22 / 181
第一章 銀狼は青に還りて
20
しおりを挟む
太陽と一緒にいたくて攫ったなら帰してくれる筈もない。もしかしてココから出さないつもりなのか?
「やだ。俺を元のとこに戻せよ。探さないといけない奴がいるんだ」
「ソトハキケン」
「危険なのはお前だろ!もういい。勝手に帰るから」
立ち上がって出口の方へ向かう。幸い弓も握り締めて持っていたし。途中で何本か落ちたが、矢も数本は残っていた。
獣は止めなかった。
少し距離を空けて太陽の後をついてくる。
歩きながら周囲を観察すると、洞窟というには丁寧に作られている感じがした。まるで自然の洞穴を人間が使い勝手の良い様に作り替えた様な。
洞穴から外に出た太陽は絶望した。
そこは斜面というより、ほぼ崖の上と言った方が正しい。せりだした僅かな面積より下は、剥き出しの斜面。そして更にその下に木々が見えた。
森や遠くを全面に見渡せる絶景の場所だった。到底降りれる高さでも、斜面でもなかった。
ショックのあまりその場に座り込む。
小屋からは大分離れている。
きっとルースでもこんな場所探せる筈がない。そもそも彼には自分を探して助ける義務もない。
もう、ルースに会えない。胸が苦しくて涙が浮かんできた。
眼帯の男も探せない。元の世界にも帰れない。
でもそれよりも。
ルースに会えない。その事実が太陽の胸を締めつけた。いつの間にか、彼の事がこんなにも好きになっていた。
「うっ、うっ、ひっく」
こんな事なら昨日ルースに好きだと伝えれば良かった。怖いなんて言わずに最後まで抱いて貰えば良かった。
始めは面倒見の良い優しいお兄さん位にしか思えなかった。
でもあの湖でキスされて、この世界では男同士での恋愛は普通だと教えてもらって。
穏やかで面倒見の良い彼と、ずっとこんな風に暮らすのも悪くないな、と思ったらもう好きになってた。
「ルースさん、ルースさん、会いたいよぉ」
寂しくて悲しくて、涙が止まらなかった。眼帯の男が見つかったらお別れする可能性がある事は理解していた。でも、いきなりこんな風にお別れなんて。
ペロリと慰める様に獣が太陽の頬を舐めた。
「やめろよ、ひっく、お前なんか許さないからな。ひっく、俺をルースさんのとこに帰せよ」
「ルース、ダレ?」
「最初に俺がお前に襲われてた時に助けてくれた人だよ」
「ワカラナイ」
「俺を助けてくれた人なんだよ。優しくて綺麗な人で、好きだったのに…」
溢れてくる涙を獣がペロリと舐めた。やめろと言っても聞かないので、もう放っておいた。
風が冷たくなってきた。厚い雲の向こうは茜色に染まりつつある。標高が高い分、地上より気温が低い。
寒い。両手で身体を抱きしめると、獣が大きな身体で太陽を囲む様に寄り添って来た。風が当たらなくなり、獣の身体が毛皮みたいに太陽を包んだ。
「何だよ。こんな事しても許さないからな」
またペロッと獣が頬を舐められた。
許さない。ルースと引き離して、こんな所に閉じ込めて。許すつもりはないのに、獣の身体はとても温かくて。
昔飼っていた愛犬を思い出した。
昔まだ両親が生きていた頃。太陽が小さな頃から飼っていた大型犬。いつも何をするにも一緒で、ペットでもあり親友でもあった。でもそんな愛犬も太陽が中学に入る頃に病気で死んでしまった。
「何で、みんな、いなくなるんだよ。ひっく。父さんも、母さんも、ルースさんも、あいつも。ひっく。みんな、俺の大事な人達はいなくなる…」
また涙が出て来た。愛犬が死んだ時も両親が死んだ時も。涙が枯れる程泣いたのに。この胸の苦しみは癒される事はない。
それでも。今は寄り添ってくれる獣の温もりが気持ち良くて。太陽は知らない内に獣に包まれて眠りに落ちた。
ーーー
次話からR18要素入ります。閲覧注意です。
明日から月・木・土曜日更新に戻ります。
「やだ。俺を元のとこに戻せよ。探さないといけない奴がいるんだ」
「ソトハキケン」
「危険なのはお前だろ!もういい。勝手に帰るから」
立ち上がって出口の方へ向かう。幸い弓も握り締めて持っていたし。途中で何本か落ちたが、矢も数本は残っていた。
獣は止めなかった。
少し距離を空けて太陽の後をついてくる。
歩きながら周囲を観察すると、洞窟というには丁寧に作られている感じがした。まるで自然の洞穴を人間が使い勝手の良い様に作り替えた様な。
洞穴から外に出た太陽は絶望した。
そこは斜面というより、ほぼ崖の上と言った方が正しい。せりだした僅かな面積より下は、剥き出しの斜面。そして更にその下に木々が見えた。
森や遠くを全面に見渡せる絶景の場所だった。到底降りれる高さでも、斜面でもなかった。
ショックのあまりその場に座り込む。
小屋からは大分離れている。
きっとルースでもこんな場所探せる筈がない。そもそも彼には自分を探して助ける義務もない。
もう、ルースに会えない。胸が苦しくて涙が浮かんできた。
眼帯の男も探せない。元の世界にも帰れない。
でもそれよりも。
