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第二部 乙女ゲーム?中等部編

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 貴族学校が始まって数週間が過ぎた。

 その間に、始めの頃の様なザワザワした感じも落ち着いて。学校生活が日常になってきた。

 でも、オレの周囲は騒がしい。

「ここいいかい?」

 広い食堂の中。何故か、わざわざ。第一王子と宰相息子のメガネ君はオレの横に座ってきた。

 他にも空いてる席はあるのに、何故?

 王族に関わりたくなくて、固まるオレ。正面に座っていたトンガリ君とスペッサが、王子に噛み付いた。

「ネフリティス様。他にも空いてる席はありますが」
「もしかして、2人もヴィラ目当て~!?」

 恐ろしい事を言うスペッサに、オレが凍りついていると。ネフリティスは、プハ、と吹き出した。

「悪いがヴィラトリア嬢は私の好みじゃないよ」

 そうでしょうとも。こんな趣味の悪い女装男子、やめた方がいいです。うん。

「どちらかと言うと、2人と話したかったんだ」
「ボク達?」
「…何ですか?」

 スペッサとトンガリ君が眉を顰めた。おい、おい、不敬だよ。

「前も打診したけど、私の側近候補にならないかい?」
「興味ないで~す」
「断る」

 2人とも一刀両断だ。それを見て、ネフリティスは肩をすくめた。

「ヴィラトリア嬢。どう思う?」
「さ、さあ。ワタクシでは何とも…」
「いっそのこと、ヴィラトリア嬢を私の婚約者にしたら、君ら2人もついてくるのかな?」

 その言葉に、一気にオレ、スペッサ、トンガリ君の顔が青ざめた。

 な、何で?何でそんな話に?

 公爵家の婚約者でも死ぬかもと恐怖してるのに。王子の婚約者なんて。もう死のフラグしか見えないんですけど…。

 死。

 不意に、前世での事故に巻き込まれた時の恐怖や絶望感がフラッシュラバックしてきた。

 いき、が。

「…はぁ、はぁ、はぁ」

 急に呼吸が苦しくなって、オレは身体がガタガタ震え出した。

 側にいたネフリティスが怪訝そうに眉を顰めた。

「ヴィラトリア嬢?」
「ネフリティス様。妹を揶揄うのはやめてください」

 安心する声に顔を上げると。いつの間にか、オレの側に兄のライバンが立っていた。

 いつもは昼休みに食堂で見かけても、手で合図する位で、こんな風に接してくるのは珍しかった。

「はぁ、お…にい…様…」
「落ち着いて呼吸して。大丈夫だから」

 オレより大きな手が、優しく背中を撫でてくれた。その安心感に呼吸が落ち着いて、少しずつ震えが治ってくる。

「落ち着いた?」
「はい…ありがとう…ございますの」

 オレの様子を見たネフリティスがバツの悪そうな表情を浮かべた。

「悪かった。そこまで嫌がられるとは思わなかったんだ」
「ネフ、すぐ他人を揶揄うのは悪い癖だよ」

 第一王子に批判的な声をかけたのはジェードだった。今、食堂に入って来たみたいだ。側にシレネもいる。
 
 2人はトンガリ君の横。ちょうど王子やメガネ君の正面に当たる席に座った。

 オレが落ち着いたのを見て、ライバンは友人達の元へ戻って行った。

「ヴィラトリア嬢は、僕の婚約者だよ。あまり馴れ馴れしくしないで」
「…それにしては、そちらの令嬢と親しいみたいだけど?」
「シレネ嬢はまだ不慣れなので…サポートしてるだけだ」
「サポートね」

 王子はそれ以上は突っ込まなかった。その事に、オレはホッとする。

 最近ジェードは、あえてオレ達3人と別行動をしてシレネと一緒にいる事が増えた。

 それは、オレの提案をジェードが受け入れたからだ。

 オレはわざとシレネに冷たくあたる。
 ジェードはシレネを庇いサポートする為に側にいる。

 そして最終的に『遣わされし聖なる乙女』に対する不敬さを理由に、卒業パーティーで婚約を破棄する予定だ。

 休みの間にジェードに何があったかは分からない。でも、あのリッチとしてリアと冒険に出た事で、何か吹っ切れたみたいだ。

 そういえば、とネフリティスが再びオレの方を見た。思わずビクリとする。

 相手が獣や魔物なら怖くは無い。戦えるから。

 でも貴族社会における身分は、自分の力ではどうにも出来ない。特に子供であれば尚更。

 ネフリティスはそれを分かってて、あえて権力行使する所がある。それが苦手だった。

「ライバンは、ずいぶんヴィラトリア嬢を大事にしてるんだね」
「は、はい。優しいお兄様ですの」
「そう…」

 何かいい事を思いついた様に、ネフリティスはニヤリと笑った。

 それが何だか、悪い出来事の予兆の様で。胸にザワザワした不安が広がった。
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