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第三部 乙女ゲーム?高等部編

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 食事を終えて、食堂から出ようとすると、おばちゃんに呼び止められた。

 何でも干物にした魚が入ってきたらしい。臭いが強いからか、貴族には人気がないらしく、よければ貰っていくかい?と言われた。

「欲しいです!」
「すっかり元気になって。また明日もおいでよ」
「はい!」

 オレは紙に包んだ干物を手にルンルン気分で食堂を後にした。



 真っ直ぐ行くと魔法練習場だ。何となく、そこを通りたくなくて、迂回する事にした。

 魔法練習場の反対側は、剣の練習場だ。といっても普通の広いグラウンドだけどね。

 何人かの学生達が剣の稽古に励んでるのが見える。懐かしくて、思わず足を止めて見入ってしまう。

 結局、オレは成長した今でも、普通の剣の扱いが下手だ。パワーよりスピードを活かした方が得意だ。だから、一般的な剣を上手に扱う学生らはカッコよく見えた。

 そんな中、不思議な一団がいた。令嬢達だ。
 みんな頭にデッカいリボンをつけて、ソレがふよふよ揺れている。

 え?剣の稽古で邪魔じゃない?

 案の定、風が吹いたら、ちょっとあおられている。え?ギャグでつけてるの?

「お前ら遊びでやってるのか!気が散るからそのリボンを外せ!」

 男の怒鳴り声が場内に響いた。背の高い黒髪の男が、令嬢達にしきりにリボンを外せと怒っている。

「遊びではありません!」
「ワタクシ達だって本気ですわ!」
「ならせめて、先に剣の腕を磨いてからつけろ!それでは自分の実力も測れないだろうが!」

 男の最もな意見に、令嬢達は泣きそうだ。可哀想だけど、男の言ってる事は間違ってない。何であんな奇抜なリボンを…。

 ん?奇抜?もしかして。いやいや、まさか。

 何か嫌な予感がして、オレがその場から離れようと踵を返した時。呼び止める声がした。

「おい、そこのお前、ここで何してる」

 オレじゃないよね?そーっと逃げよう。

「今こっそり歩いてる青い制服に黒髪のお前だ。止まらないと斬るぞ」

 ピタリと立ち止まって、恐る恐る振り返ると。令嬢達を怒鳴りつけていた奴だった。こっちに向かって来る。

 身長が高く190cmくらいある。短髪の黒髪に、鋭く赤い目の強面の奴だった。

「お前学生じゃないな?誰だ?」
「学校側に雇われてる冒険者です。裏門警備を担当してます」
「冒険者?裏門?」

 男は眉を顰め、何か考えている。これ幸いと、オレは失礼します、と一礼して、再び踵を返して立ち去ろう…としたけど、出来なかった。

 男がオレの襟首を引っ張ったからだ。

「お前ランクは?」
「Bです」

 オレの回答に、周囲のみんなが、おぉと驚きの声をあげる。

 冒険者はFでスタートして、Cで一人前だ。
 Bはベテラン。

 正直、オレやラナの若さでBランクはすごいスピード出世だ。

 ちなみにBからAへの壁は厚く。Aは一流、Sは稀有と言われていて、ほんの一握りだ。

「ちょうどいい。お前、俺の相手をしろ」
「ええ!?何で!?」

 これ以上、貴族に関わりたくないのにっ。

「コイツらは俺の相手にならん。俺は、もっともっと強い相手とやりたい」
「勘弁してください。貴族の坊ちゃんに怪我なんかさせたら、オレらが責められます!」
「馬鹿にするな!俺はそんな弱くないぞ!」

 男の手が、オレの手にあった紙袋をバシッと払った。おばちゃんから貰った紙袋が、地面に落ちて中の干物が転がった。

「……」
「何だこの臭いは!」

 オレは答える事なく、男の手を払うと、干物についた汚れを丁寧に落として再び紙袋に入れた。

「おい。ゴミならちゃんと所定の場所へ片付けろ!」
「ゴミじゃないです。魚の干物です、うまいんですよ」
「…食うのか、それを?」

 男がギョッとした表情を浮かべる。

 貴族は氷魔法で鮮度を保ったまま、海鮮類を食うから。きっと見た事ないんだろうな。

 でも。

 こんな風に食べ物を粗末に扱うのは、許せなかった。

「平民は貴族みたいに贅沢出来ないから、こういう日もちして、栄養が取れる物が喜ばれるんですよ」
「そ、そうか」
「オレに相手して欲しいですか?」

 オレの言葉に、男はパッと顔を明るくした。

「是非とも頼む!」
「じゃあ、オレが貴方を傷つけても刑罰に処さないと約束してください」
「分かった。周りのみんなも証人になってくれるだろう」

 男が周囲を見回すと、周りの学生達も頷いてくれた。

「ワタクシ達が、証人になりますわ!アイツをコテンパンにしちゃってくださいませ!」

 リボンの令嬢達が、何故かオレに声援をくれた。興奮してるせいか、リボンがふよふよ揺れてる。

「これでいいか?」
「はい。あと、どこまでOKですか?オレは剣と魔法も使います」
「手加減はいらん。全力で来い」

 男はオレから十分に距離を取ると、腰に携えていた剣を抜いて構えた。
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