婚約破棄される悪役令嬢ですが実はワタクシ…男なんだわ

秋空花林

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第一部 ここって乙女ゲームの世界らしい

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「冒険者?」
「なんだリア、お前冒険者知らないのか?」

 ラナが教えてくれた冒険者は、オレがイメージしてる職業とほぼ同じだった。

 ギルドに所属して、依頼を受けて、金を貰う。そんな職業だった。

 この教会は孤児院も兼ねていて。ラナやシレネはここで面倒を見てもらってる孤児という事だった。多くの者が15歳位になると、手に職をつけるか、冒険者になってココを出て行くらしい。

「冒険者って…オレでもなれるかな?」
「あぁ。10歳以上なら誰でも登録は出来るぜ?この孤児院の奴らも10歳以上の奴らはみんな登録して、子供でも出来る依頼で稼いでる。オレも11歳だからもう仕事してるぜ?」

 オレの横でリッチが息を飲んだのが分かった。貴族は13歳から18歳まで貴族学校に行ってから働くからね。常識が違いすぎてビックリだろうな。

 でも。オレにとっては、このビックリは幸いだった。

「オレも冒険者登録したい」

 オレの発言に、ラナが驚く。

「お前ちっこいのに10歳越えてるのか?」
「この前9歳になったばかり。だから1年後に登録したい」

 ふーん、とラナが腕組みして、オレをジロジロ見る。

「簡単な依頼もあるけど、中には危ないのもあるぞ?お前みたいな、ちっこいのはすぐ死んじゃいそうだ」
「一応…簡単な魔法と短剣位なら使えるよ」
「リアはすごいよ!火魔法で僕を助けてくれたんだ!」

 何故かリッチが援護してくれた。

「え?まじ!?」

 ラナが驚いた顔をする。

「短剣が使えて火が使えるなら十分だ。じゃあ10歳になったら、オレとパーティ組もうぜ。色々教えてやるよ!」
「本当?ありがとう」

 オレは思いがけず、未来のパーティ仲間を手に入れた! 



 ラナやシレネに冒険者や平民の生活の話を聞いてる内に、結構な時間が過ぎていた。

「もう大丈夫そうですよ」

 若いシスターが表の様子を見て来てくれた。まだ日は高いが、そろそろ家に戻った方がいいかもしれない…けど。

「あの、院長。また、ここに来てもいいですか?」
「もちろんです。神はいつでも貴方を歓迎しますよ」

 院長シスターがニッコリ微笑んでくれた。全ての人を受け止めてくれる様な、懐の深さを感じる。

「…ありがとうございます」
「僕も、僕もまた来ていいですか?」

 何故かリッチもまた来たいと言い出した。そんなリッチの事も、シスターは優しくもちろんですと受け入れた。

 その後は、改めてシスター達にお礼を言ってオレとリッチは教会を後にした。

「リッチはお迎えとか大丈夫?」
「うん。はぐれたら広場の噴水前で待ち合わせしてるから」
「じゃあ、そこまで一緒についてってやるよ」
「ありがとう」

 偉そうに言ったけど、実はオレも迷子だから、とは恥ずかしくて言えない。

 人通りの多い所に行く前に、オレは再び首元に布を巻いて、帽子を被り直した。

「帽子被っちゃうの?勿体ない」
「何で?」
「リアは、とても綺麗な顔してるから」

 残念そうなリッチの言葉に、一瞬言葉に詰まる。オレが女なら、きっとこれ勘違いするよね?

「お前、誰にでもそんな事を言うなよ」
「え?本当に綺麗な人にしか言わないよ?」
「じゃあ、せめて女の子に言ってやれよ」

 照れているのを知られたくなくて、帽子を深く被り直した。何だか頬が熱い。

 暫くすると、大きな噴水が見えて来た。騎士らしい男達が数人佇んでいる。多分、あれだろうな。

「ここまでで十分だよな」

 オレは踵を返した。そんなオレに、リッチが後ろから声をかけてきた。

「リア遅くなったけど、さっきは助けてくれて、ありがとう!」
「気にするな。次は気をつけろよ」

 オレが振り向いて帽子のつばを上げながら笑うと、リッチは何故か頬を赤らめて叫んだ。

「また、会える!?」
「さあね」

 多分、もう会う事は無いだろうけどね。

 リッチの騎士に姿を見られたくないオレは、その場を急いで離れる為、駆け出した。
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