ルースに会えない。その事実が太陽の胸を締めつけた。いつの間にか、彼の事がこんなにも好きになっていた。
「うっ、うっ、ひっく」
こんな事なら昨日ルースに好きだと伝えれば良かった。怖いなんて言わずに最後まで抱いて貰えば良かった。
始めは面倒見の良い優しいお兄さん位にしか思えなかった。
でもあの湖でキスされて、この世界では男同士での恋愛は普通だと教えてもらって。
穏やかで面倒見の良い彼と、ずっとこんな風に暮らすのも悪くないな、と思ったらもう好きになってた。
「ルースさん、ルースさん、会いたいよぉ」
寂しくて悲しくて、涙が止まらなかった。眼帯の男が見つかったらお別れする可能性がある事は理解していた。でも、いきなりこんな風にお別れなんて。
ペロリと慰める様に獣が太陽の頬を舐めた。
「やめろよ、ひっく、お前なんか許さないからな。ひっく、俺をルースさんのとこに帰せよ」
「ルース、ダレ?」
「最初に俺がお前に襲われてた時に助けてくれた人だよ」
「ワカラナイ」
「俺を助けてくれた人なんだよ。優しくて綺麗な人で、好きだったのに…」
溢れてくる涙を獣がペロリと舐めた。やめろと言っても聞かないので、もう放っておいた。
風が冷たくなってきた。厚い雲の向こうは茜色に染まりつつある。標高が高い分、地上より気温が低い。
寒い。両手で身体を抱きしめると、獣が大きな身体で太陽を囲む様に寄り添って来た。風が当たらなくなり、獣の身体が毛皮みたいに太陽を包んだ。
「何だよ。こんな事しても許さないからな」
またペロッと獣が頬を舐められた。
許さない。ルースと引き離して、こんな所に閉じ込めて。許すつもりはないのに、獣の身体はとても温かくて。
昔飼っていた愛犬を思い出した。
昔まだ両親が生きていた頃。太陽が小さな頃から飼っていた大型犬。いつも何をするにも一緒で、ペットでもあり親友でもあった。でもそんな愛犬も太陽が中学に入る頃に病気で死んでしまった。
「何で、みんな、いなくなるんだよ。ひっく。父さんも、母さんも、ルースさんも、あいつも。ひっく。みんな、俺の大事な人達はいなくなる…」
また涙が出て来た。愛犬が死んだ時も両親が死んだ時も。涙が枯れる程泣いたのに。この胸の苦しみは癒される事はない。
それでも。今は寄り添ってくれる獣の温もりが気持ち良くて。太陽は知らない内に獣に包まれて眠りに落ちた。
ーーー
次話からR18要素入ります。閲覧注意です。
明日から月・木・土曜日更新に戻ります。
26
あなたにおすすめの小説
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない
北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。
ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。
四歳である今はまだ従者ではない。
死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった??
十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。
こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう!
そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!?
クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで
二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。
嫌われ将軍(おっさん)ですがなぜか年下の美形騎士が離してくれない
天岸 あおい
BL
第12回BL大賞・奨励賞を受賞しました(旧タイトル『嫌われ将軍、実は傾国の愛されおっさんでした』)。そして12月に新タイトルで書籍が発売されます。
「ガイ・デオタード将軍、そなたに邪竜討伐の任を与える。我が命を果たすまで、この国に戻ることは許さぬ」
――新王から事実上の追放を受けたガイ。
副官を始め、部下たちも冷ややかな態度。
ずっと感じていたが、自分は嫌われていたのだと悟りながらガイは王命を受け、邪竜討伐の旅に出る。
その際、一人の若き青年エリクがガイのお供を申し出る。
兵を辞めてまで英雄を手伝いたいというエリクに野心があるように感じつつ、ガイはエリクを連れて旅立つ。
エリクの野心も、新王の冷遇も、部下たちの冷ややかさも、すべてはガイへの愛だと知らずに――
筋肉おっさん受け好きに捧げる、実は愛されおっさん冒険譚。
※12/1ごろから書籍化記念の番外編を連載予定。二人と一匹のハイテンションラブな後日談です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる