【完結】壊された女神の箱庭ー姫と呼ばれていきなり異世界に連れ去られましたー

秋空花林

文字の大きさ
上 下
24 / 181
第一章 銀狼は青に還りて

22

しおりを挟む
 獣の身体がほんのり淡い光に包まれた。青と銀の光の粒が獣全体を覆っている。全体的に大きい身体が少しずつ縦長に変わっていく。

 光が消えた時。

 目の前には、長い銀髪に青い目をした男がいた。

 裸の上半身に銀の毛皮のベストを羽織り、腰回りから下は、長めの銀の毛皮を巻いていた。スリットが入っていて、男の逞しい太ももがあらわになっている。

 頭には犬みたいな銀色の獣耳がついていて、後ろにはフサフサの尻尾が見え隠れしていた。

「これならいい?」

 鋭く切長の青い目をした男が、太陽に覆い被さった。凛々しい顔立ちの美形で、30代前半位に見える。

 目の前で起きたありえない出来事に、太陽は唖然とし何の反応も出来なかった。

「どうした?」
「ど、どうしたって、何で獣が人間に…」
「オレ獣人。獣にも人にもなれる」

 獣人。

 この世界に慣れたつもりで、全く慣れてなかった!もうキャパオーバーで何て言えばいいかわからない。

「お前が欲しい」

 太陽の尻の隙間に何かが当たった。

 体勢的にそれが何かは聞かなくても分かる。

「い、いやだ。お願い止めて」

 獣人の彼に取り押さえてもう逃げられない。それでも太陽は顔を横に振って拒否を示した。

「人ならいいんだろ」
「違う…人ならいいんじゃなくて」

 ルースの顔が浮かんだ。誰でもいい訳じゃない。俺はあの人がいい。

「俺はルースさんがいいんだ。お前じゃない」

 グッと何かがお尻の真ん中を押して来た。誰も触れた事のない場所を暴こうとしている。

「嫌だ!もし無理やりしたら、お前の事嫌いになるからな…もう口も聞かないし、撫でてもやらないから」

 ボロボロと泣きながら、太陽は男の胸を叩いた。

「オレを嫌いになる?」
「嫌いになる…それにこんな無理やり抱かれたらショックで、崖から飛び降りるかも…」

 それは脅しじゃなくて。

 こんな場所に一生閉じ込められて、知らない男に好きに抱かれる位なら。いっその事飛び降りた方がマシだと本気で思った。

「しない」

 男が太陽の尻からソレを離した。

「無理矢理しない。だからまたオレを置いていくな」

 男は泣いていた。
 辛そうに顔を歪めて、その鋭い瞳から静かに涙を流していた。

 置いていく?

 俺はこの森で数日前にこの獣に初めて会ったのに。

 それでようやく気づく。この男は、自分に別の誰かを重ねていたのだと。

「俺はお前の大切な誰かじゃない」

 太陽の言葉に男の顔が更に歪む。そして俯きながら、苦しそうに呟いた。

「お前、同じ匂いがする」
「でも、見た目は違うだろ?」
「違う。でもオレには同じに感じる」

 男は太陽の側に横になると、太陽をギュッと抱きしめた。そのまま太陽の首筋に鼻を寄せてクンクンと匂いを嗅いだ。

「安心する匂い」
「…安心て」

 もしかしてコイツの飼い主の匂いとか。

 でも目の前の美丈夫が誰かに飼われているのは想像出来ない。

 それとも俺って獣臭いんだろうか。クンクンと自分でも匂いを嗅いだがよくわからなかった。

「無理矢理しないけど、お願いがある」
「何だよ」
「お前の体液飲みたい」


ーーー


 次話からR18要素入ります。閲覧注意です。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

それはダメだよ秋斗くん![完]

中頭かなり
BL
年下×年上。表紙はhttps://www.pixiv.net/artworks/116042007様からお借りしました。

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

処理中です...