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第二章 闇に囚われし緑よ、いずれ
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「明日には森を抜けて近くの村に着くよ」
焚き火に薪を焼べながら、ルースが太陽に話しかけた。
月も星もない森の夜ではこの焚き火だけが唯一の灯りだ。現代社会で電気のある生活で生きてきた太陽には、ひどく心許ない。
「そうですか。何日位、滞在するんですか?」
周囲の薄暗さが、夜の寒さに拍車をかけている気がして。太陽は尋ねながら、取り外したマントを被った。
獣人の洞穴を出発して2日。旅は驚くほど順調だった。
ルースがこの森に来た当初は所々に魔獣がいたが、森神が蘇り瘴気を祓って森を聖気で満たしてからは魔獣はいなくなったそうだ。
よって、今の所は平和に移動出来ている。弓の練習は今も続けているが、戦わずに済めばそれに越したことはない。
ちなみにその偉大な森神は、今太陽の横で丸まっている。
見事な銀の毛並みの狼。薄い空色の鋭い瞳を持った聖獣。
本来、人間に懐く事はないそうだが不思議な事にこの聖獣は一族の長と森神の役割を他に譲ってまで太陽の旅について来てくれた。
太陽が空と名づけた事で今では太陽に忠実な愛犬状態だ。
今だって太陽が寒そうにマントを被ったのを見て、太陽を温める様に身体を寄せて来た。
その気遣いに心がホッコリする。ありがとうとお礼を言って頭を撫でた。
「馬車が出る時間にもよるけど1日位かな。その後は、馬車で2日で南の街に着くよ。そこは大きな街だから僕は暫く商売をして路銀を作らないと。その間、セーヤはソラと情報集めをしたらいいよ」
「商売?ルースさんは森を見回るだけじゃなく、何か仕事をしてるんですか?」
「もちろんだよ。旅をするにも資金は必要だからね。森で採れた食糧や鉱石とかを売ったり、各地域にしかない物を流通させてるんだ」
「そうなんですね。何か俺に手伝える事ありますか?」
その言葉にルースが思案する。
「手伝いは不要だけど、今後の事を考えると、セーヤも資金を作った方がいいね」
「資金」
「そう。今は僕が一緒だから荷物を預かってるけど、いつまで一緒にいれるかわからないからね。セーヤ用の亜空間バッグを買って荷物を移しておきたいな」
いつまで一緒にいれるかわからない。
その言葉に胸が痛んだ。
眼帯の男を探す為に一緒に旅をしているのに、見つかって欲しくないと、心のどこかで思ってしまう。自分でも矛盾していると、乾いた笑いが出た。
複雑な気持ちから目を背ける様に、太陽は俺に出来る仕事って何かありますか?と聞いてみた。
「いや、それは大丈夫そうだよ。獣人のみんなが君にくれた物の中に宝石もあったからね。それをいくつか売れば良いバッグが買えるよ」
「そうですか」
張り切って色々持ってきてくれた獣人の少年を思い出す。彼は太陽を傷つけようとしたお詫びに、肉だけでなく、沢山の宝石も取ってきてくれたのだ。人間はこういうのが好きなんですよね!と得意げに笑った顔が忘れられない。
「ルースは何でわざわざ商売なんかしてるんだ。宝石の発掘は緑の得意分野だろ。わざわざ働く理由がわからん」
眠ってる様に静かだった空が会話に加わって来た。その質問にルースは笑う。
「そうだけどね。どうせ色んな場所へ旅するならそこで商売しながら色んな人に出会う方が楽しいじゃないか」
「なんかルースさんらしいですね」
人当たりの良いルースの事だ。きっと商売も繁盛してる事だろう。
「フンッ。オレには理解出来ん。難儀な物だな」
鼻を鳴らして空はそっぽを向いて、そのまま目を閉じた。
「そろそろ寝ようか。明日、村に入る前に髪と目の色を変えよう。僕らみたいな派手な色は目立つからね。空も聖獣とわからない様にしないと」
「わかりました」
おやすみなさいと挨拶をして、温かい空の毛並に包まれながら太陽は眠りについた。
焚き火に薪を焼べながら、ルースが太陽に話しかけた。
月も星もない森の夜ではこの焚き火だけが唯一の灯りだ。現代社会で電気のある生活で生きてきた太陽には、ひどく心許ない。
「そうですか。何日位、滞在するんですか?」
周囲の薄暗さが、夜の寒さに拍車をかけている気がして。太陽は尋ねながら、取り外したマントを被った。
獣人の洞穴を出発して2日。旅は驚くほど順調だった。
ルースがこの森に来た当初は所々に魔獣がいたが、森神が蘇り瘴気を祓って森を聖気で満たしてからは魔獣はいなくなったそうだ。
よって、今の所は平和に移動出来ている。弓の練習は今も続けているが、戦わずに済めばそれに越したことはない。
ちなみにその偉大な森神は、今太陽の横で丸まっている。
見事な銀の毛並みの狼。薄い空色の鋭い瞳を持った聖獣。
本来、人間に懐く事はないそうだが不思議な事にこの聖獣は一族の長と森神の役割を他に譲ってまで太陽の旅について来てくれた。
太陽が空と名づけた事で今では太陽に忠実な愛犬状態だ。
今だって太陽が寒そうにマントを被ったのを見て、太陽を温める様に身体を寄せて来た。
その気遣いに心がホッコリする。ありがとうとお礼を言って頭を撫でた。
「馬車が出る時間にもよるけど1日位かな。その後は、馬車で2日で南の街に着くよ。そこは大きな街だから僕は暫く商売をして路銀を作らないと。その間、セーヤはソラと情報集めをしたらいいよ」
「商売?ルースさんは森を見回るだけじゃなく、何か仕事をしてるんですか?」
「もちろんだよ。旅をするにも資金は必要だからね。森で採れた食糧や鉱石とかを売ったり、各地域にしかない物を流通させてるんだ」
「そうなんですね。何か俺に手伝える事ありますか?」
その言葉にルースが思案する。
「手伝いは不要だけど、今後の事を考えると、セーヤも資金を作った方がいいね」
「資金」
「そう。今は僕が一緒だから荷物を預かってるけど、いつまで一緒にいれるかわからないからね。セーヤ用の亜空間バッグを買って荷物を移しておきたいな」
いつまで一緒にいれるかわからない。
その言葉に胸が痛んだ。
眼帯の男を探す為に一緒に旅をしているのに、見つかって欲しくないと、心のどこかで思ってしまう。自分でも矛盾していると、乾いた笑いが出た。
複雑な気持ちから目を背ける様に、太陽は俺に出来る仕事って何かありますか?と聞いてみた。
「いや、それは大丈夫そうだよ。獣人のみんなが君にくれた物の中に宝石もあったからね。それをいくつか売れば良いバッグが買えるよ」
「そうですか」
張り切って色々持ってきてくれた獣人の少年を思い出す。彼は太陽を傷つけようとしたお詫びに、肉だけでなく、沢山の宝石も取ってきてくれたのだ。人間はこういうのが好きなんですよね!と得意げに笑った顔が忘れられない。
「ルースは何でわざわざ商売なんかしてるんだ。宝石の発掘は緑の得意分野だろ。わざわざ働く理由がわからん」
眠ってる様に静かだった空が会話に加わって来た。その質問にルースは笑う。
「そうだけどね。どうせ色んな場所へ旅するならそこで商売しながら色んな人に出会う方が楽しいじゃないか」
「なんかルースさんらしいですね」
人当たりの良いルースの事だ。きっと商売も繁盛してる事だろう。
「フンッ。オレには理解出来ん。難儀な物だな」
鼻を鳴らして空はそっぽを向いて、そのまま目を閉じた。
「そろそろ寝ようか。明日、村に入る前に髪と目の色を変えよう。僕らみたいな派手な色は目立つからね。空も聖獣とわからない様にしないと」
「わかりました」
おやすみなさいと挨拶をして、温かい空の毛並に包まれながら太陽は眠りについた。
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