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第三部 乙女ゲーム?高等部編
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第三部始まりました。
今回から少しずつ恋愛要素と閲覧注意なシーンが入ります。
ーーー
ギルドに併設された酒屋は昼間から賑わっていた。
話題に上るのは、たいてい女の話、金、各々の冒険談。そして、キナ臭い話だ。
「隣国の『遣わされし聖なる乙女』は何してんだ?」
「偽物じゃないのか?本物だって認定されて数年も経つのに、魔物は減らないしよ」
「お前ら隣国の出身なんだろ?何か知らねーか?」
男達はグイと酒を飲み干して、横にいた若い冒険者2人に話しかけた。1人は赤い髪に茶目の精悍な若者。もう1人は帽子を目深に被った細身の少年だ。こちらは顔を見た事は無い。
「知らねーよ。でも3年前に俺らが出て来る時には、もう魔物はいたぜ?なぁ」
「あぁ。その時は、すぐ騎士団が派遣されて悪しきエネルギーの元は除去されたらしいけどな」
隣国出身の若い2人の冒険者もそれ以上の情報は無かったみたいだ。
「ふーん、そうか。まぁいいや。気分転換に娼館でも行くか?」
「いいな!ラナとリアはどうする?」
「俺は行こうかな。リアはどうする?」
「やめとくよ」
帰る、とリアは飲食した代金をテーブルに置いて店を出て行った。リア坊はウブだよなと、男達の囃し立てる声が聞こえた。
◇◇◇
オレは宿屋に着くと、ベッドにゴロンと横たわった。
卒業パーティーから国を出てやがて3年。
オレは18歳になった。背は残念ながらあまり伸びず、170cm程度だ。
長かった髪もバッサリ切った。肩くらいに切り揃えてるが、さすがに女に見えない程度には男らしさも出てきたと思う。
今ではオレは、ラナと共に立派な冒険者になって日々を過ごしている。
オレが婚約破棄された日。あの会場で、シレネが正式に『遣わされし聖なる乙女』に認定されたと風の噂で聞いた。なのに、今のところ悪しきエネルギーは浄化されず、相変わらず獣達は凶暴化し、魔物も定期的に見つかっている。
乙女ゲームではヒロインが想い人と結ばれて、それで聖なる浄化魔法が世界を救う筈だったけど。
ジェードとうまくいってないのかな?
久しぶりにかつての婚約者を想う。ちょっと胸がチクリとして、オレは頭をふった。
くだらない。どうでもいい話しだ。
オレはシャワーを浴びる為に、服を脱いだ。
腹に残った傷痕が目に入る。オレの白い肌に残る歪な傷跡は、ネフリティスを庇った時の傷だ。もうすっかり塞がって痛みは無い。
今日の汗を流す為シャワー室に移動した。
オレがシャワーを浴び終わった頃、ラナが戻って来た。
「早かったな」
「気分が乗らなくて帰って来た」
ラナが荷物をテーブルに投げ捨てると、ゴロンとベッドに横になった。ラナはもう20歳で、背も180cm近くはある。羨ましい。
「どの女よりも、お前の方が綺麗なんだもん」
「それはどうも」
こんな事言ってるけど、ラナの恋愛対象者は女性だ。ようは好みの女がいなかったんだ。ピンク髪とか、ピンク目のね。
隣国に移り住んでから、オレはラナの前でだけ顔を隠す事をやめた。それでも相変わらず、闇魔法のペンダントで黒髪と黒目を装っているけど。
だからラフな格好なまま自分のベッドに座ると、ラナが依頼書を渡してきた。
「さっきギルドから指名依頼が来てたぞ」
「指名依頼?」
指名依頼とは、ランクB以上の冒険者に対して指名でくる依頼の事だ。先日オレ達2人は、とうとうランクBに昇格した。でも、指名がある程、活躍した覚えは無いのにー。
「隣国の調査だってよ」
「あぁ、なるほど」
依頼者を確認して、納得する。
隣国はオレとラナの出身国だ。最近いい噂を聞かない。王族と貴族が対立してるとか、魔物の力が増してるとか、国が荒れてるとか。
それを危惧したこの国が、出身者のオレ達に様子を見て来て欲しい、という依頼だった。
「ラナはどうする?」
「俺は…一旦戻ってもいいと思ってる。孤児院の事も気になるしな」
ラナは口にしないが、オレは何となく気づいた。きっと『遣わされし聖なる乙女』に選ばれたシレネが気になってるんだろう。
元々は兄妹の様に親しかった2人だ。シレネが子爵に引き取られてから、2人は会ってない。それだけ身分の壁は大きい。
それに…ラナが付き合う女は、全員髪か目がピンクか、それに近い色なんだよなぁ…。
……まぁ、そこはオレも空気を読んでツッコマないけどさ。
「じゃあ、オレもついてくよ」
「悪いな」
「オレら仲間だろ?」
ラナと2人、顔を見合わせ笑い合ってから、今後の事を話し合った。
今回から少しずつ恋愛要素と閲覧注意なシーンが入ります。
ーーー
ギルドに併設された酒屋は昼間から賑わっていた。
話題に上るのは、たいてい女の話、金、各々の冒険談。そして、キナ臭い話だ。
「隣国の『遣わされし聖なる乙女』は何してんだ?」
「偽物じゃないのか?本物だって認定されて数年も経つのに、魔物は減らないしよ」
「お前ら隣国の出身なんだろ?何か知らねーか?」
男達はグイと酒を飲み干して、横にいた若い冒険者2人に話しかけた。1人は赤い髪に茶目の精悍な若者。もう1人は帽子を目深に被った細身の少年だ。こちらは顔を見た事は無い。
「知らねーよ。でも3年前に俺らが出て来る時には、もう魔物はいたぜ?なぁ」
「あぁ。その時は、すぐ騎士団が派遣されて悪しきエネルギーの元は除去されたらしいけどな」
隣国出身の若い2人の冒険者もそれ以上の情報は無かったみたいだ。
「ふーん、そうか。まぁいいや。気分転換に娼館でも行くか?」
「いいな!ラナとリアはどうする?」
「俺は行こうかな。リアはどうする?」
「やめとくよ」
帰る、とリアは飲食した代金をテーブルに置いて店を出て行った。リア坊はウブだよなと、男達の囃し立てる声が聞こえた。
◇◇◇
オレは宿屋に着くと、ベッドにゴロンと横たわった。
卒業パーティーから国を出てやがて3年。
オレは18歳になった。背は残念ながらあまり伸びず、170cm程度だ。
長かった髪もバッサリ切った。肩くらいに切り揃えてるが、さすがに女に見えない程度には男らしさも出てきたと思う。
今ではオレは、ラナと共に立派な冒険者になって日々を過ごしている。
オレが婚約破棄された日。あの会場で、シレネが正式に『遣わされし聖なる乙女』に認定されたと風の噂で聞いた。なのに、今のところ悪しきエネルギーは浄化されず、相変わらず獣達は凶暴化し、魔物も定期的に見つかっている。
乙女ゲームではヒロインが想い人と結ばれて、それで聖なる浄化魔法が世界を救う筈だったけど。
ジェードとうまくいってないのかな?
久しぶりにかつての婚約者を想う。ちょっと胸がチクリとして、オレは頭をふった。
くだらない。どうでもいい話しだ。
オレはシャワーを浴びる為に、服を脱いだ。
腹に残った傷痕が目に入る。オレの白い肌に残る歪な傷跡は、ネフリティスを庇った時の傷だ。もうすっかり塞がって痛みは無い。
今日の汗を流す為シャワー室に移動した。
オレがシャワーを浴び終わった頃、ラナが戻って来た。
「早かったな」
「気分が乗らなくて帰って来た」
ラナが荷物をテーブルに投げ捨てると、ゴロンとベッドに横になった。ラナはもう20歳で、背も180cm近くはある。羨ましい。
「どの女よりも、お前の方が綺麗なんだもん」
「それはどうも」
こんな事言ってるけど、ラナの恋愛対象者は女性だ。ようは好みの女がいなかったんだ。ピンク髪とか、ピンク目のね。
隣国に移り住んでから、オレはラナの前でだけ顔を隠す事をやめた。それでも相変わらず、闇魔法のペンダントで黒髪と黒目を装っているけど。
だからラフな格好なまま自分のベッドに座ると、ラナが依頼書を渡してきた。
「さっきギルドから指名依頼が来てたぞ」
「指名依頼?」
指名依頼とは、ランクB以上の冒険者に対して指名でくる依頼の事だ。先日オレ達2人は、とうとうランクBに昇格した。でも、指名がある程、活躍した覚えは無いのにー。
「隣国の調査だってよ」
「あぁ、なるほど」
依頼者を確認して、納得する。
隣国はオレとラナの出身国だ。最近いい噂を聞かない。王族と貴族が対立してるとか、魔物の力が増してるとか、国が荒れてるとか。
それを危惧したこの国が、出身者のオレ達に様子を見て来て欲しい、という依頼だった。
「ラナはどうする?」
「俺は…一旦戻ってもいいと思ってる。孤児院の事も気になるしな」
ラナは口にしないが、オレは何となく気づいた。きっと『遣わされし聖なる乙女』に選ばれたシレネが気になってるんだろう。
元々は兄妹の様に親しかった2人だ。シレネが子爵に引き取られてから、2人は会ってない。それだけ身分の壁は大きい。
それに…ラナが付き合う女は、全員髪か目がピンクか、それに近い色なんだよなぁ…。
……まぁ、そこはオレも空気を読んでツッコマないけどさ。
「じゃあ、オレもついてくよ」
「悪いな」
「オレら仲間だろ?」
ラナと2人、顔を見合わせ笑い合ってから、今後の事を話し合った。
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