33 / 60
第二部 乙女ゲーム?中等部編
11最終話
しおりを挟む
「ヴィラトリア嬢、僕はこの場で君との婚約破棄を宣言する!」
ジェードがオレを指差して叫んだ。
シレネが驚いた表情で、ジェードとオレを交互に見てる。きっと何が起きたのか分かってないんだろう。
「おい!ジェード、何をしてる!」
離れた所にいたネフリティスが、メガネ君やスペッサ、トンガリ君を引き連れてやって来た。
スペッサやトンガリ君が、ネフリティスの元を離れジェードの側にやって来た。2人とも心配そうな表情でオレを見ている。
はたから見れば、不安そうなシレネに寄り添ってる様に見えるだろう。
「どういう事ですの?」
オレも休んでいた椅子から立ち上がって、ジェードとシレネの正面に対峙する。
手に持っていた扇子を広げ、口元を隠した。周囲から苦しそうな顔が見えない様に、目だけはキッと睨む様に吊り上げる。
「しらばっくれるな!これまで君がシレネ嬢にした事を振り返ってみろ!」
それからジェードはオレが彼女に対して行った嫌がらせの数々を並べたてた。
周囲にいたジェードの友人達もそれを肯定するように声をあげる。シレネのファン達だ。
その内、オレらを取り囲む周囲の人々も、ザワザワと騒ぎ出してきた。まだネフリティスが何か騒いでるけど、周囲の声にかき消されている。
「こんな冷たい女だと思ってなかった!」
「……本気ですの?」
「もちろん本気だ!」
「では、婚約破棄、謹んでお受け致しますの」
オレは反論する事なく、すかさず、その提案を受け入れた。ジェードが作ってくれた最後のチャンスだから。
「…お二人の幸せを遠くから祈っておりますの」
そう言ってオレは身を翻し、顔を覆いながらその場を駆け出した。恐らく周囲からは泣いてる様に見える事だろう。
背後から焦ってオレを呼ぶ声が聞こえたけど、無論、無視して広間を飛び出した。
「令嬢、どちらに!?」
広間から飛び出して来たオレに、警護にあたっていた騎士が声をかけてきた。
「少し具合が悪くて、休ませて欲しいですの」
先ほどの騒ぎを知ってか知らずか、騎士はオレをリードして女性向けの休憩室まで連れて行ってくれた。
先ほどからヤバい位に腹の傷がズキズキして、きっと顔色もひどい事だろう。そのせいか、騎士はとても同情的だった。
「少し休みたいので、返事がなくても気にしないで欲しいですの」
「分かりました」
騎士にお礼を述べて、オレは部屋のドアを閉めた。慌ててドレスを脱ぐと、腹回りに巻いた布が赤く滲んでいた。予想通り、傷が開いたんだ。
ドレスのポケットから聖属性の魔法玉を取り出して、回復と治癒を願った。金の光が一瞬光って傷の痛みが治まった。
「早くココを出ないと」
脱いだドレスを捨てる訳にもいかない。オレは隠し持っていた薄手のマントを取り出して羽織った。そして黒い石のついたペンダントを身につける。
瞬時にオレの髪と目は黒に変わった。貯めたお金で買った半永久的に使える中級までの闇魔法を発現させる石だ。
お陰で気を抜いてもずっと姿を偽っていれる。
後はココから抜け出すだけだ。
オレはヴィラトリアとして来ていたドレスだけを手に、窓から外へ飛び出た。
◆◆◆
卒業パーティーが終わった後、学校内は大騒ぎだった。
この国の財務大臣の令嬢が行方不明になったからだ。
ヴィラトリア・トルマリン。
彼女は卒業パーティーの最中に婚約者から婚約破棄を告げられて、パーティーの途中で退席した。
その後、王室から大事な発表予定があった為、パーティーは続行された。その間に居なくなったのだ。
彼女が休んでいた筈の休憩室の窓は開いたままだった。
「どういう事だ!話が違うだろ!何故、婚約破棄なんか!」
高等部から駆けつけて来た兄のライバンがジェードにくってかかった。
自分がネフリティスの側近になる。それで妹の婚約は円満に解消される筈だったのに!
「…彼女が望んだんだ」
「何?」
項垂れるジェードの言葉にライバンは眉を顰めた。
「ライバン。本当だ、俺やスペッサも直接聞いた」
「何だと?何故ヴィラはそんな事を」
その後、侯爵令嬢の失踪に国も全力をあげて行方を探したが、とうとう彼女を見つけられ無かった。
そして最悪な事に、国境の境にある崖下で血のついた彼女のドレスが見つかった。これにより、彼女は事件に巻き込まれたと判断された。
この事件は、彼女を慕っていた者たちに深い傷跡を残し、後の禍根を生んでいくー。
第二部 乙女ゲーム?中等部編 完
ーーー
第三部からやっと恋愛&R18が入ります。
焦れた分、デロデロのあまあまのエロエロに仕上げますので、引き続きお付き合い頂けたら嬉しいです。
来月、公開予定です。
ジェードがオレを指差して叫んだ。
シレネが驚いた表情で、ジェードとオレを交互に見てる。きっと何が起きたのか分かってないんだろう。
「おい!ジェード、何をしてる!」
離れた所にいたネフリティスが、メガネ君やスペッサ、トンガリ君を引き連れてやって来た。
スペッサやトンガリ君が、ネフリティスの元を離れジェードの側にやって来た。2人とも心配そうな表情でオレを見ている。
はたから見れば、不安そうなシレネに寄り添ってる様に見えるだろう。
「どういう事ですの?」
オレも休んでいた椅子から立ち上がって、ジェードとシレネの正面に対峙する。
手に持っていた扇子を広げ、口元を隠した。周囲から苦しそうな顔が見えない様に、目だけはキッと睨む様に吊り上げる。
「しらばっくれるな!これまで君がシレネ嬢にした事を振り返ってみろ!」
それからジェードはオレが彼女に対して行った嫌がらせの数々を並べたてた。
周囲にいたジェードの友人達もそれを肯定するように声をあげる。シレネのファン達だ。
その内、オレらを取り囲む周囲の人々も、ザワザワと騒ぎ出してきた。まだネフリティスが何か騒いでるけど、周囲の声にかき消されている。
「こんな冷たい女だと思ってなかった!」
「……本気ですの?」
「もちろん本気だ!」
「では、婚約破棄、謹んでお受け致しますの」
オレは反論する事なく、すかさず、その提案を受け入れた。ジェードが作ってくれた最後のチャンスだから。
「…お二人の幸せを遠くから祈っておりますの」
そう言ってオレは身を翻し、顔を覆いながらその場を駆け出した。恐らく周囲からは泣いてる様に見える事だろう。
背後から焦ってオレを呼ぶ声が聞こえたけど、無論、無視して広間を飛び出した。
「令嬢、どちらに!?」
広間から飛び出して来たオレに、警護にあたっていた騎士が声をかけてきた。
「少し具合が悪くて、休ませて欲しいですの」
先ほどの騒ぎを知ってか知らずか、騎士はオレをリードして女性向けの休憩室まで連れて行ってくれた。
先ほどからヤバい位に腹の傷がズキズキして、きっと顔色もひどい事だろう。そのせいか、騎士はとても同情的だった。
「少し休みたいので、返事がなくても気にしないで欲しいですの」
「分かりました」
騎士にお礼を述べて、オレは部屋のドアを閉めた。慌ててドレスを脱ぐと、腹回りに巻いた布が赤く滲んでいた。予想通り、傷が開いたんだ。
ドレスのポケットから聖属性の魔法玉を取り出して、回復と治癒を願った。金の光が一瞬光って傷の痛みが治まった。
「早くココを出ないと」
脱いだドレスを捨てる訳にもいかない。オレは隠し持っていた薄手のマントを取り出して羽織った。そして黒い石のついたペンダントを身につける。
瞬時にオレの髪と目は黒に変わった。貯めたお金で買った半永久的に使える中級までの闇魔法を発現させる石だ。
お陰で気を抜いてもずっと姿を偽っていれる。
後はココから抜け出すだけだ。
オレはヴィラトリアとして来ていたドレスだけを手に、窓から外へ飛び出た。
◆◆◆
卒業パーティーが終わった後、学校内は大騒ぎだった。
この国の財務大臣の令嬢が行方不明になったからだ。
ヴィラトリア・トルマリン。
彼女は卒業パーティーの最中に婚約者から婚約破棄を告げられて、パーティーの途中で退席した。
その後、王室から大事な発表予定があった為、パーティーは続行された。その間に居なくなったのだ。
彼女が休んでいた筈の休憩室の窓は開いたままだった。
「どういう事だ!話が違うだろ!何故、婚約破棄なんか!」
高等部から駆けつけて来た兄のライバンがジェードにくってかかった。
自分がネフリティスの側近になる。それで妹の婚約は円満に解消される筈だったのに!
