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第三部 乙女ゲーム?高等部編
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風呂から出るとジェードが戻っていた。嬉しそうな表情でオレに近づいて来る。
「リア。一緒に食事に行こうよ」
「行きません。警備室に戻ります」
「リア?さっきの事、怒ってる?」
オレの腕に触れてきたジェードの手を、オレは払った。
「もう、こういうのやめて下さい。所詮、平民と貴族では友人になれない」
「…何でいきなり、そんな事」
「もうオレに構わないで下さい。迷惑です」
冷たくそう言って、オレは部屋を後にした。最後までジェードの顔は見れなかった。
「リア、もう大丈夫か?」
警備室にはラナがいて既に仕事に取り掛かっていた。
「心配かけたな。もう大丈夫。それよりー」
2人で警備室から裏門を監視しながら、オレは昨日聞いた話をした。
公爵家が原因で結ばれた婚約を、公爵家が勝手に反故にしたせいで、相手の侯爵家から怒りをかった事。それで魔物討伐を優先したい王家側と、聖なる乙女を覚醒する事を優先にしたい貴族側で意見が対立してる、と話した。
ジェードの養子の事は勿論伏せている。
「何だよ、そりゃ。上の揉め事で、オレら平民が巻き添えくらってるなんて、ふざけた話しだな!」
「…そうだな」
「こんなの報告しても意味ないな。下手したら周辺国から隙を突かれるぞ。どうする?」
今は悪しきエネルギーで魔物が増幅してるから建前上は各国が手を取り合ってるが、いつどの国と対立するかなんて分からない。
「シレネに会おう」
「え?」
「上の対立はオレらでは何も出来ない。だからシレネに会って、覚醒出来ない理由を調べよう」
「だけど、会えるのか?」
ラナが半信半疑そうに顔をしかめる。まるで会えるなら、とっくに会ってる。そう言いたげだ。
「じゃ~あ、ボクが会わせてあげるよ」
急に声がした。周囲を見回すと、いつの間にそこにいたのか。校舎側からの道にスペッサが立っていた。
相変わらず、顔はニコニコしてるのに、目は笑ってなくて不気味だ。
「いつの間に…」
「ふふ。いつだっていいでしょ?それより、知ってる?今シレネに会えるのは、ほんの一握りなんだよ~?」
スペッサが言うには。今彼女は正教会に篭りきりで、一定の貴族や身分の者しか会えない様に制限されてるそうだ。だから学校にも来ることが出来ない。
「そんな…」
おかしい。乙女ゲームなら、いや、そうじゃなくても、聖なる乙女は真実の愛を得て能力を授かると言われてる筈だ。
なら、閉じ込められるのは逆効果なのに。
「聖なる乙女は、真実の愛で能力を開花する筈。ならそれは逆効果じゃないですか?」
「……君、よく知ってるね」
スペッサから笑顔が消えた。
「彼女さ~。高等部上がってから、何てほざいたか知ってる~?もう貴族なんて、辞めたいって、言ったんだよ~?ヴィラまで犠牲にしたのにさ~、ふふ。ざけんなよって感じだろ?」
目の瞳孔が開いて、興奮してるみたいだ。再び、口だけ口角を開けてるのに、目は見開いている。
「孤児院に帰りたいって。ラナやリアに会いたいって言ってたよ~。だからさ、正教会にと・じ・こ・め・ちゃったんだ~。トルマリン家がね」
「な…」
ラナが蒼白になって拳を握り締めた。それは、オレもだ。だって、ずっとこの3年彼女が幸せである事を信じていたのにー。
「ボクはトルマリン派だから、連れて行けるよ~?その代わりにお願い聞いてもらうけど」
「お願い?」
スペッサがニヤリと笑いながら言った。
「目障りだからさ、この国から出てってよ。2人とも」
「リア。一緒に食事に行こうよ」
「行きません。警備室に戻ります」
「リア?さっきの事、怒ってる?」
オレの腕に触れてきたジェードの手を、オレは払った。
「もう、こういうのやめて下さい。所詮、平民と貴族では友人になれない」
「…何でいきなり、そんな事」
「もうオレに構わないで下さい。迷惑です」
冷たくそう言って、オレは部屋を後にした。最後までジェードの顔は見れなかった。
「リア、もう大丈夫か?」
警備室にはラナがいて既に仕事に取り掛かっていた。
「心配かけたな。もう大丈夫。それよりー」
2人で警備室から裏門を監視しながら、オレは昨日聞いた話をした。
公爵家が原因で結ばれた婚約を、公爵家が勝手に反故にしたせいで、相手の侯爵家から怒りをかった事。それで魔物討伐を優先したい王家側と、聖なる乙女を覚醒する事を優先にしたい貴族側で意見が対立してる、と話した。
ジェードの養子の事は勿論伏せている。
「何だよ、そりゃ。上の揉め事で、オレら平民が巻き添えくらってるなんて、ふざけた話しだな!」
「…そうだな」
「こんなの報告しても意味ないな。下手したら周辺国から隙を突かれるぞ。どうする?」
今は悪しきエネルギーで魔物が増幅してるから建前上は各国が手を取り合ってるが、いつどの国と対立するかなんて分からない。
「シレネに会おう」
「え?」
「上の対立はオレらでは何も出来ない。だからシレネに会って、覚醒出来ない理由を調べよう」
「だけど、会えるのか?」
ラナが半信半疑そうに顔をしかめる。まるで会えるなら、とっくに会ってる。そう言いたげだ。
「じゃ~あ、ボクが会わせてあげるよ」
急に声がした。周囲を見回すと、いつの間にそこにいたのか。校舎側からの道にスペッサが立っていた。
相変わらず、顔はニコニコしてるのに、目は笑ってなくて不気味だ。
「いつの間に…」
「ふふ。いつだっていいでしょ?それより、知ってる?今シレネに会えるのは、ほんの一握りなんだよ~?」
スペッサが言うには。今彼女は正教会に篭りきりで、一定の貴族や身分の者しか会えない様に制限されてるそうだ。だから学校にも来ることが出来ない。
「そんな…」
おかしい。乙女ゲームなら、いや、そうじゃなくても、聖なる乙女は真実の愛を得て能力を授かると言われてる筈だ。
なら、閉じ込められるのは逆効果なのに。
「聖なる乙女は、真実の愛で能力を開花する筈。ならそれは逆効果じゃないですか?」
「……君、よく知ってるね」
スペッサから笑顔が消えた。
「彼女さ~。高等部上がってから、何てほざいたか知ってる~?もう貴族なんて、辞めたいって、言ったんだよ~?ヴィラまで犠牲にしたのにさ~、ふふ。ざけんなよって感じだろ?」
目の瞳孔が開いて、興奮してるみたいだ。再び、口だけ口角を開けてるのに、目は見開いている。
「孤児院に帰りたいって。ラナやリアに会いたいって言ってたよ~。だからさ、正教会にと・じ・こ・め・ちゃったんだ~。トルマリン家がね」
「な…」
ラナが蒼白になって拳を握り締めた。それは、オレもだ。だって、ずっとこの3年彼女が幸せである事を信じていたのにー。
「ボクはトルマリン派だから、連れて行けるよ~?その代わりにお願い聞いてもらうけど」
「お願い?」
スペッサがニヤリと笑いながら言った。
「目障りだからさ、この国から出てってよ。2人とも」
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