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第二章 闇に囚われし緑よ、いずれ
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両手で顔を覆い、太陽は泣いた。
愛しい人の抱えた苦しさを思うと、胸が張り裂けそうで涙が止まらなかった。
ペロリと頬を舐められる。
見ると空が銀狼の姿になって、太陽の涙を舐め取った。
「セーヤ君。泣かせるつもりはなかったのごめんなさいね」
「いえ…聞けて良かったです。ルースさんがそんな苦しみを抱えていたなんて」
「でも大丈夫よ。ルースの傷は癒やせなくても聖気が満たされている場所なら、闇堕ちの進行を止める事はできるの」
「それって」
「そう。旅に出ず、この場に留まればいいの。だからベイティは妻子を持たせてどうにか復讐をやめさせたいのよ」
この場に留まれば闇堕ちは免れる。
本当に?なら何でルースは危険を冒してまで旅をしてるの?あんなに苦しそうに、瘴気の酷い場所では悪夢を見るって言ってたのにー。
「セーヤ君も良ければルースと共にここに残ってくれないかしら?ルースが旅を止めるなら無理して妻を娶らせる必要もなくなるから、ゆっくりあの子を口説いたらいいわ!」
「く、口説くって」
「あら。好きなら迷わずアピールするべきよ!」
ユナが両手を握って力説する。
空とユナのお陰ですっかり太陽の涙が引いた為、空は暇そうに欠伸して床に丸くなった。
◇◇◇
「何だ、すっかり打ち解けたみたいだな」
暫くして長がルースともう1人男性を連れて部屋へ戻って来た。
気のせいかルースはぐったりと疲れた顔をしていた。
「ええ。楽しくお話ししてたわ。セーヤ君の世界の話が面白くて」
ユナが楽しそうに話す側で、太陽もぐったり力尽きていた。
あれから、ユナにルースとの出会いやどこが好きになったのか、元の世界の恋愛事情など色々聞かれて、流石に疲れた。
ただ、ユナが表裏のない性格で、別世界から来た太陽を心から受け入れてくれたのがわかって嬉しかった。
「セーヤ殿。疲れてるとこ悪いが南で一番の聖職者を紹介しよう。ダルタリだ」
「よろしくお願いします。ダルタリです」
「こちらこそよろしくお願いします。セーヤです」
長が紹介した男は、両目を閉じていた。細くヒョロリと印象で、聖職者や僧侶といったポジションがよく似合う風貌だった。
とりあえず一旦座ろう、と長の提案で皆が腰掛ける。空も人型に戻っている。
「早速だが何か感じる物はあるか?」
「不思議な色をしてますね。混じり合わない2色が宿ってます」
ダルタリが顔を太陽に向ける。目は閉じてる筈なのに全てを暴かれそうな気になる。
「2色?とすると黒と金あたりか?」
「いいえ。見せた方が早いでしょう。セーヤ殿、前に出て来て頂けますか?」
ダルタリに言われ太陽は席を立った。
愛しい人の抱えた苦しさを思うと、胸が張り裂けそうで涙が止まらなかった。
ペロリと頬を舐められる。
見ると空が銀狼の姿になって、太陽の涙を舐め取った。
「セーヤ君。泣かせるつもりはなかったのごめんなさいね」
「いえ…聞けて良かったです。ルースさんがそんな苦しみを抱えていたなんて」
「でも大丈夫よ。ルースの傷は癒やせなくても聖気が満たされている場所なら、闇堕ちの進行を止める事はできるの」
「それって」
「そう。旅に出ず、この場に留まればいいの。だからベイティは妻子を持たせてどうにか復讐をやめさせたいのよ」
この場に留まれば闇堕ちは免れる。
本当に?なら何でルースは危険を冒してまで旅をしてるの?あんなに苦しそうに、瘴気の酷い場所では悪夢を見るって言ってたのにー。
「セーヤ君も良ければルースと共にここに残ってくれないかしら?ルースが旅を止めるなら無理して妻を娶らせる必要もなくなるから、ゆっくりあの子を口説いたらいいわ!」
「く、口説くって」
「あら。好きなら迷わずアピールするべきよ!」
ユナが両手を握って力説する。
空とユナのお陰ですっかり太陽の涙が引いた為、空は暇そうに欠伸して床に丸くなった。
◇◇◇
「何だ、すっかり打ち解けたみたいだな」
暫くして長がルースともう1人男性を連れて部屋へ戻って来た。
気のせいかルースはぐったりと疲れた顔をしていた。
「ええ。楽しくお話ししてたわ。セーヤ君の世界の話が面白くて」
ユナが楽しそうに話す側で、太陽もぐったり力尽きていた。
あれから、ユナにルースとの出会いやどこが好きになったのか、元の世界の恋愛事情など色々聞かれて、流石に疲れた。
ただ、ユナが表裏のない性格で、別世界から来た太陽を心から受け入れてくれたのがわかって嬉しかった。
「セーヤ殿。疲れてるとこ悪いが南で一番の聖職者を紹介しよう。ダルタリだ」
「よろしくお願いします。ダルタリです」
「こちらこそよろしくお願いします。セーヤです」
長が紹介した男は、両目を閉じていた。細くヒョロリと印象で、聖職者や僧侶といったポジションがよく似合う風貌だった。
とりあえず一旦座ろう、と長の提案で皆が腰掛ける。空も人型に戻っている。
「早速だが何か感じる物はあるか?」
「不思議な色をしてますね。混じり合わない2色が宿ってます」
ダルタリが顔を太陽に向ける。目は閉じてる筈なのに全てを暴かれそうな気になる。
「2色?とすると黒と金あたりか?」
「いいえ。見せた方が早いでしょう。セーヤ殿、前に出て来て頂けますか?」
ダルタリに言われ太陽は席を立った。
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