婚約破棄される悪役令嬢ですが実はワタクシ…男なんだわ

秋空花林

文字の大きさ
上 下
36 / 75
第三部 乙女ゲーム?高等部編

しおりを挟む
 貴族学校は、ちょうど今日と明日は休校。なので依頼は明後日からだ。

 日程的に余裕があるオレとラナは、久しぶりにこの街の依頼を受ける事にした。

「森の難易度が上がってるんだな」
「そうなんですよ!噂では、また悪しきエネルギーが発生したんじゃ無いかって話もあるんですけど」

 依頼を受けつつ、ギルドの受付嬢に最近の様子を聞いてみると。この半年で、森に住む獣の凶暴化が進んだらしい。

 数年前この森で魔獣が見つかった時は、騎士団が調査した結果、悪しきエネルギーの元が見つかった。オレがネフリティスを庇って大怪我した時だ。

 聖属性の使い手達が数人がかりで浄化して森は沈静化したが、今再び、悪しきエネルギーの発生が疑われているらしい。

「なら騎士団に調査依頼したら?」
「無理無理!今、国中で獣が凶暴化がして、魔獣も発生して、騎士団も聖職者も引っ張りだこなんです!」
「…思ったより深刻なんだな」

 どうする?と、ラナと顔を見合わせる。

 凶暴化した獣程度なら問題ないけど…魔獣なら念の為、装備や道具を補充したいとこだ。

「Bランクのお2人なら大丈夫だと思いますよ。なかなか依頼も片付かなくて困ってたんです!お願いしますよ~」

 馴染みのギルド嬢に頼まれて、オレらは森の奥深くに探索する依頼を受けた。

 だが。

 備えあれば憂い無し。昔の人はちゃんとそうやって、準備や計画の大切さを言い伝えてくれたのに。

 オレ達は自分達の甘さを実感する事になる…。



◇◇◇



「うわぁー!どこが凶暴な獣だよ!しっかり魔物化してんじゃん!」
「リア!一旦退くぞ!」
「分かった!」

 収集依頼が出ている花を探して、森の奥深い場所に来ていたオレ達は。しっかり強い魔物と遭遇していた。

 前に護衛騎士団達が戦った魔物ウルフよりは弱いけど、困った特徴を持つ魔物に。

「さけろよ!」
「あぁ!」

 ヤツが吐き出した粘着性のある体液を避ける為、オレは土の防御壁を作りながら、ジリジリ後退する。ラナは先に後退して退路を作ってくれている。

 オレらが遭遇したのはデッカい花の魔物。体液を飛ばして獲物の意識を奪い、触手で獲物を捉える。弱点は火。コイツが相手の場合は、火属性の中級程度の使い手の同伴を推奨されてる。

 そう。オレの場合、悲しい事に、倒し切るにはちょい火力が足りない…泣。

 先を進むラナから声が聞こえた。複数の獣に遭遇したらしい。オレは氷魔法を飛ばして、獣達の足元を凍らせる。

 そして、再び魔物に意識を向けると。触手が土壁を突き破っていた。慌てて火の玉で撃ち落とす。全部駆除出来たと思った瞬間。オレは宙を舞っていた。

「うわぁぁぁー!?」

 初めの土壁を突き破った細い触手達は囮で、足元から忍び寄った太い触手がオレの足に巻きついていた。それがオレを宙吊りにしていた。

「リア!」

 ラナが獣を倒してコッチに向かって来るのが見えた。魔物がラナに向けて体液を放つ。

 オレは相棒を守る為、土の防御壁を彼の前に作り出した。

「逃げろ!火魔法の得意な奴を連れて来い!あと、騎士団に…うわぁっ」

 ビシャッと、派手な音と共に。オレの身体に粘着液のある液体が当たった。やばい。とりあえず、ラナを逃がさないと…。

 少しずつ熱くなる身体に焦りながら、ポケットから6個のガラス玉を取り出して、オレはラナに向かって放り投げた。

 これがあれば、ラナも魔法が使える。

 ビシャッ 2発目の体液がかかった。最悪な事に今度は顔に当たった。

 口から入り込んだ液体が舌に触れた瞬間。身体がカッと熱くなる。

 最悪だ。コイツの体液はいわゆる媚薬。特に体内に摂取すると、即効性も持続性も強いと言われてる…のに…。

 意識が朦朧としてきた。

 正気を手放す寸前に、自分を呼ぶ声が聞こえた気がしたー。



ーーー

 お待たせしました(?)
 次話、R18入ります。プロローグ後半部分に当たります。

 相手は当然、あの人です。
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

はるはう
BL
突然の過労死。そして転生。 休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。 転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。 そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・ 知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

処理中です...