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第2部 呪いの館 救出編

14話

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 2人の話が終わった後、早速腕輪を渡そうとしたが、少年の幽霊が待ったをかけた。

 今日の出来事で華はだいぶ精神を疲労してるので、思った以上に魂に負担がかかっている。

 また怜の方も、館に呼ばれてでなく自ら飛び込んで来たせいで、やはり魂の負担は前回より大きい。

 なので2人とも、少なくとも今日一日は身体と心を休めた方が良いそうだ。

 かといって、スマホも使えずTVも無いので後は食堂で2人でお喋りする位しかない。

 それなら…と怜がサツマイモを手に席を立つ。

「せっかく貰った物だし、何か作ろうか」
「わぁ嬉しい!」

 そういえば情報の共有をしている内に、結構時間が過ぎていた。

 少年からも何かしら食事や栄養はとった方がいいと聞いてたので、素直に怜の好意に甘えた。

「じゃあその間、シャワーでも浴びてきなよ。服も着替えたら?」

 そう言って怜は食堂の奥に消えた。

 華のいる所からは大きく出入り口が繋がっていてるので、調理を始める音も聞こえるし、距離もそう離れていない。

 ただ、怜の立ち位置的に姿が見えなくなった。それが何となく不安な気持ちにさせる。

 華は自分の格好を見る。
 地面に押し倒されたので、草地といえど土や草がついていた。

 シャワーを浴びたい、けど、腕輪があると昨日みたいな珍騒動になりそうな気がする。
 
 でも腕輪を外して1人で部屋に行くのも、何だか怖かった。

 何となく1人でいると取り残されたトラウマや、あの男の恐怖を思い出しそうだった。

「どうしたの?」

 返事のない華へ怜が食堂の奥から声をかけた。

「それが…1人だと怖くて…。出来れば一緒に…」
「…!?」

 ガシャーンとボウルか何かが落ちる音がした。
 
「怜ちゃんが一緒に部屋にいる時に入ってもいい?」
「…そういう意味」

 はぁ、と深いため息と、何かを拾っている音が聞こえてきた。

「…いいけど。一応僕も男なんだけど…」

 ぶつぶつ文句を言ってる声がする。

 相変わらず男として見られてないのか…。先程から大人しくしているが、2人のやりとりを聞いていた青年と少年は怜に同情していた。

「ちゃんと怜ちゃんは男性だって意識してるよ!でも怜ちゃんだからいいの!」

 華のよくわからない宣言に、調理場からまたボウルが落ちて転がる音が聞こえてきた。

 無自覚に男を誑かす恐ろしい女。勇輝の時もその場にいた青年は、華の評価をそう結論づけた。



◇◇◇



 心を惑わされながらも、何とか調理を終えた怜が戻ってきた。

 手に持っていたお皿の1つを華の前に置いて、そのまま華の斜め横に座った。

 老夫婦からもらったサツマイモは、怜の手によってオシャレなスイーツに生まれ変わっていた。

 火を通したサツマイモにバターが絡み、ブラウンシュガーがかかっていた。とても香ばしい香りに華のお腹がぐーっと鳴った。

 怜がクスッと笑って、どうぞ召し上がれと促す。

 口に入れたサツマイモは、とても香ばしく、甘く、その美味しさで疲れた心と身体を癒してくれた。

 卓上BOXでも美味しい物は食べていたが、比べ物にならない。心も身体も何だかぽかぽかした。

『これは…美味いな』
『…こんな美味しいの初めて食べたよ』
 
 華の中で青年と少年も感嘆してる。

「怜ちゃんとっても美味しい!ふふ、2人も美味しいって感動してるよ」
「どうも」

 怜は特に表情を崩さず、ナイフとフォークで食べ進めている。

『料理も上手くて頼りになるなんて、恋人にするならもう彼でいいんじゃない?』
『いや、前にオレが取り憑いたヤツも気持ちは負けてないぞ』
「ぐふっ」

 突然の2人の言葉に、危うく吹きそうになった。サツマイモのスイーツから何故か、華の恋愛話に発展してる。

 何故?

 怜がいきなりむせた華に不思議そうな顔をしてる。卓上BOXからお水を取り出し華に渡してくれた。

『美味しいだけじゃなくて、伝わってくる物があるでしょ?直接彼の魂が作ったから、そのまま愛情が伝わってくるんだよ』
『何だ、やけにソイツの肩を持つんだな』
『…だって、こうでもしないと彼は自分から言わないからね』
『ふん、むっつりとか言うやつか』
『…そんな言葉どこで覚えたの』

 脳内で繰り広げられる会話に、いたたまれない。

 むっつり疑惑をかけられた本人は、相変わらず澄ました顔で食事を続けてる。

 美味しいのに、集中出来ない。でもそのお陰で、昼の怖い出来事を考えなくて済んだのだった。
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