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第一章 銀狼は青に還りて
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「聞きたい事はもういいかい?」
ルースに尋ねられ、呆然としていた太陽は慌ててお礼を言った。
「ありがとうございます。多分だいたいの事はわかったと思います」
「そう。じゃあそれを踏まえて僕も聞いておきたいんだけど。君はこの後どうしたい?」
「え?」
「今居るココは東の森の管理小屋なんだよね。元々僕は東の森の様子を見に来ただけだから。数日したらココから去る予定なんだ」
「そうなんですね…」
太陽は改めて部屋を見渡した。
確かに一部屋しかないし、テーブルとイス。ベッドしかない。
森の様子を見に来たり、旅人が一時的に休む小屋だった様だ。
「このまま君を置いて行くのも忍びないし。もし近くの村に行きたいなら連れて行く事は出来るけど」
「ルースさんはどうするんですか?」
「僕?僕は元々旅人だからね。この後は南の森に向かうよ」
旅人。じゃあ色んな所に行くのだろう。
その時、ふと脳裏に薄暗い空間で見た金色の片目と眼帯の男が思い浮かんだ。
恐らく自分をこの世界に連れて来たのはあの男だ。だからそいつに会えれば元の世界に帰れるかもしれない。
「ルースさん。もしよければ俺も一緒に連れて行ってくれませんか?」
「僕と一緒に?結構大変だよ?」
「探したい人がいるんです。多分俺がココに来るキッカケになった奴だと思うんですけど」
「そう。何か特徴はあるかい?」
「片目が金色で、もう片目が眼帯の男でした」
ルースは押し黙った。
「ルースさん?」
「金色?髪の色は覚えてるかい?」
「暗かったので見てません」
うーん、とルースが困ってる様子を見て恐る恐る太陽は尋ねる。
「もしかして、こんな特徴じゃありきたりで無理ですか?」
「いや逆だよ。金を纏うのを許されているのは光の勇者か光の聖女だけなんだ。だから本当に金色の瞳の男なら光の勇者しかありえないんだ。でも彼は…」
この数百年は世に現れていない。
太陽の身体から血の気が引く。暖炉で空気が暖かい筈なのに、体感温度が下がった気がした。
じゃあ俺が見たのは?もしかして幽霊みたいな存在?魔王がいるなら、そういうのがあってもおかしくはないかも。
不安と焦りで思考がグルグルする。そんな太陽に、ルースが温かいお茶のお代わりをくれた。
先ほどの話を聞いたらわかる。今日彼が振る舞ってくれたスープやパン。それにこのお茶は僅かな自然の恵みで採れた貴重な物だ。
ありがとうございます、と先程以上の感謝を込めてお礼を伝えた。
見ず知らずの太陽を気遣ってくれる優しさが嬉しい。ルースが淹れてくれたお茶が、太陽の体と心まで温めてくれる様だった。
「他にも何か手掛かりはないかい?」
「他にはー」
奴は俺を姫と呼んでいた。
でも俺は男だし。一般庶民だからそれは確実にあいつの勘違いだと思う。人違いが過ぎるよ!
そもそも…何故『姫』と呼ぶ人物をさらう必要があったのか。アイツは何を自分に望んでいたのかー。
太陽を見つめた金色の瞳を思い出すと、あの時触れた唇の柔らかさまで思い起こされた。
「顔が赤いけど大丈夫?」
「え?だ、大丈夫です!あ、もしかしたら薄暗かったから、金に近い色を金色だと勘違いしたかもしれません」
「近い色か。明るい茶色ならまだ一般的だからね。可能性はあるな」
指を唇に当てて、ルースは思案に暮れる。
「じゃあ僕が東の森を見回った後は一緒に南に向かおうか。行き先々で眼帯の男を探してみよう」
「はい!ありがとうございます。俺で出来る事は何でもやります。よろしくお願いします!」
太陽はルースに向かって頭を下げた。
「何でも?本当に?」
「え、あ、はい。出来る事なら」
「言質は取ったよ」
ルースは悪戯っ子の様に、ニヤッと笑った。
ルースに尋ねられ、呆然としていた太陽は慌ててお礼を言った。
「ありがとうございます。多分だいたいの事はわかったと思います」
「そう。じゃあそれを踏まえて僕も聞いておきたいんだけど。君はこの後どうしたい?」
「え?」
「今居るココは東の森の管理小屋なんだよね。元々僕は東の森の様子を見に来ただけだから。数日したらココから去る予定なんだ」
「そうなんですね…」
太陽は改めて部屋を見渡した。
確かに一部屋しかないし、テーブルとイス。ベッドしかない。
森の様子を見に来たり、旅人が一時的に休む小屋だった様だ。
「このまま君を置いて行くのも忍びないし。もし近くの村に行きたいなら連れて行く事は出来るけど」
「ルースさんはどうするんですか?」
「僕?僕は元々旅人だからね。この後は南の森に向かうよ」
旅人。じゃあ色んな所に行くのだろう。
その時、ふと脳裏に薄暗い空間で見た金色の片目と眼帯の男が思い浮かんだ。
恐らく自分をこの世界に連れて来たのはあの男だ。だからそいつに会えれば元の世界に帰れるかもしれない。
「ルースさん。もしよければ俺も一緒に連れて行ってくれませんか?」
「僕と一緒に?結構大変だよ?」
「探したい人がいるんです。多分俺がココに来るキッカケになった奴だと思うんですけど」
「そう。何か特徴はあるかい?」
「片目が金色で、もう片目が眼帯の男でした」
ルースは押し黙った。
「ルースさん?」
「金色?髪の色は覚えてるかい?」
「暗かったので見てません」
うーん、とルースが困ってる様子を見て恐る恐る太陽は尋ねる。
「もしかして、こんな特徴じゃありきたりで無理ですか?」
「いや逆だよ。金を纏うのを許されているのは光の勇者か光の聖女だけなんだ。だから本当に金色の瞳の男なら光の勇者しかありえないんだ。でも彼は…」
この数百年は世に現れていない。
太陽の身体から血の気が引く。暖炉で空気が暖かい筈なのに、体感温度が下がった気がした。
じゃあ俺が見たのは?もしかして幽霊みたいな存在?魔王がいるなら、そういうのがあってもおかしくはないかも。
不安と焦りで思考がグルグルする。そんな太陽に、ルースが温かいお茶のお代わりをくれた。
先ほどの話を聞いたらわかる。今日彼が振る舞ってくれたスープやパン。それにこのお茶は僅かな自然の恵みで採れた貴重な物だ。
ありがとうございます、と先程以上の感謝を込めてお礼を伝えた。
見ず知らずの太陽を気遣ってくれる優しさが嬉しい。ルースが淹れてくれたお茶が、太陽の体と心まで温めてくれる様だった。
「他にも何か手掛かりはないかい?」
「他にはー」
奴は俺を姫と呼んでいた。
でも俺は男だし。一般庶民だからそれは確実にあいつの勘違いだと思う。人違いが過ぎるよ!
そもそも…何故『姫』と呼ぶ人物をさらう必要があったのか。アイツは何を自分に望んでいたのかー。
太陽を見つめた金色の瞳を思い出すと、あの時触れた唇の柔らかさまで思い起こされた。
「顔が赤いけど大丈夫?」
「え?だ、大丈夫です!あ、もしかしたら薄暗かったから、金に近い色を金色だと勘違いしたかもしれません」
「近い色か。明るい茶色ならまだ一般的だからね。可能性はあるな」
指を唇に当てて、ルースは思案に暮れる。
「じゃあ僕が東の森を見回った後は一緒に南に向かおうか。行き先々で眼帯の男を探してみよう」
「はい!ありがとうございます。俺で出来る事は何でもやります。よろしくお願いします!」
太陽はルースに向かって頭を下げた。
「何でも?本当に?」
「え、あ、はい。出来る事なら」
「言質は取ったよ」
ルースは悪戯っ子の様に、ニヤッと笑った。
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