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第一章 銀狼は青に還りて
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ルースが準備してくれた夕食は少しの野菜と肉が入ったスープに、少し硬めのパンだった。
そのまま食べたら顎が痛くなりそうだったが、ルースがパンをスープに浸して食べるのを見て真似して食べた。味は薄めだが、噛めば噛むほど味わいがあって美味しかった。
「口に合ったかい?」
「はい。パンが硬めでしたけど、スープに浸して食べたらとても美味しかったです」
「そう。それは良かった。で、セーヤはどういう事が聞きたいのかな?」
夕食後、ルースが木彫りのコップにお茶らしき物を入れて出してくれた。それも少し薄めだが、優しい味がした。
ホッと一息吐いてから、太陽は今日1日で気になった事を尋ねた。ルースは丁寧に太陽の質問に答えてくれて、何とか今居る世界の事が分かって来た。
まずこの世界は国という概念が無い。
正確には昔はあったらしいが、500年前に魔王が光の聖女と光の勇者を倒してこの世に君臨した後。魔王の下では生き物は一律平等という事で、一切の国や地名の名乗りを禁じた。
だから『東の大陸の東の森の東の村』というややこしい言い方をするしかないのだ。
更にそれまで世界を治めていた王族は解散させられた。
過去に元王族を中心に魔王に挑んだ者達もいたが、関わった者達は魔王に皆殺しにされてしまった。今では反逆を企てる者はいなくなったそうだ。
「そもそも、魔王は不死で倒す事は出来ないからね。本来は挑むこと自体が自殺行為なんだよ」
ルースがお茶を飲みながら、ふぅ、と一息吐いた。気のせいかその表情は寂しそう見える。
それが気になったが、これ以上は踏み込んではいけない気がして、太陽はそうですかと軽く相槌を打つに留めた。
「じゃあ、もうどうする事も出来ないんですか?」
「一つだけ方法はあるんだけど」
それは光の封印。
だが、その担い手の光の聖女と光の勇者は500年前に魔王によって殺されてしまった。その代わりとなる者はそれ以来誕生していない。
今はもう、魔王の影響で少しずつ世界は壊れゆくばかり。
空は常に厚い雲で覆われ、この世界から青空と太陽と月と星が消えた。
日中も僅かな日光しか届かず、草木や植物がほとんど育たなくなった。
長年この地を守ってきた聖獣である森神も、とうとう狂ってしまった。
「……っ」
あまりの状況に、太陽は言葉を失う。
だが。
この世界の悲劇はこれだけでは無かった。
この世界の人間は、魔王だけでなく、なんと創造主である光の女神も敵に回していたのだ。
500年前。女神の遣いである光の聖女を『人間の女』が陥れた。それが光の女神の怒りを買った。
それ以来、人間は女性が生まれる確率が下がり、人口はずっと減り続けているという。
「……」
もう、太陽は相槌さえ打てなかった。
この世界はー。
間違いなく滅びに向かっている。
その事実に、太陽は戦慄した。
そのまま食べたら顎が痛くなりそうだったが、ルースがパンをスープに浸して食べるのを見て真似して食べた。味は薄めだが、噛めば噛むほど味わいがあって美味しかった。
「口に合ったかい?」
「はい。パンが硬めでしたけど、スープに浸して食べたらとても美味しかったです」
「そう。それは良かった。で、セーヤはどういう事が聞きたいのかな?」
夕食後、ルースが木彫りのコップにお茶らしき物を入れて出してくれた。それも少し薄めだが、優しい味がした。
ホッと一息吐いてから、太陽は今日1日で気になった事を尋ねた。ルースは丁寧に太陽の質問に答えてくれて、何とか今居る世界の事が分かって来た。
まずこの世界は国という概念が無い。
正確には昔はあったらしいが、500年前に魔王が光の聖女と光の勇者を倒してこの世に君臨した後。魔王の下では生き物は一律平等という事で、一切の国や地名の名乗りを禁じた。
だから『東の大陸の東の森の東の村』というややこしい言い方をするしかないのだ。
更にそれまで世界を治めていた王族は解散させられた。
過去に元王族を中心に魔王に挑んだ者達もいたが、関わった者達は魔王に皆殺しにされてしまった。今では反逆を企てる者はいなくなったそうだ。
「そもそも、魔王は不死で倒す事は出来ないからね。本来は挑むこと自体が自殺行為なんだよ」
ルースがお茶を飲みながら、ふぅ、と一息吐いた。気のせいかその表情は寂しそう見える。
それが気になったが、これ以上は踏み込んではいけない気がして、太陽はそうですかと軽く相槌を打つに留めた。
「じゃあ、もうどうする事も出来ないんですか?」
「一つだけ方法はあるんだけど」
それは光の封印。
だが、その担い手の光の聖女と光の勇者は500年前に魔王によって殺されてしまった。その代わりとなる者はそれ以来誕生していない。
今はもう、魔王の影響で少しずつ世界は壊れゆくばかり。
空は常に厚い雲で覆われ、この世界から青空と太陽と月と星が消えた。
日中も僅かな日光しか届かず、草木や植物がほとんど育たなくなった。
長年この地を守ってきた聖獣である森神も、とうとう狂ってしまった。
「……っ」
あまりの状況に、太陽は言葉を失う。
だが。
この世界の悲劇はこれだけでは無かった。
この世界の人間は、魔王だけでなく、なんと創造主である光の女神も敵に回していたのだ。
500年前。女神の遣いである光の聖女を『人間の女』が陥れた。それが光の女神の怒りを買った。
それ以来、人間は女性が生まれる確率が下がり、人口はずっと減り続けているという。
「……」
もう、太陽は相槌さえ打てなかった。
この世界はー。
間違いなく滅びに向かっている。
その事実に、太陽は戦慄した。
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