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第三部 乙女ゲーム?高等部編
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ちょうど今日から学校が2日間休みの為、関係者に調査団が事情聴取する事になったらしい。
無論、オレもだ。
そしてー。
「氷を破壊したのはお前か」
「……はい」
オレはすっかり大人になった騎士ライバンの前で、大変萎縮していた。
優しかったライバンは陰を潜め、180cmはある筋肉隆々のゴツい体格に威圧的な態度、高位の貴族感オーラが半端ない。
顔立ちもキツく所々に傷もあって、すっかり逞しい男になっていた。
なのに、相変わらず焦茶の癖っ毛と、美しく冴え渡る様な水色の瞳はそのままで。
オレは懐かしさと、正体を名乗れない辛さで泣きそうだった。
「…?お前は活躍したのに何故そんな顔をする?」
「いえ、貴族の方にお会いする機会も少ないので緊張してるんです」
「…意外に肝が小さいんだな」
ふっ、とライバンが笑った。それが昔ヴィラに向けられた時の笑顔に重なって、オレは更に胸が痛くなった。
オレの調査表を見て、ライバンが、ん?と眉を顰めた。
「お前の活躍はすごいな。火と無の2属性に、その年でBランク。王子を庇った功績で、王子自ら護衛騎士にもスカウトされたのか」
「たまたまです」
「平民にとってはすごい出世だぞ?受けないのか?」
ライバンは不思議そうだ。昔から責任と重圧で生きてきたから、それ以外の生き方が分からないんだろうな。
「オレは身分に縛られるより、自由に生きたいんです」
「変わってるな。少なくとも今よりは贅沢できるだろ?」
「興味ありません。好きな人と、楽しく笑って暮らせたらそれでいいんです。余計な物はいりません」
「……欲が無いんだな」
バサッと調査表を机の上に放る。ライバンから、もういいぞ、と退出の許可が出た。
「お前の調査はこれで終わりだ。後日、褒賞が出るだろう。欲しい物があれば今で願い出ておけ」
「褒賞が出るんですか?」
「あぁ、多くの貴族を助けたからな。殆どの事は叶えてやれるだろう」
「なら、シレネに会いたいです!」
オレの言葉に、ライバンの眉がピクリと動いた。
「シレネだと?聖なる乙女に何故?」
「オレとラナは、孤児院で友達でした。元気にしてるかな?ってずっと心配で…」
「…孤児院?調査表には無かったぞ?」
再びオレの調査表を見て、ライバンは顔を険しくする。
「お前がリアか?ジェードがずっと探してた」
「…はい、そうです」
「何故シレネに会いたい? 彼女は今、聖なる乙女になる為に修行している。卑しい平民が会える立場では無い!」
「…っ」
ライバンの強い口調に一瞬怯む。彼はこんなに感情が激しい人だったろうか? オレを睨む水色の瞳が、まるで氷の刃みたいで。威嚇してるみたいだった。
「…だからこそ、です」
「何?」
「世界は今、聖なる乙女の誕生を今か今かと待ちわびています。だから、きっとみんなが彼女にもっと頑張れって言ってると思うんです。でも、頑張るだけじゃ、人はうまくいきません。誰かが、褒めたり、慰めたり、励ましたり。そんな風に寄り添える相手が必要だと思うんです」
「はっ、お前達なら出来るとでも?」
「はい。少なくとも、オレやラナは彼女にとって兄みたいな存在だったと思います」
「……」
ライバンはジッとオレを見つめる。何かを見定める様に。でも水色の瞳からは剣呑さは消えていた。
「…………考えておこう」
ーーー
次話、閲覧注意です。
無論、オレもだ。
そしてー。
「氷を破壊したのはお前か」
「……はい」
オレはすっかり大人になった騎士ライバンの前で、大変萎縮していた。
優しかったライバンは陰を潜め、180cmはある筋肉隆々のゴツい体格に威圧的な態度、高位の貴族感オーラが半端ない。
顔立ちもキツく所々に傷もあって、すっかり逞しい男になっていた。
なのに、相変わらず焦茶の癖っ毛と、美しく冴え渡る様な水色の瞳はそのままで。
オレは懐かしさと、正体を名乗れない辛さで泣きそうだった。
「…?お前は活躍したのに何故そんな顔をする?」
「いえ、貴族の方にお会いする機会も少ないので緊張してるんです」
「…意外に肝が小さいんだな」
ふっ、とライバンが笑った。それが昔ヴィラに向けられた時の笑顔に重なって、オレは更に胸が痛くなった。
オレの調査表を見て、ライバンが、ん?と眉を顰めた。
「お前の活躍はすごいな。火と無の2属性に、その年でBランク。王子を庇った功績で、王子自ら護衛騎士にもスカウトされたのか」
「たまたまです」
「平民にとってはすごい出世だぞ?受けないのか?」
ライバンは不思議そうだ。昔から責任と重圧で生きてきたから、それ以外の生き方が分からないんだろうな。
「オレは身分に縛られるより、自由に生きたいんです」
「変わってるな。少なくとも今よりは贅沢できるだろ?」
「興味ありません。好きな人と、楽しく笑って暮らせたらそれでいいんです。余計な物はいりません」
「……欲が無いんだな」
バサッと調査表を机の上に放る。ライバンから、もういいぞ、と退出の許可が出た。
「お前の調査はこれで終わりだ。後日、褒賞が出るだろう。欲しい物があれば今で願い出ておけ」
「褒賞が出るんですか?」
「あぁ、多くの貴族を助けたからな。殆どの事は叶えてやれるだろう」
「なら、シレネに会いたいです!」
オレの言葉に、ライバンの眉がピクリと動いた。
「シレネだと?聖なる乙女に何故?」
「オレとラナは、孤児院で友達でした。元気にしてるかな?ってずっと心配で…」
「…孤児院?調査表には無かったぞ?」
再びオレの調査表を見て、ライバンは顔を険しくする。
「お前がリアか?ジェードがずっと探してた」
「…はい、そうです」
「何故シレネに会いたい? 彼女は今、聖なる乙女になる為に修行している。卑しい平民が会える立場では無い!」
「…っ」
ライバンの強い口調に一瞬怯む。彼はこんなに感情が激しい人だったろうか? オレを睨む水色の瞳が、まるで氷の刃みたいで。威嚇してるみたいだった。
「…だからこそ、です」
「何?」
「世界は今、聖なる乙女の誕生を今か今かと待ちわびています。だから、きっとみんなが彼女にもっと頑張れって言ってると思うんです。でも、頑張るだけじゃ、人はうまくいきません。誰かが、褒めたり、慰めたり、励ましたり。そんな風に寄り添える相手が必要だと思うんです」
「はっ、お前達なら出来るとでも?」
「はい。少なくとも、オレやラナは彼女にとって兄みたいな存在だったと思います」
「……」
ライバンはジッとオレを見つめる。何かを見定める様に。でも水色の瞳からは剣呑さは消えていた。
「…………考えておこう」
ーーー
次話、閲覧注意です。
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