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第三部 乙女ゲーム?高等部編
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3年ぶりの故郷の王都は『活気が無い』その一言に尽きた。
この国の王都は城を奥に配置し、貴族街、平民街、貧民街と広がっている。
どの国でもその国の様子を知るには、平民街を探るのが一番だ。一番人口比率が多いからな。
その肝心の平民街は、疲労感に包まれている。そんな印象だった。
ラナと相談して情報収集も兼ねて、懐かしの孤児院へ向かった。
「ラナ、リアもすっかり大きくなって」
迎えてくれたのは院長シスターだった。オレとラナをハグで快く迎えてくれた。相変わらずの包容力オーラがハンパない。
オレ達はお土産代わりに道中で得た肉や野菜を提供した。それからオレ達が居なくなってからの3年間の王都の状況を教えてもらった。
どういう訳か貴族間で対立する派閥が表面化して、王族も巻き込んで足の引っ張り合いをしているらしい。でも原因までは分からず、それが王都中をピリピリさせてるんだとか。
王都近辺の魔物討伐もあまり進んでいないらしく、国全体の魔物対策もゴテゴテに回ってるらしい。
王族や騎士団は何をやってるんだ。仕事をしない国に対して、イライラが募る。多分、この街のみんなもそんな風に感じてるんだろう。
「遣わされし聖なる乙女は?」
ラナが1番気にしていた事を院長シスターに尋ねた。乙女はピンクの髪にピンクの目の子爵令嬢。これは既に周知されている。
「噂によると、普通の聖属性魔法は問題ないけど、肝心の悪しきエネルギーへの浄化と回復系の上級魔法に苦戦してるらしいわ。今では正教会に篭り修行されてるらしいけど」
「浄化魔法…修行」
悪しきエネルギーの浄化には、莫大な聖なる力が必要とされている。本来なら大勢の聖職者の力が必要だ。それをたった1人でこなしてみせるのが、遣わされし聖なる乙女の能力だと言われてる。
だけど、このゲームに修行要素なんてあったかな?
妹はただ、選択でルートの選ぶだけの簡単なゲームだって言ってた。確か、好きな人と心を通じ合わせるだけで能力が開花したと思うんだけど…。
「これだけだと、情報が少ないな」
「確かにな」
ラナと頭を悩ませる。この程度の情報で隣国の指名依頼を果たせるとは思えない。
「ならギルドに行ってみたら?最近は貴族側からの依頼を増えてるらしいわ」
「ギルドか、行ってみるか」
院長シスターのアドバイスに、オレ達は早速ギルドへ向かった。
ギルドは相変わらずの混み具合だった。そんな中、依頼を見ているといきなり肩を掴まれた。この街のギルド長だった。
「リア坊か!?久しぶりだな!」
「ギルド長?急にどうして…」
「とりあえず大事な話がある!こっちこい!」
ギルド内の奥の部屋に、ラナ共々連れ込まれた。さっそくだが、とギルド長が用件を述べてきた。
「お前らがいなくなってから、リア坊を探してるという依頼が、貴族から2件も上がってんだ。お前、何やらかしたんだ?」
そう言ってギルド長から見せられた依頼書は、3年位前に出されていた物だった。黒目黒髪のリアという少年を探してると書かれていた。依頼主はー。
「ネフリティスとジェード!?何で!?」
「馬鹿!相手は王族と公爵家だぞ!様をつけろ!」
オレの素性を知らないギルド長に叱られた。その様子を見てラナが助け舟を出してくれた。
「落ち着けよギルド長、大丈夫だ。公爵家は知らねえけど、王族の方は、以前にリアが身体を張って王子の危機を救ったんだ。だから悪いようにはならねえよ」
「…本当か?」
ギルド長は訝しんでるが、オレが本当です、と頷くと、とりあえずヤバい案件では無いとわかってくれたみたいだ。
「なら、2人に伝えても平気か?」
「出来れば貴族には関わりたく無いな」
「こっちも依頼が出てるから無視する訳にはいかないんだ…なら、これはどうだ?」
もう一枚の依頼書を見せられる。
内容は貴族学校からで、腕のたつ冒険者を数名、学校の防衛で募集しているという物だった。
「貴族学校?騎士団がいるんじゃないの?」
「リア坊は詳しいな。そうなんだが、最近は魔物が活発化してるからな。騎士団は討伐に数を裂かれてるんだ。だが貴族学校の守りを疎かにもできねーだろ?だから体裁を守る為にもこんな募集を出しているんだ」
ギルド長の提案は、オレにこの依頼を受けろという事だった。
オレを王族、公爵、どちらかに連れて行けば残りに角が立つ。
なら貴族学校の護衛についたと報告だけすれば、2人は学生だから会おうと思えば会えるし、一気に3つの依頼を消化できるんだとか。
「それに隣国からの依頼あんだろ?情報収集にはうってつけだろ?」
ギルド長がニヤリと笑った。こういうやり手だからこそのギルド長なんだろうな。
「ラナ、お前も行くか?」
「もちろん」
確かに貴族学校なら、きっと情報収集に役立つだろう。オレとラナは貴族学校の護衛を受けた。
この国の王都は城を奥に配置し、貴族街、平民街、貧民街と広がっている。
どの国でもその国の様子を知るには、平民街を探るのが一番だ。一番人口比率が多いからな。
その肝心の平民街は、疲労感に包まれている。そんな印象だった。
ラナと相談して情報収集も兼ねて、懐かしの孤児院へ向かった。
「ラナ、リアもすっかり大きくなって」
迎えてくれたのは院長シスターだった。オレとラナをハグで快く迎えてくれた。相変わらずの包容力オーラがハンパない。
オレ達はお土産代わりに道中で得た肉や野菜を提供した。それからオレ達が居なくなってからの3年間の王都の状況を教えてもらった。
どういう訳か貴族間で対立する派閥が表面化して、王族も巻き込んで足の引っ張り合いをしているらしい。でも原因までは分からず、それが王都中をピリピリさせてるんだとか。
王都近辺の魔物討伐もあまり進んでいないらしく、国全体の魔物対策もゴテゴテに回ってるらしい。
王族や騎士団は何をやってるんだ。仕事をしない国に対して、イライラが募る。多分、この街のみんなもそんな風に感じてるんだろう。
「遣わされし聖なる乙女は?」
ラナが1番気にしていた事を院長シスターに尋ねた。乙女はピンクの髪にピンクの目の子爵令嬢。これは既に周知されている。
「噂によると、普通の聖属性魔法は問題ないけど、肝心の悪しきエネルギーへの浄化と回復系の上級魔法に苦戦してるらしいわ。今では正教会に篭り修行されてるらしいけど」
「浄化魔法…修行」
悪しきエネルギーの浄化には、莫大な聖なる力が必要とされている。本来なら大勢の聖職者の力が必要だ。それをたった1人でこなしてみせるのが、遣わされし聖なる乙女の能力だと言われてる。
だけど、このゲームに修行要素なんてあったかな?
妹はただ、選択でルートの選ぶだけの簡単なゲームだって言ってた。確か、好きな人と心を通じ合わせるだけで能力が開花したと思うんだけど…。
「これだけだと、情報が少ないな」
「確かにな」
ラナと頭を悩ませる。この程度の情報で隣国の指名依頼を果たせるとは思えない。
「ならギルドに行ってみたら?最近は貴族側からの依頼を増えてるらしいわ」
「ギルドか、行ってみるか」
院長シスターのアドバイスに、オレ達は早速ギルドへ向かった。
ギルドは相変わらずの混み具合だった。そんな中、依頼を見ているといきなり肩を掴まれた。この街のギルド長だった。
「リア坊か!?久しぶりだな!」
「ギルド長?急にどうして…」
「とりあえず大事な話がある!こっちこい!」
ギルド内の奥の部屋に、ラナ共々連れ込まれた。さっそくだが、とギルド長が用件を述べてきた。
「お前らがいなくなってから、リア坊を探してるという依頼が、貴族から2件も上がってんだ。お前、何やらかしたんだ?」
そう言ってギルド長から見せられた依頼書は、3年位前に出されていた物だった。黒目黒髪のリアという少年を探してると書かれていた。依頼主はー。
「ネフリティスとジェード!?何で!?」
「馬鹿!相手は王族と公爵家だぞ!様をつけろ!」
オレの素性を知らないギルド長に叱られた。その様子を見てラナが助け舟を出してくれた。
「落ち着けよギルド長、大丈夫だ。公爵家は知らねえけど、王族の方は、以前にリアが身体を張って王子の危機を救ったんだ。だから悪いようにはならねえよ」
「…本当か?」
ギルド長は訝しんでるが、オレが本当です、と頷くと、とりあえずヤバい案件では無いとわかってくれたみたいだ。
「なら、2人に伝えても平気か?」
「出来れば貴族には関わりたく無いな」
「こっちも依頼が出てるから無視する訳にはいかないんだ…なら、これはどうだ?」
もう一枚の依頼書を見せられる。
内容は貴族学校からで、腕のたつ冒険者を数名、学校の防衛で募集しているという物だった。
「貴族学校?騎士団がいるんじゃないの?」
「リア坊は詳しいな。そうなんだが、最近は魔物が活発化してるからな。騎士団は討伐に数を裂かれてるんだ。だが貴族学校の守りを疎かにもできねーだろ?だから体裁を守る為にもこんな募集を出しているんだ」
ギルド長の提案は、オレにこの依頼を受けろという事だった。
オレを王族、公爵、どちらかに連れて行けば残りに角が立つ。
なら貴族学校の護衛についたと報告だけすれば、2人は学生だから会おうと思えば会えるし、一気に3つの依頼を消化できるんだとか。
「それに隣国からの依頼あんだろ?情報収集にはうってつけだろ?」
ギルド長がニヤリと笑った。こういうやり手だからこそのギルド長なんだろうな。
「ラナ、お前も行くか?」
「もちろん」
確かに貴族学校なら、きっと情報収集に役立つだろう。オレとラナは貴族学校の護衛を受けた。
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