14 / 75
第一部 ここって乙女ゲームの世界らしい
12
しおりを挟む
「冒険者?」
「なんだリア、お前冒険者知らないのか?」
ラナが教えてくれた冒険者は、オレがイメージしてる職業とほぼ同じだった。
ギルドに所属して、依頼を受けて、金を貰う。そんな職業だった。
この教会は孤児院も兼ねていて。ラナやシレネはここで面倒を見てもらってる孤児という事だった。多くの者が15歳位になると、手に職をつけるか、冒険者になってココを出て行くらしい。
「冒険者って…オレでもなれるかな?」
「あぁ。10歳以上なら誰でも登録は出来るぜ?この孤児院の奴らも10歳以上の奴らはみんな登録して、子供でも出来る依頼で稼いでる。オレも11歳だからもう仕事してるぜ?」
オレの横でリッチが息を飲んだのが分かった。貴族は13歳から18歳まで貴族学校に行ってから働くからね。常識が違いすぎてビックリだろうな。
でも。オレにとっては、このビックリは幸いだった。
「オレも冒険者登録したい」
オレの発言に、ラナが驚く。
「お前ちっこいのに10歳越えてるのか?」
「この前9歳になったばかり。だから1年後に登録したい」
ふーん、とラナが腕組みして、オレをジロジロ見る。
「簡単な依頼もあるけど、中には危ないのもあるぞ?お前みたいな、ちっこいのはすぐ死んじゃいそうだ」
「一応…簡単な魔法と短剣位なら使えるよ」
「リアはすごいよ!火魔法で僕を助けてくれたんだ!」
何故かリッチが援護してくれた。
「え?まじ!?」
ラナが驚いた顔をする。
「短剣が使えて火が使えるなら十分だ。じゃあ10歳になったら、オレとパーティ組もうぜ。色々教えてやるよ!」
「本当?ありがとう」
オレは思いがけず、未来のパーティ仲間を手に入れた!
ラナやシレネに冒険者や平民の生活の話を聞いてる内に、結構な時間が過ぎていた。
「もう大丈夫そうですよ」
若いシスターが表の様子を見て来てくれた。まだ日は高いが、そろそろ家に戻った方がいいかもしれない…けど。
「あの、院長。また、ここに来てもいいですか?」
「もちろんです。神はいつでも貴方を歓迎しますよ」
院長シスターがニッコリ微笑んでくれた。全ての人を受け止めてくれる様な、懐の深さを感じる。
「…ありがとうございます」
「僕も、僕もまた来ていいですか?」
何故かリッチもまた来たいと言い出した。そんなリッチの事も、シスターは優しくもちろんですと受け入れた。
その後は、改めてシスター達にお礼を言ってオレとリッチは教会を後にした。
「リッチはお迎えとか大丈夫?」
「うん。はぐれたら広場の噴水前で待ち合わせしてるから」
「じゃあ、そこまで一緒についてってやるよ」
「ありがとう」
偉そうに言ったけど、実はオレも迷子だから、とは恥ずかしくて言えない。
人通りの多い所に行く前に、オレは再び首元に布を巻いて、帽子を被り直した。
「帽子被っちゃうの?勿体ない」
「何で?」
「リアは、とても綺麗な顔してるから」
残念そうなリッチの言葉に、一瞬言葉に詰まる。オレが女なら、きっとこれ勘違いするよね?
