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第3部 呪いの館 それぞれの未来へ
怜の場合 4
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「え?なに?何して…」
訳がわからずに、怜は慌てる。
「会いに来て」
「え?」
「手術終わったら、会いに来て。待ってるから」
華はクスッと笑うと、今度は両手で怜の顔を挟んで引き寄せる。
もう一度、怜の唇に口づけた。
「私は貴方といたい。怜ちゃんが好き」
「っ」
怜の涙腺も限界だった。泣き顔を見せたくなくて怜は顔を伏せる。そんな彼を華が抱きしめる。
「まだ不安?」
「…不安。信じられない」
もしかしたら都合の良い夢かもしれない。こんな幸せな夢を見たら、もう目が覚めた時にどうしていいかわからない。
「怜ちゃん、私を見て」
華に呼ばれて、恐る恐る目線を上げる。
目の前には、幼い頃に自分を守ってくれていた正義感の強い女の子がいた。
怜が惹かれた、あの頃と同じ真っ直ぐな視線が怜を見つめていた。
「怜ちゃんが好き。幼馴染としてだけじゃなくて、1人の男性として怜ちゃんが好き。これからも側にいて欲しい」
「……っ、本当に?」
「うん。私の事信じられない?」
「ううん、華の事は信じてる」
華に触れたい。でも触れていいのかわからない。迷って手が挙動不審になってしまう。いつも冷静な玲がこうなるのは、いつも華の事だけだ。
「怜ちゃんは?ちゃんと聞きたい」
「好きだよ。ずっと。初めて会った時から変わらず」
怜は涙が止まらなかった。
何とか止めようとするけど、これまで堰き止めていた想いが涙と一緒に溢れ出ているようだった。
「泣いてもいいよ。私、怜ちゃんの泣いてる顔好きみたい」
「ひどい」
思わず笑い合って。
見つめ合って。
今度はお互いからキスをした。
怜の不安ごと包んでくれるような、そんな温かいキスだった。
◇◇◇
館から脱出する日。
ずっと怜と共にいた少年が、成仏できず彷徨う。
とても許容できる話ではなかった。
その位なら自分がその居場所を引き受けようと思った。
華に気持ちを告げるのも。向き合うことも。
彼がいなければ何も出来なかった。逃げる自分を見かねて助けてくれた存在。今度は自分が彼を助けたいと思った。
『魂の癒しと強化を施す呪いを』
最後の護る者の腕輪が、光の粒となった。空へ舞い上がり、少年へ降り注いだ。少年の身体を包んでいた光が強くなった。その光を纏ったまま、怜の元へ歩いてくる。
怜が握手するように手を差し伸べた。その手を少年が取った瞬間、少年の姿が光となって怜に吸い込まれる様に消えた。
これまでとは違う温かい気配が身体に入ってくるのがわかった。
『後はボクが引き受ける。キミは休んで』
どんなに平気そうに見せても少年には隠せなかった。怜の気力は限界だった。そのまま怜は少年に任せて、眠りについた。
◇◇◇
目が覚めると、薄暗い室内だった。
長い間寝ていた気がする。
状況がわからず、ベッドを起き上がり室内を見渡す。ここがどこか全くわからなかった。
「怜、目が覚めたの!?良かった!」
ドアから入って来た女性が嬉しそうに駆け寄って来た。
見覚えのない女性だった。
「ーあなたは誰ですか?」
その言葉に、目の前の女性が息を飲んで絶句した。
目が覚めた時。
怜は記憶を失っていた。
自分の事も家族の事も覚えていなかった。
訳がわからずに、怜は慌てる。
「会いに来て」
「え?」
「手術終わったら、会いに来て。待ってるから」
華はクスッと笑うと、今度は両手で怜の顔を挟んで引き寄せる。
もう一度、怜の唇に口づけた。
「私は貴方といたい。怜ちゃんが好き」
「っ」
怜の涙腺も限界だった。泣き顔を見せたくなくて怜は顔を伏せる。そんな彼を華が抱きしめる。
「まだ不安?」
「…不安。信じられない」
もしかしたら都合の良い夢かもしれない。こんな幸せな夢を見たら、もう目が覚めた時にどうしていいかわからない。
「怜ちゃん、私を見て」
華に呼ばれて、恐る恐る目線を上げる。
目の前には、幼い頃に自分を守ってくれていた正義感の強い女の子がいた。
怜が惹かれた、あの頃と同じ真っ直ぐな視線が怜を見つめていた。
「怜ちゃんが好き。幼馴染としてだけじゃなくて、1人の男性として怜ちゃんが好き。これからも側にいて欲しい」
「……っ、本当に?」
「うん。私の事信じられない?」
「ううん、華の事は信じてる」
華に触れたい。でも触れていいのかわからない。迷って手が挙動不審になってしまう。いつも冷静な玲がこうなるのは、いつも華の事だけだ。
「怜ちゃんは?ちゃんと聞きたい」
「好きだよ。ずっと。初めて会った時から変わらず」
怜は涙が止まらなかった。
何とか止めようとするけど、これまで堰き止めていた想いが涙と一緒に溢れ出ているようだった。
「泣いてもいいよ。私、怜ちゃんの泣いてる顔好きみたい」
「ひどい」
思わず笑い合って。
見つめ合って。
今度はお互いからキスをした。
怜の不安ごと包んでくれるような、そんな温かいキスだった。
◇◇◇
館から脱出する日。
ずっと怜と共にいた少年が、成仏できず彷徨う。
とても許容できる話ではなかった。
その位なら自分がその居場所を引き受けようと思った。
華に気持ちを告げるのも。向き合うことも。
彼がいなければ何も出来なかった。逃げる自分を見かねて助けてくれた存在。今度は自分が彼を助けたいと思った。
『魂の癒しと強化を施す呪いを』
最後の護る者の腕輪が、光の粒となった。空へ舞い上がり、少年へ降り注いだ。少年の身体を包んでいた光が強くなった。その光を纏ったまま、怜の元へ歩いてくる。
怜が握手するように手を差し伸べた。その手を少年が取った瞬間、少年の姿が光となって怜に吸い込まれる様に消えた。
これまでとは違う温かい気配が身体に入ってくるのがわかった。
『後はボクが引き受ける。キミは休んで』
どんなに平気そうに見せても少年には隠せなかった。怜の気力は限界だった。そのまま怜は少年に任せて、眠りについた。
◇◇◇
目が覚めると、薄暗い室内だった。
長い間寝ていた気がする。
状況がわからず、ベッドを起き上がり室内を見渡す。ここがどこか全くわからなかった。
「怜、目が覚めたの!?良かった!」
ドアから入って来た女性が嬉しそうに駆け寄って来た。
見覚えのない女性だった。
「ーあなたは誰ですか?」
その言葉に、目の前の女性が息を飲んで絶句した。
目が覚めた時。
怜は記憶を失っていた。
自分の事も家族の事も覚えていなかった。
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