲間も、きっと。
「お前は洞窟の中から見ていろ。強い風が吹くから吹き飛ばされるかもしれん」
そう言って男は太陽を洞窟の入り口付近へ移動させてから、1人崖の端に立った。
男の身体が淡い青と銀の光りに包まれ四つ脚の獣になった。
風に揺れる銀色の毛並みは艶々に輝き、鋭く青い瞳は青空を思わせる程に澄んでいた。
パノラマに広がる雄大な山の景色の中、まるで1枚の絵画の様に美しい銀狼がそこにいた。
森神。
ふとその単語が浮かんだ。
ルースが言っていた森や動物を守る聖獣。
きっと彼がその聖獣だと思った。
崖下から吹き上げる風を受けながらも、雄々しく立つその姿はそれ程に神々しく美しかった。
その銀狼の周りに、いきなりつむじ風の如く風が巻き起こった。
その風は青と銀の光の粒を纏っている。少しずつ巻き起こる風が大きくなり、光の粒も増えていく。
とても幻想的な光景だった。
ワオォーン
銀狼が吠えた。
同時に、銀狼を中心に渦巻いていた大きな風が青と銀の光を纏い、一気に放射線状に放たれた。
太陽の元にも強い風が吹きこんで来た。飛ばされない様に洞穴の岩を掴んだが、不思議な事に光る風は太陽を避ける様に側を通り抜けた。
そのまま洞内を浄化していく様に光る風が駆け抜けていく。
銀狼の遠吠えが山びこで幾重にも広がって行き、それに呼応する様に、光を纏った風も遥か遠くまで広がって行くのが見えた。
「すごい…」
銀狼の力が声と風に乗って森全体に広がって行く。その幻想的な不思議な現象に太陽は感動し見惚れた。
銀狼はそのまま崖上から眼下を見下ろしている。太陽も声はかけず見守った。彼は何かを待っている。何となくそう思った。
オオーン
遥か遠くから遠吠えが聞こえてきた。それは1つ2つと増え、まるで銀狼の声に応える様に、遠くから近くからどんどん数が増えていった。
そしてー。
銀狼のいる崖下から、数匹の銀狼が飛び出て来た。洞内の広場側からも、十数匹の銀狼が入口側へ集まって来た。
どれも美しい銀の毛並みに青い瞳の狼だった。恐らくあの男が言っていた狂ってしまった仲間達だろう。
きっと、さっきの銀狼の力で仲間を正気に戻したのだ。
すごい。こんな事が出来るなんて。
太陽はただただ目の前の光景に圧倒された。
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