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第三章 空を舞う赤、狂いて
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空に聞いた場所。建物の1番左奥にルースはいた。窓も無い小さな小部屋みたいな場所だった。
藁も何も無い床で腕を枕にして横になっていた。
顔色はあまり良く無かった。微かに寝息が聞こえてくる。
起こすのが躊躇われて太陽は出入口付近の壁に座った。
壁にもたれ膝を抱えたまま、寝ているルースを見守る。ルースが起きたら何て言おう?何て説明したら許してくれる?そんな事を考えた。
◇◇◇
身体に暖かさを感じて、目を開けると、目の前にルースがいた。
膝を抱えてうたた寝していた太陽に、タオルケット代わりの布を掛けてくれた様だ。
ルースが気まずそうに視線を逸らして離れる仕草をした。ハッとしてその手を掴む。
ルースが目を覚ましたら何て言おうと悩んでいたのが馬鹿らしくなる程、自然に言葉が出てきた。
「ルースさん。俺を迎えに来てくれて、ありがとうございます。ルースさんにずっと会いたかったです」
きっとそれが今伝えたい素直な自分の気持ち。
太陽の言葉にルースも動きを止めて、泣きそうな表情を浮かべた。
「僕も会いたかった。君が無事かずっと心配だった…」
ルースの言葉は続かなかった。言葉を詰まらせ顔を伏せたから。
自分はこんなにもこの人を心配させていたのか。胸が苦しくなって、太陽は床に座ったままルースを引き寄せた。大人しくされるままに、ルースも太陽の前に座る。
もう逃がさないという様にルースの両肩を掴んで。それでもまだまだルースに触れたい気持ちが満足しなくて、自分のおでこを相手にくっつけた。
「ルースさんがさっき言ってた俺が悪男にキスしたって言ったの、あれ誤解です」
「……」
「悪男が何か呟いたから、耳を寄せただけです。これは空も見てる」
「……」
「俺がキスしたいって思うのも、好きなのも、これからも一緒にいたいのもルースさんだけですから」
「タイヨウ…」
「…やっと名前で呼んでくれた」
会ってから一度も呼んでもらえなかった名前。ルースだけに伝えている本当の名前。
「…さっきは酷い事してごめん」
「俺の方こそ。お礼を伝えるのが遅くなってごめんなさい」
両肩から手を離して、ルースの両頬に添えると、チュッと口づけた。ごめんなさいと仲直りのキス。
ルースが照れて頬が赤くなった。
男女問わずモテるルースが、太陽に積極的に迫られた時だけ赤くなる。きっとルースのこんな表情を知っているのは太陽だけだ。その事に胸がくすぐったくなる。
赤くなった頬に更に口づけた。
「タイヨウ待って、僕汚れてるから」
ルースがパチンと指を鳴らすと、白く綺麗な光が2人を包んだ。ルースと太陽の土や埃で汚れた身なりが綺麗になった。
それでもルースの顔や頬についた小さな傷は消えない。
頬にある傷に口づける。続いて手についた傷に。少しでも早く治ります様にと祈りながら。
「これ以上は…」
ルースが困った様に手を引こうとするが、握って離さない。その手に口づけたままルースに視線を向ける。
「どうしてですか?」
「…空や鳥族の子を待たせてるんだろ?それにこれ以上は僕が抑えられない」
「悪男はもう大丈夫。空にお願いしてきました。それに…」
ルースの手の平を広げて、自分の頬に寄せた。もう間違えない。
「俺にとって一番優先すべきなのは、あなたです」
「……っ」
ルースが息を飲んだ。その目に熱がともるのが見えた。でもそれを必死に抑えているのが、苦しそうな表情からわかる。
「ダメだよ、さっきも君に酷い事したのに。今一緒にいたら抑えきれなくて、もっと酷い事してしまう」
ルースの優しさが好きだ。
誰にでも親切で、悪男は憎い敵側の筈なのに、その配下を思いやって弔う情もある。
でも今はその優しさの奥にある物を知りたい。
「ルースさんならいいです。酷い事されても」
「……」
「ルースさんの全部、俺が受け止めます。優しいとこも、そうじゃないとこも、全部全部俺にください」
ーーー
次話、閲覧注意です。
藁も何も無い床で腕を枕にして横になっていた。
顔色はあまり良く無かった。微かに寝息が聞こえてくる。
起こすのが躊躇われて太陽は出入口付近の壁に座った。
壁にもたれ膝を抱えたまま、寝ているルースを見守る。ルースが起きたら何て言おう?何て説明したら許してくれる?そんな事を考えた。
◇◇◇
身体に暖かさを感じて、目を開けると、目の前にルースがいた。
膝を抱えてうたた寝していた太陽に、タオルケット代わりの布を掛けてくれた様だ。
ルースが気まずそうに視線を逸らして離れる仕草をした。ハッとしてその手を掴む。
ルースが目を覚ましたら何て言おうと悩んでいたのが馬鹿らしくなる程、自然に言葉が出てきた。
「ルースさん。俺を迎えに来てくれて、ありがとうございます。ルースさんにずっと会いたかったです」
きっとそれが今伝えたい素直な自分の気持ち。
太陽の言葉にルースも動きを止めて、泣きそうな表情を浮かべた。
「僕も会いたかった。君が無事かずっと心配だった…」
ルースの言葉は続かなかった。言葉を詰まらせ顔を伏せたから。
自分はこんなにもこの人を心配させていたのか。胸が苦しくなって、太陽は床に座ったままルースを引き寄せた。大人しくされるままに、ルースも太陽の前に座る。
もう逃がさないという様にルースの両肩を掴んで。それでもまだまだルースに触れたい気持ちが満足しなくて、自分のおでこを相手にくっつけた。
「ルースさんがさっき言ってた俺が悪男にキスしたって言ったの、あれ誤解です」
「……」
「悪男が何か呟いたから、耳を寄せただけです。これは空も見てる」
「……」
「俺がキスしたいって思うのも、好きなのも、これからも一緒にいたいのもルースさんだけですから」
「タイヨウ…」
「…やっと名前で呼んでくれた」
会ってから一度も呼んでもらえなかった名前。ルースだけに伝えている本当の名前。
「…さっきは酷い事してごめん」
「俺の方こそ。お礼を伝えるのが遅くなってごめんなさい」
両肩から手を離して、ルースの両頬に添えると、チュッと口づけた。ごめんなさいと仲直りのキス。
ルースが照れて頬が赤くなった。
男女問わずモテるルースが、太陽に積極的に迫られた時だけ赤くなる。きっとルースのこんな表情を知っているのは太陽だけだ。その事に胸がくすぐったくなる。
赤くなった頬に更に口づけた。
「タイヨウ待って、僕汚れてるから」
ルースがパチンと指を鳴らすと、白く綺麗な光が2人を包んだ。ルースと太陽の土や埃で汚れた身なりが綺麗になった。
それでもルースの顔や頬についた小さな傷は消えない。
頬にある傷に口づける。続いて手についた傷に。少しでも早く治ります様にと祈りながら。
「これ以上は…」
ルースが困った様に手を引こうとするが、握って離さない。その手に口づけたままルースに視線を向ける。
「どうしてですか?」
「…空や鳥族の子を待たせてるんだろ?それにこれ以上は僕が抑えられない」
「悪男はもう大丈夫。空にお願いしてきました。それに…」
ルースの手の平を広げて、自分の頬に寄せた。もう間違えない。
「俺にとって一番優先すべきなのは、あなたです」
「……っ」
ルースが息を飲んだ。その目に熱がともるのが見えた。でもそれを必死に抑えているのが、苦しそうな表情からわかる。
「ダメだよ、さっきも君に酷い事したのに。今一緒にいたら抑えきれなくて、もっと酷い事してしまう」
ルースの優しさが好きだ。
誰にでも親切で、悪男は憎い敵側の筈なのに、その配下を思いやって弔う情もある。
でも今はその優しさの奥にある物を知りたい。
「ルースさんならいいです。酷い事されても」
「……」
「ルースさんの全部、俺が受け止めます。優しいとこも、そうじゃないとこも、全部全部俺にください」
ーーー
次話、閲覧注意です。
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