「…彼女が望んだんだ」
「何?」
項垂れるジェードの言葉にライバンは眉を顰めた。
「ライバン。本当だ、俺やスペッサも直接聞いた」
「何だと?何故ヴィラはそんな事を」
その後、侯爵令嬢の失踪に国も全力をあげて行方を探したが、とうとう彼女を見つけられ無かった。
そして最悪な事に、国境の境にある崖下で血のついた彼女のドレスが見つかった。これにより、彼女は事件に巻き込まれたと判断された。
この事件は、彼女を慕っていた者たちに深い傷跡を残し、後の禍根を生んでいくー。
第二部 乙女ゲーム?中等部編 完
ーーー
第三部からやっと恋愛&R18が入ります。
焦れた分、デロデロのあまあまのエロエロに仕上げますので、引き続きお付き合い頂けたら嬉しいです。
来月、公開予定です。
623
お気に入りに追加
1,102
あなたにおすすめの小説
婚約者の恋
うりぼう
BL
親が決めた婚約者に突然婚約を破棄したいと言われた。
そんな時、俺は「前世」の記憶を取り戻した!
婚約破棄?
どうぞどうぞ
それよりも魔法と剣の世界を楽しみたい!
……のになんで王子はしつこく追いかけてくるんですかね?
そんな主人公のお話。
※異世界転生
※エセファンタジー
※なんちゃって王室
※なんちゃって魔法
※婚約破棄
※婚約解消を解消
※みんなちょろい
※普通に日本食出てきます
※とんでも展開
※細かいツッコミはなしでお願いします
※勇者の料理番とほんの少しだけリンクしてます
【本編完結】断罪される度に強くなる男は、いい加減転生を仕舞いたい
雷尾
BL
目の前には金髪碧眼の美形王太子と、隣には桃色の髪に水色の目を持つ美少年が生まれたてのバンビのように震えている。
延々と繰り返される婚約破棄。主人公は何回ループさせられたら気が済むのだろうか。一応完結ですが気が向いたら番外編追加予定です。
逆ざまぁされ要員な僕でもいつか平穏に暮らせますか?
左側
BL
陽の光を浴びて桃色に輝く柔らかな髪。鮮やかな青色の瞳で、ちょっと童顔。
それが僕。
この世界が乙女ゲームやBLゲームだったら、きっと主人公だよね。
だけど、ここは……ざまぁ系のノベルゲーム世界。それも、逆ざまぁ。
僕は断罪される側だ。
まるで物語の主人公のように振る舞って、王子を始めとした大勢の男性をたぶらかして好き放題した挙句に、最後は大逆転される……いわゆる、逆ざまぁをされる側。
途中の役割や展開は違っても、最終的に僕が立つサイドはいつも同じ。
神様、どうやったら、僕は平穏に過ごせますか?
※ ※ ※ ※ ※ ※
ちょっと不憫系の主人公が、抵抗したり挫けたりを繰り返しながら、いつかは平穏に暮らせることを目指す物語です。
男性妊娠の描写があります。
誤字脱字等があればお知らせください。
必要なタグがあれば付け足して行きます。
総文字数が多くなったので短編→長編に変更しました。
一日だけの魔法
うりぼう
BL
一日だけの魔法をかけた。
彼が自分を好きになってくれる魔法。
禁忌とされている、たった一日しか持たない魔法。
彼は魔法にかかり、自分に夢中になってくれた。
俺の名を呼び、俺に微笑みかけ、俺だけを好きだと言ってくれる。
嬉しいはずなのに、これを望んでいたはずなのに……
※いきなり始まりいきなり終わる
※エセファンタジー
※エセ魔法
※二重人格もどき
※細かいツッコミはなしで
【運命】に捨てられ捨てたΩ
諦念
BL
「拓海さん、ごめんなさい」
秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。
「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」
秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。
【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。
なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。
右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。
前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。
※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。
縦読みを推奨します。
主人公は俺狙い?!
suzu
BL
生まれた時から前世の記憶が朧げにある公爵令息、アイオライト=オブシディアン。
容姿は美麗、頭脳も完璧、気遣いもできる、ただ人への態度が冷たい冷血なイメージだったため彼は「細雪な貴公子」そう呼ばれた。氷のように硬いイメージはないが水のように優しいイメージもない。
だが、アイオライトはそんなイメージとは反対に単純で鈍かったり焦ってきつい言葉を言ってしまう。
朧げであるがために時間が経つと記憶はほとんど無くなっていた。
15歳になると学園に通うのがこの世界の義務。
学園で「インカローズ」を見た時、主人公(?!)と直感で感じた。
彼は、白銀の髪に淡いピンク色の瞳を持つ愛らしい容姿をしており、BLゲームとかの主人公みたいだと、そう考える他なかった。
そして自分も攻略対象や悪役なのではないかと考えた。地位も高いし、色々凄いところがあるし、見た目も黒髪と青紫の瞳を持っていて整っているし、
面倒事、それもBL(多分)とか無理!!
そう考え近づかないようにしていた。
そんなアイオライトだったがインカローズや絶対攻略対象だろっ、という人と嫌でも鉢合わせしてしまう。
ハプニングだらけの学園生活!
BL作品中の可愛い主人公×ハチャメチャ悪役令息
※文章うるさいです
※背後注意
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる