73 / 181
第三章 空を舞う赤、狂いて
9
しおりを挟む
黒くてデカい蠍みたいなのが3体。
それが複数の足を動かして太陽達を追って来ていた。
「うえぇ!何だあれ!気持ち悪い」
蠍もどきが、ピンと立てた尻尾を前後に少し揺らしてから、思い切りソレを振り下ろした。
瞬間、尻尾から黒い液体が放射されて、こっちに向かって凄い勢いで飛んで来る。
「ぎゃあぁ!毒!?」
ショーキが身体を斜めに傾けて避けた。続いて、2発目、3発目が飛んでくる。それも鮮やかにかわした。
2人の邪魔をしたくなくて、太陽は唇を噛み締めた。太陽が騒いでる間にも悪男がショーキに指示出しをしていたからだ。
その間にも、黒い液体は何発も飛んできては、ショーキが高度を変えたり左右に動いてかわし続ける。
その間ぶつぶつと、悪男が何か唱えているのが聞こえた。
ふと気づくと、太陽に回された腕が赤と紫の粒を纏い美しく輝き出す。
「ー来い」
悪男の呟きが聞こえた瞬間、上空から太い光が駆け抜けた。ズドンッと鈍く大きな音と共に、太い光が蠍もどきに突き刺さった。
光で全身を包まれた蠍もどきは、ビリビリと全身を震わせ、動かなくなった。僅かに黒い煙の様な物が出ている。
何が起きたかわからない内に、続けて2本目、3本目と光の柱が続き、残りの2体にも突き刺さった。2体もその動きを止め、身体から黒い煙が立ち込める。
その間にもショーキは飛び続けて、蠍もどきはアッという間に見えなくなった。
上空の方で大きな雷鳴が轟いた。それでやっと、今のが雷だったと気づく。
「ーっ、はぁ、はぁ」
衝撃のあまり息を止めてしまっていたらしく、太陽は苦しさに深呼吸を繰り返した。
「ー大丈夫か?」
上から声が聞こえてきた。見上げると、心配そうにこちらを見る悪男と目が合った。
「悪男…お前って最高だな!」
「……っ」
「ワルオリ、サイコー!」
「ショーキも最高だ!」
「オレもサイコー!」
「……(照)」
悪男は何も言わなかったが、その頬が赤くなったので、照れてるのがわかった。
さっきの心配してくれた一言で、悪男と仲直り出来た気がした。
日も暮れ始めた頃。やっと北の光景が間近に見えて来た。
気温が少しずつ下がり始めてきて、肌寒くなって来る。
途中で悪男がどうやったのか、布を取り出して太陽に掛けてくれた。
太陽を抱く両腕も、ただギュッと抱きしめる形から、手の平も含めて身体全体で太陽を温める形に変わった。
まるで悪男の体温を分けてくれてる様だ。
「悪男ありがとな。温かいよ」
「魔王様に無事に届ける為だ」
「ワルオリ、セーヤしんぱい」
「そっか、2人ともありがとな」
「……(真っ赤)」
いつの間か普段通りの3人で北へ向かう。あともう少しで砂漠を抜ける、という所で、急に下の砂漠の広い面積が盛り上がってきた。
「な、何だ!?」
「ショーキ!急げ」
ブォォォ!
下から風と砂が吹き上がって来た。
風に煽られて、ショーキがバランスを崩しかけ、何とか持ち直す。
砂から現れたのは、顔部分がまんまるに開いて、トゲトゲの歯が円状に生えてる真っ黒な巨大ミミズみたいな化け物だった。
「うえぇ~!キモい!」
太陽は涙目で全身鳥肌がたった。
大抵の物なら我慢できるけど、この生き物は苦手度MAXだった。
「瘴気で異常な大きさになってるんだ!本当はもっと小さい!」
「そうなの?」
小さいならまだマシかも。ちょっとホッとした太陽にショーキが追い打ちをかけた。
「あれウマイ」
「おえー」
ヤバい。今までで1番吐きそうだ。
あんなの食うとか。無理。
ブォォォ!ブォォォ!
巨大ミミズが、風と砂を下から吹き上げながら追いかけて来た。
「オコッテル!」
「俺のせい~? 不味そうと思ってごめーん!」
「アレには雷があまり効かない!逃げ切るぞ」
グン、とスピードが上がった。
そのまま飛び続けて、一気に北の大地に飛び込む。
寒いとか、もう言ってられなかった。だって背後には巨大ミミズが狂った様に追って来るし、気持ち悪さにリバースしそうだったし、とにかくもう大人しく運ばれるだけだった。
ブォォォ!
巨大ミミズがそのまま、砂漠から飛び出して来た!スピードは落ちるがウネウネしながら太陽達を追って来る!
「オッテクルヨ!」
「ちっ!」
「…おえぇ」
その時、ヒヤリと冷気を感じた。
直後に一瞬にして、巨大ミミズが凍りついた。
それが複数の足を動かして太陽達を追って来ていた。
「うえぇ!何だあれ!気持ち悪い」
蠍もどきが、ピンと立てた尻尾を前後に少し揺らしてから、思い切りソレを振り下ろした。
瞬間、尻尾から黒い液体が放射されて、こっちに向かって凄い勢いで飛んで来る。
「ぎゃあぁ!毒!?」
ショーキが身体を斜めに傾けて避けた。続いて、2発目、3発目が飛んでくる。それも鮮やかにかわした。
2人の邪魔をしたくなくて、太陽は唇を噛み締めた。太陽が騒いでる間にも悪男がショーキに指示出しをしていたからだ。
その間にも、黒い液体は何発も飛んできては、ショーキが高度を変えたり左右に動いてかわし続ける。
その間ぶつぶつと、悪男が何か唱えているのが聞こえた。
ふと気づくと、太陽に回された腕が赤と紫の粒を纏い美しく輝き出す。
「ー来い」
悪男の呟きが聞こえた瞬間、上空から太い光が駆け抜けた。ズドンッと鈍く大きな音と共に、太い光が蠍もどきに突き刺さった。
光で全身を包まれた蠍もどきは、ビリビリと全身を震わせ、動かなくなった。僅かに黒い煙の様な物が出ている。
何が起きたかわからない内に、続けて2本目、3本目と光の柱が続き、残りの2体にも突き刺さった。2体もその動きを止め、身体から黒い煙が立ち込める。
その間にもショーキは飛び続けて、蠍もどきはアッという間に見えなくなった。
上空の方で大きな雷鳴が轟いた。それでやっと、今のが雷だったと気づく。
「ーっ、はぁ、はぁ」
衝撃のあまり息を止めてしまっていたらしく、太陽は苦しさに深呼吸を繰り返した。
「ー大丈夫か?」
上から声が聞こえてきた。見上げると、心配そうにこちらを見る悪男と目が合った。
「悪男…お前って最高だな!」
「……っ」
「ワルオリ、サイコー!」
「ショーキも最高だ!」
「オレもサイコー!」
「……(照)」
悪男は何も言わなかったが、その頬が赤くなったので、照れてるのがわかった。
さっきの心配してくれた一言で、悪男と仲直り出来た気がした。
日も暮れ始めた頃。やっと北の光景が間近に見えて来た。
気温が少しずつ下がり始めてきて、肌寒くなって来る。
途中で悪男がどうやったのか、布を取り出して太陽に掛けてくれた。
太陽を抱く両腕も、ただギュッと抱きしめる形から、手の平も含めて身体全体で太陽を温める形に変わった。
まるで悪男の体温を分けてくれてる様だ。
「悪男ありがとな。温かいよ」
「魔王様に無事に届ける為だ」
「ワルオリ、セーヤしんぱい」
「そっか、2人ともありがとな」
「……(真っ赤)」
いつの間か普段通りの3人で北へ向かう。あともう少しで砂漠を抜ける、という所で、急に下の砂漠の広い面積が盛り上がってきた。
「な、何だ!?」
「ショーキ!急げ」
ブォォォ!
下から風と砂が吹き上がって来た。
風に煽られて、ショーキがバランスを崩しかけ、何とか持ち直す。
砂から現れたのは、顔部分がまんまるに開いて、トゲトゲの歯が円状に生えてる真っ黒な巨大ミミズみたいな化け物だった。
「うえぇ~!キモい!」
太陽は涙目で全身鳥肌がたった。
大抵の物なら我慢できるけど、この生き物は苦手度MAXだった。
「瘴気で異常な大きさになってるんだ!本当はもっと小さい!」
「そうなの?」
小さいならまだマシかも。ちょっとホッとした太陽にショーキが追い打ちをかけた。
「あれウマイ」
「おえー」
ヤバい。今までで1番吐きそうだ。
あんなの食うとか。無理。
ブォォォ!ブォォォ!
巨大ミミズが、風と砂を下から吹き上げながら追いかけて来た。
「オコッテル!」
「俺のせい~? 不味そうと思ってごめーん!」
「アレには雷があまり効かない!逃げ切るぞ」
グン、とスピードが上がった。
そのまま飛び続けて、一気に北の大地に飛び込む。
寒いとか、もう言ってられなかった。だって背後には巨大ミミズが狂った様に追って来るし、気持ち悪さにリバースしそうだったし、とにかくもう大人しく運ばれるだけだった。
ブォォォ!
巨大ミミズがそのまま、砂漠から飛び出して来た!スピードは落ちるがウネウネしながら太陽達を追って来る!
「オッテクルヨ!」
「ちっ!」
「…おえぇ」
その時、ヒヤリと冷気を感じた。
直後に一瞬にして、巨大ミミズが凍りついた。
22
お気に入りに追加
148
あなたにおすすめの小説
治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―
物部妖狐
ファンタジー
小さな村にある小さな丘の上に住む治癒術師
そんな彼が出会った一人の女性
日々を平穏に暮らしていたい彼の生活に起こる変化の物語。
小説家になろう様、カクヨム様、ノベルピア様へも投稿しています。
表紙画像はAIで作成した主人公です。
キャラクターイラストも、執筆用のイメージを作る為にAIで作成しています。
更新頻度:月、水、金更新予定、投稿までの間に『箱庭幻想譚』と『氷翼の天使』及び、【魔王様のやり直し】を読んで頂けると嬉しいです。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。
性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!
モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。
その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。
魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。
その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?!
ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。

異世界転移して出会っためちゃくちゃ好きな男が全く手を出してこない
春野ひより
BL
前触れもなく異世界転移したトップアイドル、アオイ。
路頭に迷いかけたアオイを拾ったのは娼館のガメツイ女主人で、アオイは半ば強制的に男娼としてデビューすることに。しかし、絶対に抱かれたくないアオイは初めての客である美しい男に交渉する。
「――僕を見てほしいんです」
奇跡的に男に気に入られたアオイ。足繁く通う男。男はアオイに惜しみなく金を注ぎ、アオイは美しい男に恋をするが、男は「私は貴方のファンです」と言うばかりで頑としてアオイを抱かなくて――。
愛されるには理由が必要だと思っているし、理由が無くなれば捨てられて当然だと思っている受けが「それでも愛して欲しい」と手を伸ばせるようになるまでの話です。
金を使うことでしか愛を伝えられない不器用な人外×自分に付けられた値段でしか愛を実感できない不器用な青年

異世界で王子様な先輩に溺愛されちゃってます
野良猫のらん
BL
手違いで異世界に召喚されてしまったマコトは、元の世界に戻ることもできず異世界で就職した。
得た職は冒険者ギルドの職員だった。
金髪翠眼でチャラい先輩フェリックスに苦手意識を抱くが、元の世界でマコトを散々に扱ったブラック企業の上司とは違い、彼は優しく接してくれた。
マコトはフェリックスを先輩と呼び慕うようになり、お昼を食べるにも何をするにも一緒に行動するようになった。
夜はオススメの飲食店を紹介してもらって一緒に食べにいき、お祭りにも一緒にいき、秋になったらハイキングを……ってあれ、これデートじゃない!? しかもしかも先輩は、実は王子様で……。
以前投稿した『冒険者ギルドで働いてたら親切な先輩に恋しちゃいました』の長編バージョンです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる