41 / 181
第二章 闇に囚われし緑よ、いずれ
7
しおりを挟む
店主に続いて空と共に宿から表に出るとちょうど馬車が到着した所だった。
馬車の御者台から、勢い良く若い男が飛び降りて来た。
そのまま、村の入り口付近で村人と柵の修正をしていたルースに飛びついた。
「ルースさん!会いたかった!」
「マノス、こら危ない!」
勢い良く飛びつかれたせいでルースが尻餅をついた。
あいつ誰!?
「おいおいマノス!せっかく作った柵が壊れるだろう!」
店主がマノスを叱ってルースから引き剥がした。えー!と不満そうな声を上げている。
店主さん引き離してくれて、ありがとう!太陽はホッと安堵の息を吐いた。
ルースがやっと立ち上がった頃、馬車からもう1人男が降りてきた。
2m近くある大柄な男だった。剣を腰に下げたいかにも用心棒風ないでたちたった。
「マノス。出発までどの位だ?」
「ラド!馬も休ませたいから30分位かな」
「そうかよ。じゃあちょっと息抜きしようぜ」
ラドがマノスに手を伸ばしたが、その手をマノスが叩き払った。
「やだ。ルースさんがいるのにそんな事する訳ないじゃん」
ピタッとルースに張り付いている。
「何だよ。昨日は俺に抱かれてヨガってたくせによ」
「デリカシーの無い男はこれだから!サイテー!」
2人のやりとりを周囲が呆れながら見てる。
太陽の足元にいた子犬の空は、アクビをして後ろ足で頭をかいた。
チッ、とラドは唾を吐き出した。
つまらなさそうに村を見回したラドが太陽に視線を止めた。
「こんな田舎にもこんな綺麗な奴がいんのか」
ラドがニヤニヤ笑いながら太陽の元に歩いて来た。そのまま太陽の腕を掴んで引き寄せた。
「よぉ可愛い子ちゃんよ。ちょっと俺の相手してくれよ」
キスされる、と太陽が身構えた瞬間。相手の動きがピタリと止まった。
不思議そうにラドを見ると、その首元にナイフが当てられていた。
いつの間に動いたのか、ルースがラドの真後ろに立っていた。
「僕のツレなんだよ。ちょっかい出すのやめてくれる?」
「…悪かった」
ラドが両手を上げるとルースも素早くナイフをしまった。
そのまま太陽に手を差し出してくる。
ルースさん、と声を震わせながらその手を取ると思いっきり引き寄せられた。
ルースの腕の中は優しい花の香りがした。
「全く。本当に君は目が離せないな」
耳元でルースが笑った気配がした。久しぶりに間近で聞くその声に鼓動が跳ねた。
「ちょっと!ルースさん!そいつ誰?もしかして恋人?」
マノスがルースと太陽を引き離す様に割り込んで来た。
間近で見ると、マノスは茶色の髪と目の可愛い顔をした小柄な男だった。年の頃は太陽と同じ位に見える。
「紹介するよ。恋人じゃないけど、今一緒に旅してるセーヤだ」
キッ!とマノスに睨まれた。
マノスはまるで自分の物だと主張する様にルースに腕を絡めた。
「言っとくけどルースさんが優しいのは皆にだよ!自分だけ特別だって思わないでよね」
「…っ」
マノスの言葉に太陽は思わず言葉が詰まる。
別にそんなつもりはないが、ルースの優しさは自分を特別扱いしてくれる様な気にさせる。
言い当てられた様で何だか恥ずかしかった。
「マノス、別に僕が誰に優しくしようがいいだろ?柵の修理の続きをするから腕を離して」
「だって!ルースさんはすぐ勘違いさせるから!」
ルースはマノスの腕を外して柵の修理に戻って行った。
それをマノスが追いかける。
ラドは何も言わず馬車へ戻って行った。
「俺達も柵の修理手伝おうか。空?どうしたの?」
足元の子犬に声をかける。
普通に立っているだけに見えるのに物凄く不機嫌そうだった。
「あのラドという男。ルースが止めなけばオレが喉笛を噛み切ってやったのに!」
空は物凄く怒っていた。
待って!殺すのは行き過ぎだよ!
心で空に待ったをかけた。
ルースがあの時止めてくれなければ、今頃村は大騒ぎだったかもしれない。
改めてルースが助けてくれて良かったと安堵した。
馬車の御者台から、勢い良く若い男が飛び降りて来た。
そのまま、村の入り口付近で村人と柵の修正をしていたルースに飛びついた。
「ルースさん!会いたかった!」
「マノス、こら危ない!」
勢い良く飛びつかれたせいでルースが尻餅をついた。
あいつ誰!?
「おいおいマノス!せっかく作った柵が壊れるだろう!」
店主がマノスを叱ってルースから引き剥がした。えー!と不満そうな声を上げている。
店主さん引き離してくれて、ありがとう!太陽はホッと安堵の息を吐いた。
ルースがやっと立ち上がった頃、馬車からもう1人男が降りてきた。
2m近くある大柄な男だった。剣を腰に下げたいかにも用心棒風ないでたちたった。
「マノス。出発までどの位だ?」
「ラド!馬も休ませたいから30分位かな」
「そうかよ。じゃあちょっと息抜きしようぜ」
ラドがマノスに手を伸ばしたが、その手をマノスが叩き払った。
「やだ。ルースさんがいるのにそんな事する訳ないじゃん」
ピタッとルースに張り付いている。
「何だよ。昨日は俺に抱かれてヨガってたくせによ」
「デリカシーの無い男はこれだから!サイテー!」
2人のやりとりを周囲が呆れながら見てる。
太陽の足元にいた子犬の空は、アクビをして後ろ足で頭をかいた。
チッ、とラドは唾を吐き出した。
つまらなさそうに村を見回したラドが太陽に視線を止めた。
「こんな田舎にもこんな綺麗な奴がいんのか」
ラドがニヤニヤ笑いながら太陽の元に歩いて来た。そのまま太陽の腕を掴んで引き寄せた。
「よぉ可愛い子ちゃんよ。ちょっと俺の相手してくれよ」
キスされる、と太陽が身構えた瞬間。相手の動きがピタリと止まった。
不思議そうにラドを見ると、その首元にナイフが当てられていた。
いつの間に動いたのか、ルースがラドの真後ろに立っていた。
「僕のツレなんだよ。ちょっかい出すのやめてくれる?」
「…悪かった」
ラドが両手を上げるとルースも素早くナイフをしまった。
そのまま太陽に手を差し出してくる。
ルースさん、と声を震わせながらその手を取ると思いっきり引き寄せられた。
ルースの腕の中は優しい花の香りがした。
「全く。本当に君は目が離せないな」
耳元でルースが笑った気配がした。久しぶりに間近で聞くその声に鼓動が跳ねた。
「ちょっと!ルースさん!そいつ誰?もしかして恋人?」
マノスがルースと太陽を引き離す様に割り込んで来た。
間近で見ると、マノスは茶色の髪と目の可愛い顔をした小柄な男だった。年の頃は太陽と同じ位に見える。
「紹介するよ。恋人じゃないけど、今一緒に旅してるセーヤだ」
キッ!とマノスに睨まれた。
マノスはまるで自分の物だと主張する様にルースに腕を絡めた。
「言っとくけどルースさんが優しいのは皆にだよ!自分だけ特別だって思わないでよね」
「…っ」
マノスの言葉に太陽は思わず言葉が詰まる。
別にそんなつもりはないが、ルースの優しさは自分を特別扱いしてくれる様な気にさせる。
言い当てられた様で何だか恥ずかしかった。
「マノス、別に僕が誰に優しくしようがいいだろ?柵の修理の続きをするから腕を離して」
「だって!ルースさんはすぐ勘違いさせるから!」
ルースはマノスの腕を外して柵の修理に戻って行った。
それをマノスが追いかける。
ラドは何も言わず馬車へ戻って行った。
「俺達も柵の修理手伝おうか。空?どうしたの?」
足元の子犬に声をかける。
普通に立っているだけに見えるのに物凄く不機嫌そうだった。
「あのラドという男。ルースが止めなけばオレが喉笛を噛み切ってやったのに!」
空は物凄く怒っていた。
待って!殺すのは行き過ぎだよ!
心で空に待ったをかけた。
ルースがあの時止めてくれなければ、今頃村は大騒ぎだったかもしれない。
改めてルースが助けてくれて良かったと安堵した。
23
お気に入りに追加
147
あなたにおすすめの小説
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
拾った駄犬が最高にスパダリ狼だった件
竜也りく
BL
旧題:拾った駄犬が最高にスパダリだった件
あまりにも心地いい春の日。
ちょっと足をのばして湖まで採取に出かけた薬師のラスクは、そこで深手を負った真っ黒ワンコを見つけてしまう。
治療しようと近づいたらめちゃくちゃ威嚇されたのに、ピンチの時にはしっかり助けてくれた真っ黒ワンコは、なぜか家までついてきて…。
受けの前ではついついワンコになってしまう狼獣人と、お人好しな薬師のお話です。
★不定期:1000字程度の更新。
★他サイトにも掲載しています。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる