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第三部 乙女ゲーム?高等部編

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ーーー


「さあ、いつでもいいぞ!」

 男は剣を構えて、オレが同じ様に抜くのを待ってる。

 オレはその場で立ったまま男に尋ねた。

「ねえ、騎士と冒険者の剣の一番の違いって何だと思いますか?」
「なんだ?剣は剣だろう?」

 違うんだな、これが。

「騎士は国や王を守り戦う為に、剣を振いますよね?」
「当たり前だ」

 男が、不思議そうな顔をする。

「冒険者は違うのか?」
「はっ。全然違いますよ」

 オレは干物の入った袋をそっと地面に置くと、制服の中に隠していた短剣を両手に構えた。

「っ!お前、双剣使いか!」
「そろそろ、行きますよ」

 ビュン、と風を切る様な音がして。

 キンッ、と金属がぶつかり合う音が辺りに響いた。

 オレの最初の一撃を男は剣を構えて、かろうじて止めた。

「は、速いっ!」
「見えなかったぞ!」

 周囲の奴らが騒いでる。

 それを無視してオレは次々と攻撃を繰り出した。

 隙なんか与えるつもりは毛頭ない。それだけ、オレの干物をぞんざいに扱かわれた事に頭にきていた。

 男が構える前から、オレは既に無属性魔法を自分にかけていた。筋力強化、スピードアップ。そして、風魔法で加速して男に襲いかかったんだ。

 普通なら見えるスピードじゃない。

 男は先程の余裕はどこへいったのか、防戦一択だ。このスピードは見えてるけど、オレが早すぎて反撃が難しいみたいだ。

 キンッ キンッ と金属音が響き渡る。

「ほら、どうしたんですか?防御だけじゃつまんないですよ」
「くっ、何て速さだ!」

 ブンッと男の払う剣を避ける為、オレは風魔法で自分を浮かせて、大きくバク転で後ろに跳んだ。

 そして、地に足がついた瞬間。再び勢いよく男に襲いかかった。オレの攻撃を男が剣で受け止める。

「どうしたんですか?魔法でも使えば?」
「お、俺は、魔法を使えないっ」
「何だ、なのに、冒険者に挑んだんですか?まだまだ青いですね」

 もう2度と冒険者を甘くみない様に、徹底的にやってやる。

 足元に向けて、土魔法を放つ。男の足元の土が盛り上がって、男が後ろに転んだ。

「トドメだ!」

 あえてデカい声をあげて、オレは大きくジャンプした。風魔法で己の体を宙に浮かす。

 そのまま隠し持っていた、短剣よりは長い剣を大きく振り上げる。

 男は、オレの読み通り、自分の剣を横に構えて攻撃に備えた。それで、男の負けは確定した。

 オレは自分の剣に強化魔法を。相手の剣に氷魔法を付与して。

 宙から落ちる加速と、体重と、強化魔法を全て叩きつけて。

 相手の剣を粉々に砕いた。

「なっ」

 男が驚愕している。

 オレはそのまま、男の上に、わざと落ちた。ぐふっ、と男が苦しそうな声を出すが、構うもんか。

 即座に体勢を馬のりに変えて、小剣を男の首に押し付けた。

「チェックメイト」
「な、何だ今のは」
「無属性と、氷魔法ですよ。この位、見た事あるでしょう?」
「普通に攻撃してるのは見るが、剣をへし折るなんて初めて見た」

 そうですか。面倒さくなって、オレは男を引っ張り起こす。適度に汚れを払ってやった。

「オレが見てきた剣と全然違うんだな」
「そりゃそうでしょ。冒険者の剣は殺しの剣です。日々、獣や魔獣を殺して生きる為のね」
「殺し…」

 男が息を飲む。彼らはまだ学生だ。10歳から生き物を相手にしてるオレとは、相手を殺す覚悟が違うのは当たり前だ。

 オレが彼の立場なら、宙から襲いかかる敵なら迷いなく刃を向ける。それが出来ない時点で勝敗は決まってた。

「じゃあ、オレは行きます。仕事に戻らないと」

 落ちていた紙袋を持って、歩き出そうとしたオレに、男が話しかけてきた。

「待ってくれ。お前の名前を聞いていいか?」
「リア」
「そうか。オレはロード・コーラルだ」
「ロード…コーラル?」
「あぁ、ロードでいい」

 聞き覚えのある名前。デカい身長。真っ黒な短髪。鋭い真っ赤な目。そして令嬢に対する冷たい態度。

 え?もしかして。トンガリ君?
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