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第2部 呪いの館 救出編
26話
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逃げたらこの妖怪に殺される。
彼らの頭は華への恐怖で一杯だった。
そのまま離れの牢屋に全員連行する。牢屋はいくつも増やせるので、数に困る事はなかった。
昼に先に牢に入っていた男が、唖然とした表情で、連行されてきた一行を見ていた。
1人ずつ牢に入れられていく。後ろ手に縄を縛ったままだ。こいつらには、1mmも同情する気は無かった。
「彼らに聞きたい事があるの。少し外に出てもらっていい?」
「何故?」
青年が不審な表情をする。でもここは華も譲れなかった。どうしても聞かせたくない。
「お願いします」
華が頭を下げた。文化の違いはあれど、それが彼女なりの誠意だと言うことは、青年にもわかった。
「10分でいいか?」
華が頷く。それを見て青年はドアから外へ出て行った。それを見届けてから華は新しく牢屋に入れた男達を見渡して聞いた。
「奪った指輪はどこ?」
答える者はいなかった。知らないのか、言いたくないのか。どっちだ?
どう聞き出すべきか考えていると、最初に牢に入っていた男が恐る恐る聞いて来た。
「指輪ってなんだ?」
「え?」
まさかこんな質問が来るとは。
こんな感じの物です、と華は自分の指に嵌めたビーズの指輪を見せる。
「異国の姫様の指に嵌められていたんですが、死ぬ時に盗まれたんです」
「そんな変な輪っかを盗んでどうするんだ?」
「そうですね。綺麗な光る石がはまっていたので、もしかしたら、宝物に見えたのかも知れません」
華の言葉に、ピクと反応した男がいた。先程の集団でリーダー格の男だった。
「何か知ってますか?」
「あ…え~と」
バチッとスタンガンで脅す。男が慌てて言うから、やめてくれ!と懇願して来た。
「まず俺はその指輪っつうのは見てないぞ。だけど、宝物なら多分村長の家だ」
「え?」
「詳しくは知らないが、あの日、俺らはついでに金目の物も盗って来いと言われてた」
怒りで血が逆流しそうだった。
殺しだけでなく、元から盗みまでするつもりだったのか。
これでは強盗…昔の言い方で言うなら、盗賊ではないか。
華の様子を見て男達は慌てた。
「ほ、本当だ!嘘は言ってねえ!だから俺らは、あの若様の黒い剣を持ち帰ったんだ」
「え?」
あの剣を?でもあれは今青年自身が手にしている。その前に彼らの父親が、それを手に村人を虐殺した筈だ。
「あの剣は、一度は村長が?」
「あぁ、そうだ。だから、さっき若様が黒い剣を構えているのを見て…そういえば…若様や姫様は死んだ筈だって思い出して…」
男の声が小さくなっていく。ついでに自分が死んでいる事も思い出したのかもしれない。
「もう、いいか?」
青年が中に戻って来た。
華が頷く。最後にもう1つ聞いておきたい事があったが、それは青年がいても構わない。
「何故…今日また襲って来たの?」
「それは…」
男達が互いを見合う。バチと鳴らすと、怯えながらも慌てて話し出した。
事の起こりは数日前。
村長が自分の子供の姿がない事に気づいた。そこで何人かの村人に捜索して貰ったり、長老と相談していたが。
今日突然、異人達に秘密を知られたから、捕らえるよう言われたらしい。
「捕らえる?殺したり、盗む事が目的じゃなくて?」
「…どういう事だ」
華の発した不穏な単語に、青年が気色ばむ。今説明したら、青年の怒りが爆発しそうだ。後で、まとめて説明するね、と今は疑問を抑えてもらう事にした。
男達に再び確認する。
確かに村長は、捕らえて来いと言っていたと言う。
「もし捕らえるのに失敗したら?」
「…俺らが戻らなければ、もっと人数を増やして乗り込んで来る、きっと……」
言わなくてもわかった。
きっと…あの夜の様に、だ。
最初に襲撃に来た者は全員青年に返り討ちにされた。だから、もっと多くの人数で乗り込んで来たのだ。
青年と華が目線を合わす。
体力温存の為、村長の家に乗り込むのは明日。そんな悠長な事は言ってられなくなった。
華と青年は、お互い無言で頷き駆け出した。
彼らの頭は華への恐怖で一杯だった。
そのまま離れの牢屋に全員連行する。牢屋はいくつも増やせるので、数に困る事はなかった。
昼に先に牢に入っていた男が、唖然とした表情で、連行されてきた一行を見ていた。
1人ずつ牢に入れられていく。後ろ手に縄を縛ったままだ。こいつらには、1mmも同情する気は無かった。
「彼らに聞きたい事があるの。少し外に出てもらっていい?」
「何故?」
青年が不審な表情をする。でもここは華も譲れなかった。どうしても聞かせたくない。
「お願いします」
華が頭を下げた。文化の違いはあれど、それが彼女なりの誠意だと言うことは、青年にもわかった。
「10分でいいか?」
華が頷く。それを見て青年はドアから外へ出て行った。それを見届けてから華は新しく牢屋に入れた男達を見渡して聞いた。
「奪った指輪はどこ?」
答える者はいなかった。知らないのか、言いたくないのか。どっちだ?
どう聞き出すべきか考えていると、最初に牢に入っていた男が恐る恐る聞いて来た。
「指輪ってなんだ?」
「え?」
まさかこんな質問が来るとは。
こんな感じの物です、と華は自分の指に嵌めたビーズの指輪を見せる。
「異国の姫様の指に嵌められていたんですが、死ぬ時に盗まれたんです」
「そんな変な輪っかを盗んでどうするんだ?」
「そうですね。綺麗な光る石がはまっていたので、もしかしたら、宝物に見えたのかも知れません」
華の言葉に、ピクと反応した男がいた。先程の集団でリーダー格の男だった。
「何か知ってますか?」
「あ…え~と」
バチッとスタンガンで脅す。男が慌てて言うから、やめてくれ!と懇願して来た。
「まず俺はその指輪っつうのは見てないぞ。だけど、宝物なら多分村長の家だ」
「え?」
「詳しくは知らないが、あの日、俺らはついでに金目の物も盗って来いと言われてた」
怒りで血が逆流しそうだった。
殺しだけでなく、元から盗みまでするつもりだったのか。
これでは強盗…昔の言い方で言うなら、盗賊ではないか。
華の様子を見て男達は慌てた。
「ほ、本当だ!嘘は言ってねえ!だから俺らは、あの若様の黒い剣を持ち帰ったんだ」
「え?」
あの剣を?でもあれは今青年自身が手にしている。その前に彼らの父親が、それを手に村人を虐殺した筈だ。
「あの剣は、一度は村長が?」
「あぁ、そうだ。だから、さっき若様が黒い剣を構えているのを見て…そういえば…若様や姫様は死んだ筈だって思い出して…」
男の声が小さくなっていく。ついでに自分が死んでいる事も思い出したのかもしれない。
「もう、いいか?」
青年が中に戻って来た。
華が頷く。最後にもう1つ聞いておきたい事があったが、それは青年がいても構わない。
「何故…今日また襲って来たの?」
「それは…」
男達が互いを見合う。バチと鳴らすと、怯えながらも慌てて話し出した。
事の起こりは数日前。
村長が自分の子供の姿がない事に気づいた。そこで何人かの村人に捜索して貰ったり、長老と相談していたが。
今日突然、異人達に秘密を知られたから、捕らえるよう言われたらしい。
「捕らえる?殺したり、盗む事が目的じゃなくて?」
「…どういう事だ」
華の発した不穏な単語に、青年が気色ばむ。今説明したら、青年の怒りが爆発しそうだ。後で、まとめて説明するね、と今は疑問を抑えてもらう事にした。
男達に再び確認する。
確かに村長は、捕らえて来いと言っていたと言う。
「もし捕らえるのに失敗したら?」
「…俺らが戻らなければ、もっと人数を増やして乗り込んで来る、きっと……」
言わなくてもわかった。
きっと…あの夜の様に、だ。
最初に襲撃に来た者は全員青年に返り討ちにされた。だから、もっと多くの人数で乗り込んで来たのだ。
青年と華が目線を合わす。
体力温存の為、村長の家に乗り込むのは明日。そんな悠長な事は言ってられなくなった。
華と青年は、お互い無言で頷き駆け出した。
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