【完結】たっくんとコウちゃん【高校生編】

秋空花林

文字の大きさ
上 下
3 / 9

3 再会

しおりを挟む
 オレの成績の話をしよう。

 下から数えた方が早い。以上。

「以上じゃないでしょ!あんた将来どうすんの!」

 サッカー三昧に明け暮れていたオレに、とうとう母親の鉄槌が下った。

「あんたもう高校2年生よ!そろそろやりたい事は見つかったの!?」
「体育教師とか」
「その成績で大学行けると思ってんの?塾に行きなさい!」

 鬼ババアと化した母親に、強制的に塾に入れられた。

 塾とサッカー部と友達の付き合い。

 隙間時間で彼女とデート。

 オレのタイムスケジュールは一気に忙しくなった。正直余裕なんか無かった。

 だから塾に通い慣れて、やっと周りを見る余裕が出来た頃。

 ようやくオレはソイツの存在に気づいたんだ。

 背の小さな細い奴。日に焼けてないソイツは年下に見えた。

 見覚えのある顔立ちでー。

 すぐ誰か分かった。



◆◆◆



 僕の成績の話をしよう。

 手術や入院や転校とか。人生色々あったけど。

 幸い何とか勉強はついていけてた。

 でも、将来やりたい事が何にも無かった。

 唯一興味を持った料理は、今では色褪せて、生活する上での最低限な事しかやらなくなった。

 病気も完治したからパパやママにスポーツを勧められたけど。あまり運動神経も良くないし、元々の体力もなくて、なかなか続かなかった。

 進路に迷っていた時、やりたい事が見つからない僕に両親が言ってくれたんだ。まずはやりたい事を見つける為にも、大学に行ってみてはどうかって。いざ、やりたい事が出来た時に進路を狭めない様に。

 だから高校は進学校に進んで、並行して塾にも通っている。

 そんな生活を1年位続けた時に、それは起きたんだ。



 塾の帰り、外に向かう時に後ろから腕を掴まれた。

 グイッて結構強く引っ張られたから、僕はそのままその人にぶつかってしまった。

 同じ学校の奴らもいるけど。こんな乱暴な扱いをする奴は知らない。

 振り向くと最近女子によく噂されてる奴だった。

 背が高くて、イケメンで、クールでカッコいいって言われてる奴。でも、僕は遠くから見かけただけで面識は無かった。

「コウちゃん!」
「っ!?」

 その言葉に衝撃を受ける。
 僕をコウちゃんて呼ぶのは1人しかいない。

 目の前の人物が記憶の中の彼と違い過ぎて、呆然とする。

 僕の記憶の中の彼はもっとキラキラしてた。

 いつも笑ってて、いつもお腹空いたって言って、サッカーが大好きで。

 そう。いつも笑顔だった。

 こんな、クールな表情をする奴じゃなかった。

「た、たっくん…なの?」

 僕の言葉に相手の男の表情が、くしゃりと歪んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした

たっこ
BL
【加筆修正済】  7話完結の短編です。  中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。  二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。 「優、迎えに来たぞ」  でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。  

「誕生日前日に世界が始まる」

悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です) 凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^ ほっこり読んでいただけたら♡ 幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡ →書きたくなって番外編に少し続けました。

今日も、俺の彼氏がかっこいい。

春音優月
BL
中野良典《なかのよしのり》は、可もなく不可もない、どこにでもいる普通の男子高校生。特技もないし、部活もやってないし、夢中になれるものも特にない。 そんな自分と退屈な日常を変えたくて、良典はカースト上位で学年で一番の美人に告白することを決意する。 しかし、良典は告白する相手を間違えてしまい、これまたカースト上位でクラスの人気者のさわやかイケメンに告白してしまう。 あっさりフラれるかと思いきや、告白をOKされてしまって……。良典も今さら間違えて告白したとは言い出しづらくなり、そのまま付き合うことに。 どうやって別れようか悩んでいた良典だけど、彼氏(?)の圧倒的顔の良さとさわやかさと性格の良さにきゅんとする毎日。男同士だけど、楽しいし幸せだしあいつのこと大好きだし、まあいっか……なちょろくてゆるい感じで付き合っているうちに、どんどん相手のことが大好きになっていく。 間違いから始まった二人のほのぼの平和な胸キュンお付き合いライフ。 2021.07.15〜2021.07.16

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

俺の親友のことが好きだったんじゃなかったのかよ

雨宮里玖
BL
《あらすじ》放課後、三倉は浅宮に呼び出された。浅宮は三倉の親友・有栖のことを訊ねてくる。三倉はまたこのパターンかとすぐに合点がいく。きっと浅宮も有栖のことが好きで、三倉から有栖の情報を聞き出そうとしているんだなと思い、浅宮の恋を応援すべく協力を申し出る。 浅宮は三倉に「協力して欲しい。だからデートの練習に付き合ってくれ」と言い——。 攻め:浅宮(16) 高校二年生。ビジュアル最強男。 どんな口実でもいいから三倉と一緒にいたいと思っている。 受け:三倉(16) 高校二年生。平凡。 自分じゃなくて俺の親友のことが好きなんだと勘違いしている。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

思い出して欲しい二人

春色悠
BL
 喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。  そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。  一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。  そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

処理中です...