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第三章 空を舞う赤、狂いて
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魔王は言った。やるべき事が残ってるから西へ戻れと。
西で俺がやるべき事。
それは何だ?
きっとそれをしないと、いつまで経っても北へは行けない。
あの時、魔王は他に何て言ってた?きっとそれが手掛かりー。
指先に何かが当たって、太陽は目を覚ました。目の前に藁があった。藁の中を見ると、金色の帯が解けた悪男が横たわっていた。
「悪男?ショーキ?」
身を乗り出して身体を確認する。空が食いちぎった筈の肩と、裂かれた羽根は綺麗に治っていた。
「すごい…治ってる。良かった」
安心したらまた涙が出て来た。
これでまたきっと飛べる筈。
あの雄大な渓谷を、美しい赤い羽根で飛ぶ悪男の姿が目に浮かんだ。
「セーヤ。起きたか」
人型の空がやって来た。手に何か持っている。
「ここは人間が食べれそうな物が無いからな。ルースから分けてもらった」
大きな葉に載せて差し出されたのは、いくつかの果実と木の実だった。
「全然食べてないだろ?少しは食べろ。お前の活力が俺やソイツにも力を与える」
「ありがとう。ルースさんは?」
「今は外にいる」
「そう…。俺がルースさんにひどい事したから…だからココには来ないのかな?」
太陽の言葉に答えず、空はドカッと床に座った。そのまま太陽の腕を引っ張って、自分の膝の上に座らせた。
「空?…むぐっ」
「いいから食え。食いながら聞け」
苺に似た赤い実を口に入れられた。食欲は無かったが、一昨日の朝から何も食べてないので、大人しく咀嚼する。果肉は柔らかく、甘くて、果汁が疲れた身体にとても沁みた。
大人しく食べる太陽を見て、空が次の果実を食べさせてくれた。
「まず、その鳥はもう大丈夫だ。俺が傷つけた羽根も肩も修復されている」
こく、と果実を食べながら太陽は頷く。それは太陽自身も確認した。
「だが、肉体の疲労は酷いだろうから、あと1日位は寝てるかもしれない」
わかったという意味で、太陽は頷いた。相変わらず口にはどんどん食べ物を入れられている。
「セーヤよ。オレはお前を主人として、どんな事でも受け入れるつもりだ。それが例え納得のいかない事でもな」
その言葉に空を見上げる。澄んだ美しく青い瞳が、静かに太陽を見ていた。
「だがルースは違う」
「え?…むぐっ」
今度は木の実を入れられた。仕方なくモグモグと咀嚼する。
「俺は主人が攫われれば生命をかけて助けに行く。だがルースは違う。あれはただ愛しい恋人が連れ去られたから、生命をかけて取り戻しに来たんだ」
「……」
空が木の実を食べさせ様としたが、とても食べる気になれず、首を振った。
「セーヤはその鳥が好きなのか? ルースよりも?」
「…そんなんじゃない。悪男とショーキは友達だ。見た目がヤンキーぽいのに、話してみると意外に抜けてて、面白くて、イイ奴だってわかって」
空は静かに話を聞いてくれていた。
太陽は溢れ出す涙を腕で拭う。だが拭っても拭っても止まらなかった。
「でも会った時からもう瘴気に侵されてて。どうにかして闇堕ちから助けてやりたいって思ってた。でもそれは、ルースさんへの気持ちとは別だ」
「つまり?」
「俺が好きなのは、恋人として一緒にいたいのは今もルースさんだ」
その言葉に、空は手にしていた食べ物を横に置いた。そして、ペロリと太陽の涙を舐めとる。
「ならちゃんと話して来い」
「……」
「あれではルースが不憫すぎる。きっとセーヤが心変わりしたと思ってるぞ」
空の言葉に太陽は立ち上がった。
「ルースさんとこ行ってくる!」
「おい、出口は向こう…」
「こっちが早い!」
太陽はすぐ側の窓から外に飛び出す。出た後に、あ、と一旦部屋を覗いた。
「空、悪いけど悪男の事…」
「様子は見ておくから。早く行ってルースを捕まえてこい」
「行ってきます!」
今度こそ太陽は駆け出した。
西で俺がやるべき事。
それは何だ?
きっとそれをしないと、いつまで経っても北へは行けない。
あの時、魔王は他に何て言ってた?きっとそれが手掛かりー。
指先に何かが当たって、太陽は目を覚ました。目の前に藁があった。藁の中を見ると、金色の帯が解けた悪男が横たわっていた。
「悪男?ショーキ?」
身を乗り出して身体を確認する。空が食いちぎった筈の肩と、裂かれた羽根は綺麗に治っていた。
「すごい…治ってる。良かった」
安心したらまた涙が出て来た。
これでまたきっと飛べる筈。
あの雄大な渓谷を、美しい赤い羽根で飛ぶ悪男の姿が目に浮かんだ。
「セーヤ。起きたか」
人型の空がやって来た。手に何か持っている。
「ここは人間が食べれそうな物が無いからな。ルースから分けてもらった」
大きな葉に載せて差し出されたのは、いくつかの果実と木の実だった。
「全然食べてないだろ?少しは食べろ。お前の活力が俺やソイツにも力を与える」
「ありがとう。ルースさんは?」
「今は外にいる」
「そう…。俺がルースさんにひどい事したから…だからココには来ないのかな?」
太陽の言葉に答えず、空はドカッと床に座った。そのまま太陽の腕を引っ張って、自分の膝の上に座らせた。
「空?…むぐっ」
「いいから食え。食いながら聞け」
苺に似た赤い実を口に入れられた。食欲は無かったが、一昨日の朝から何も食べてないので、大人しく咀嚼する。果肉は柔らかく、甘くて、果汁が疲れた身体にとても沁みた。
大人しく食べる太陽を見て、空が次の果実を食べさせてくれた。
「まず、その鳥はもう大丈夫だ。俺が傷つけた羽根も肩も修復されている」
こく、と果実を食べながら太陽は頷く。それは太陽自身も確認した。
「だが、肉体の疲労は酷いだろうから、あと1日位は寝てるかもしれない」
わかったという意味で、太陽は頷いた。相変わらず口にはどんどん食べ物を入れられている。
「セーヤよ。オレはお前を主人として、どんな事でも受け入れるつもりだ。それが例え納得のいかない事でもな」
その言葉に空を見上げる。澄んだ美しく青い瞳が、静かに太陽を見ていた。
「だがルースは違う」
「え?…むぐっ」
今度は木の実を入れられた。仕方なくモグモグと咀嚼する。
「俺は主人が攫われれば生命をかけて助けに行く。だがルースは違う。あれはただ愛しい恋人が連れ去られたから、生命をかけて取り戻しに来たんだ」
「……」
空が木の実を食べさせ様としたが、とても食べる気になれず、首を振った。
「セーヤはその鳥が好きなのか? ルースよりも?」
「…そんなんじゃない。悪男とショーキは友達だ。見た目がヤンキーぽいのに、話してみると意外に抜けてて、面白くて、イイ奴だってわかって」
空は静かに話を聞いてくれていた。
太陽は溢れ出す涙を腕で拭う。だが拭っても拭っても止まらなかった。
「でも会った時からもう瘴気に侵されてて。どうにかして闇堕ちから助けてやりたいって思ってた。でもそれは、ルースさんへの気持ちとは別だ」
「つまり?」
「俺が好きなのは、恋人として一緒にいたいのは今もルースさんだ」
その言葉に、空は手にしていた食べ物を横に置いた。そして、ペロリと太陽の涙を舐めとる。
「ならちゃんと話して来い」
「……」
「あれではルースが不憫すぎる。きっとセーヤが心変わりしたと思ってるぞ」
空の言葉に太陽は立ち上がった。
「ルースさんとこ行ってくる!」
「おい、出口は向こう…」
「こっちが早い!」
太陽はすぐ側の窓から外に飛び出す。出た後に、あ、と一旦部屋を覗いた。
「空、悪いけど悪男の事…」
「様子は見ておくから。早く行ってルースを捕まえてこい」
「行ってきます!」
今度こそ太陽は駆け出した。
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