「お前、誰にでもそんな事を言うなよ」
「え?本当に綺麗な人にしか言わないよ?」
「じゃあ、せめて女の子に言ってやれよ」
照れているのを知られたくなくて、帽子を深く被り直した。何だか頬が熱い。
暫くすると、大きな噴水が見えて来た。騎士らしい男達が数人佇んでいる。多分、あれだろうな。
「ここまでで十分だよな」
オレは踵を返した。そんなオレに、リッチが後ろから声をかけてきた。
「リア遅くなったけど、さっきは助けてくれて、ありがとう!」
「気にするな。次は気をつけろよ」
オレが振り向いて帽子のつばを上げながら笑うと、リッチは何故か頬を赤らめて叫んだ。
「また、会える!?」
「さあね」
多分、もう会う事は無いだろうけどね。
リッチの騎士に姿を見られたくないオレは、その場を急いで離れる為、駆け出した。
「なんだリア、お前冒険者知らないのか?」
ラナが教えてくれた冒険者は、オレがイメージしてる職業とほぼ同じだった。
ギルドに所属して、依頼を受けて、金を貰う。そんな職業だった。
この教会は孤児院も兼ねていて。ラナやシレネはここで面倒を見てもらってる孤児という事だった。多くの者が15歳位になると、手に職をつけるか、冒険者になってココを出て行くらしい。
「冒険者って…オレでもなれるかな?」
「あぁ。10歳以上なら誰でも登録は出来るぜ?この孤児院の奴らも10歳以上の奴らはみんな登録して、子供でも出来る依頼で稼いでる。オレも11歳だからもう仕事してるぜ?」
オレの横でリッチが息を飲んだのが分かった。貴族は13歳から18歳まで貴族学校に行ってから働くからね。常識が違いすぎてビックリだろうな。
でも。オレにとっては、このビックリは幸いだった。
「オレも冒険者登録したい」
オレの発言に、ラナが驚く。
「お前ちっこいのに10歳越えてるのか?」
「この前9歳になったばかり。だから1年後に登録したい」
ふーん、とラナが腕組みして、オレをジロジロ見る。
「簡単な依頼もあるけど、中には危ないのもあるぞ?お前みたいな、ちっこいのはすぐ死んじゃいそうだ」
「一応…簡単な魔法と短剣位なら使えるよ」
「リアはすごいよ!火魔法で僕を助けてくれたんだ!」
何故かリッチが援護してくれた。
「え?まじ!?」
ラナが驚いた顔をする。
「短剣が使えて火が使えるなら十分だ。じゃあ10歳になったら、オレとパーティ組もうぜ。色々教えてやるよ!」
「本当?ありがとう」
オレは思いがけず、未来のパーティ仲間を手に入れた!
ラナやシレネに冒険者や平民の生活の話を聞いてる内に、結構な時間が過ぎていた。
「もう大丈夫そうですよ」
若いシスターが表の様子を見て来てくれた。まだ日は高いが、そろそろ家に戻った方がいいかもしれない…けど。
「あの、院長。また、ここに来てもいいですか?」
「もちろんです。神はいつでも貴方を歓迎しますよ」
院長シスターがニッコリ微笑んでくれた。全ての人を受け止めてくれる様な、懐の深さを感じる。
「…ありがとうございます」
「僕も、僕もまた来ていいですか?」
何故かリッチもまた来たいと言い出した。そんなリッチの事も、シスターは優しくもちろんですと受け入れた。
その後は、改めてシスター達にお礼を言ってオレとリッチは教会を後にした。
「リッチはお迎えとか大丈夫?」
「うん。はぐれたら広場の噴水前で待ち合わせしてるから」
「じゃあ、そこまで一緒についてってやるよ」
「ありがとう」
偉そうに言ったけど、実はオレも迷子だから、とは恥ずかしくて言えない。
人通りの多い所に行く前に、オレは再び首元に布を巻いて、帽子を被り直した。
「帽子被っちゃうの?勿体ない」
「何で?」
「リアは、とても綺麗な顔してるから」
残念そうなリッチの言葉に、一瞬言葉に詰まる。オレが女なら、きっとこれ勘違いするよね?
「お前、誰にでもそんな事を言うなよ」
「え?本当に綺麗な人にしか言わないよ?」
「じゃあ、せめて女の子に言ってやれよ」
照れているのを知られたくなくて、帽子を深く被り直した。何だか頬が熱い。
暫くすると、大きな噴水が見えて来た。騎士らしい男達が数人佇んでいる。多分、あれだろうな。
「ここまでで十分だよな」
オレは踵を返した。そんなオレに、リッチが後ろから声をかけてきた。
「リア遅くなったけど、さっきは助けてくれて、ありがとう!」
「気にするな。次は気をつけろよ」
オレが振り向いて帽子のつばを上げながら笑うと、リッチは何故か頬を赤らめて叫んだ。
「また、会える!?」
「さあね」
多分、もう会う事は無いだろうけどね。
リッチの騎士に姿を見られたくないオレは、その場を急いで離れる為、駆け出した。
889
お気に入りに追加
1,651
あなたにおすすめの小説
勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる
千環
恋愛
第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。
なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【だって、私はただのモブですから】
10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした――
※他サイトでも投稿中
婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する
135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。
現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。
最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。
「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームを元にした人気のライトノベルの世界でした。
しかも、定番の悪役令嬢。
いえ、別にざまあされるヒロインにはなりたくないですし、婚約者のいる相手にすり寄るビッチなヒロインにもなりたくないです。
ですから婚約者の王子様。
私はいつでも婚約破棄を受け入れますので、どうぞヒロインのところに行って下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる