48 / 87
第2部 呪いの館 救出編
18話※
しおりを挟む
※不快なシーンがあります。
ーーー
突然真っ黒なモヤがいたるところから湧いてくる。それは視界全体を黒に染めた。
それを感じて華は理解した。
ここから先が…きっと桃が神社で見た光景。そして彼女が死ぬ直前に起きた出来事。
彼女の記憶が追えば、今度こそ悲劇が起きた理由がわかるだろうか…。
黒いモヤで全体の視界は悪い。それだけ思い出したく無い過去。
彼女は弟に匿われた部屋に隠れていたが…不幸な事に、彼女は気づいてしまった。大事な指輪を部屋に置いてきたことに。
普段の彼女なら、もっと慎重に行動した筈だろう。
だが、先程見たショッキングな光景が彼女の精神状態を不安定にしていた。
沢山の村人の死体。全身血に塗れでその真ん中に立ち尽くした彼は、全く知らない人の様だった。
彼が一生側にいると約束してプレゼントしてくれた大事な指輪。それは彼女を支えてくれる宝物だった。
彼女は隠れ部屋を飛び出した。
彼女の部屋は屋敷内でも奥にある。
村人が襲撃してきてもすぐには辿り着けないだろう。
自分の部屋に駆け込むと、すぐ奥の机に向かう。指輪は机の上に、箱に入った状態でそのまま置かれていた。
良かった…あった。無くさないよう指輪を嵌める。
そして元の隠れていた部屋に向かおうと、踵を返したところで、彼女の足が止まった、
部屋の入り口から数人の村人が入って来たところだった。手に武器を持って、獲物を見つけて笑っていた。
その後の事はよく覚えていない。
何も感じたくない。彼女の心は麻痺した。何も見たくない。彼女の目から意思の光が消えた。何も発したくない。彼女の口から言葉が消えた。何も聞きたくない。彼女の耳は何も音を拾わなくなった。
肌にあたる空気の暖かさで、彼女は夜が明けたのだとぼんやり思った。正気でいてはいけない。再び自らを殻に閉じ込めようとした彼女の耳に、それは聞こえてきた。
ー恨むなら、はな様を恨むんだな。
昨日会った黒髪の少女。何故、彼女の話が。ぼんやり思考する。考えてはいけない。心に鍵をかけないと。
ー助けはこない。お前の弟とあの男は死んだ。
心が壊れた。
叫んだ気も、するが、全てが、スロ ーモーションの、ようだった。 誰か が、剣 を、彼女へ 向けた。ソレハ、アノヒト ノ…。 ソレハ、 カノジョニ トッテ、 ノ、 スク イ。 ミズカ ラ、 トビコン ダ。
赤。赤。赤。
全体は黒いモヤで覆われているのに、鮮血が鮮やかに見えた気がした。意識が…朦朧として…生命が消えようとしている…。
誰かが、彼女の手を取った。一晩ずっと握り締めていた彼女の拳はあっけなく広げられる。
ソレは彼女にとっての宝物。
彼女の生命が尽きる寸前、指に嵌めていた婚約指輪は何者かに盗まれた。
◇◇◇
意識が覚醒すると同時に、華は絶叫した。狂った様に叫び続ける。
正気でいてはいけない。思い出してはいけない。感じてはいけない。見てはいけない。聞いてはいけない。
何故弟が!何故彼が!殺されなければならなかった!
許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。
恨め。恨め。恨め。恨め。恨め。
村人も皆殺しだ。この村ごと呪ってやる。子供1人残らず殺してやる。手始めはあの黒髪のヤツだ!!!
「華!」
パンッと乾いた音がした。
頬の痛みに呆然とする。
叩いた相手を見ると…サラサラの黒髪に切長の黒眼の少年。
「華!僕がわかる!?」
華の両肩を掴んで、必死に聞いてくる。彼はー。
「怜…ちゃん?」
「良かった…正気に戻った」
怜は、クシャッと泣きそうに顔を歪めた。
「なにが…」
「ベッドでそのまま気を失っていたんだ。起きたと思ったら、いきなりずっと叫んでるから」
気絶したまま彼女のベッドでそのまま寝かされていたようだ。
突然、華の全身に鳥肌が立った。彼女の部屋。悲劇が起きたあのー。
先程の悲劇を思い出し、華はそのまま嘔吐した。
ーーー
突然真っ黒なモヤがいたるところから湧いてくる。それは視界全体を黒に染めた。
それを感じて華は理解した。
ここから先が…きっと桃が神社で見た光景。そして彼女が死ぬ直前に起きた出来事。
彼女の記憶が追えば、今度こそ悲劇が起きた理由がわかるだろうか…。
黒いモヤで全体の視界は悪い。それだけ思い出したく無い過去。
彼女は弟に匿われた部屋に隠れていたが…不幸な事に、彼女は気づいてしまった。大事な指輪を部屋に置いてきたことに。
普段の彼女なら、もっと慎重に行動した筈だろう。
だが、先程見たショッキングな光景が彼女の精神状態を不安定にしていた。
沢山の村人の死体。全身血に塗れでその真ん中に立ち尽くした彼は、全く知らない人の様だった。
彼が一生側にいると約束してプレゼントしてくれた大事な指輪。それは彼女を支えてくれる宝物だった。
彼女は隠れ部屋を飛び出した。
彼女の部屋は屋敷内でも奥にある。
村人が襲撃してきてもすぐには辿り着けないだろう。
自分の部屋に駆け込むと、すぐ奥の机に向かう。指輪は机の上に、箱に入った状態でそのまま置かれていた。
良かった…あった。無くさないよう指輪を嵌める。
そして元の隠れていた部屋に向かおうと、踵を返したところで、彼女の足が止まった、
部屋の入り口から数人の村人が入って来たところだった。手に武器を持って、獲物を見つけて笑っていた。
その後の事はよく覚えていない。
何も感じたくない。彼女の心は麻痺した。何も見たくない。彼女の目から意思の光が消えた。何も発したくない。彼女の口から言葉が消えた。何も聞きたくない。彼女の耳は何も音を拾わなくなった。
肌にあたる空気の暖かさで、彼女は夜が明けたのだとぼんやり思った。正気でいてはいけない。再び自らを殻に閉じ込めようとした彼女の耳に、それは聞こえてきた。
ー恨むなら、はな様を恨むんだな。
昨日会った黒髪の少女。何故、彼女の話が。ぼんやり思考する。考えてはいけない。心に鍵をかけないと。
ー助けはこない。お前の弟とあの男は死んだ。
心が壊れた。
叫んだ気も、するが、全てが、スロ ーモーションの、ようだった。 誰か が、剣 を、彼女へ 向けた。ソレハ、アノヒト ノ…。 ソレハ、 カノジョニ トッテ、 ノ、 スク イ。 ミズカ ラ、 トビコン ダ。
赤。赤。赤。
全体は黒いモヤで覆われているのに、鮮血が鮮やかに見えた気がした。意識が…朦朧として…生命が消えようとしている…。
誰かが、彼女の手を取った。一晩ずっと握り締めていた彼女の拳はあっけなく広げられる。
ソレは彼女にとっての宝物。
彼女の生命が尽きる寸前、指に嵌めていた婚約指輪は何者かに盗まれた。
◇◇◇
意識が覚醒すると同時に、華は絶叫した。狂った様に叫び続ける。
正気でいてはいけない。思い出してはいけない。感じてはいけない。見てはいけない。聞いてはいけない。
何故弟が!何故彼が!殺されなければならなかった!
許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。
恨め。恨め。恨め。恨め。恨め。
村人も皆殺しだ。この村ごと呪ってやる。子供1人残らず殺してやる。手始めはあの黒髪のヤツだ!!!
「華!」
パンッと乾いた音がした。
頬の痛みに呆然とする。
叩いた相手を見ると…サラサラの黒髪に切長の黒眼の少年。
「華!僕がわかる!?」
華の両肩を掴んで、必死に聞いてくる。彼はー。
「怜…ちゃん?」
「良かった…正気に戻った」
怜は、クシャッと泣きそうに顔を歪めた。
「なにが…」
「ベッドでそのまま気を失っていたんだ。起きたと思ったら、いきなりずっと叫んでるから」
気絶したまま彼女のベッドでそのまま寝かされていたようだ。
突然、華の全身に鳥肌が立った。彼女の部屋。悲劇が起きたあのー。
先程の悲劇を思い出し、華はそのまま嘔吐した。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
牛の首チャンネル
猫じゃらし
ホラー
どうもー。『牛の首チャンネル』のモーと、相棒のワンさんです。ご覧いただきありがとうございます。
このチャンネルは僕と犬のぬいぐるみに取り憑かせた幽霊、ワンさんが心霊スポットに突撃していく動画を投稿しています。
怖い現象、たくさん起きてますので、ぜひ見てみてくださいね。
心霊写真特集もやりたいと思っていますので、心霊写真をお持ちの方はコメント欄かDMにメッセージをお願いします。
よろしくお願いしまーす。
それでは本編へ、どうぞー。
※小説家になろうには「牛の首」というタイトル、エブリスタには「牛の首チャンネル」というタイトルで投稿しています。
月影の約束
藤原遊
ホラー
――出会ったのは、呪いに囚われた美しい青年。救いたいと願った先に待つのは、愛か、別離か――
呪われた廃屋。そこは20年前、不気味な儀式が行われた末に、人々が姿を消したという場所。大学生の澪は、廃屋に隠された真実を探るため足を踏み入れる。そこで彼女が出会ったのは、儚げな美貌を持つ青年・陸。彼は、「ここから出て行け」と警告するが、澪はその悲しげな瞳に心を動かされる。
鏡の中に広がる異世界、繰り返される呪い、陸が抱える過去の傷……。澪は陸を救うため、呪いの核に立ち向かうことを決意する。しかし、呪いを解くためには大きな「代償」が必要だった。それは、澪自身の大切な記憶。
愛する人を救うために、自分との思い出を捨てる覚悟ができますか?
開示請求
工事帽
ホラー
不幸な事故を発端に仕事を辞めた男は、動画投稿で新しい生活を始める。順調に増える再生数に、新しい生活は明るいものに見えた。だが、投稿された一つのコメントからその生活に陰が差し始める。
幸せの島
土偶の友
ホラー
夏休み、母に連れられて訪れたのは母の故郷であるとある島。
初めて会ったといってもいい祖父母や現代とは思えないような遊びをする子供たち。
そんな中に今年10歳になる大地は入っていく。
彼はそこでどんな結末を迎えるのか。
完結しましたが、不明な点があれば感想などで聞いてください。
エブリスタ様、カクヨム様、小説家になろう様、ノベルアップ+様でも投稿しています。
叫ぶ家と憂鬱な殺人鬼(旧Ver
Tempp
ホラー
大学1年の春休み、公理智樹から『呪いの家に付き合ってほしい』というLIMEを受け取る。公理智樹は強引だ。下手に断ると無理やり呪いの家に放りこまれるかもしれない。それを避ける妥協策として、家の前まで見に行くという約束をした。それが運の悪い俺の運の尽き。
案の定俺は家に呪われ、家にかけられた呪いを解かなければならなくなる。
●概要●
これは呪いの家から脱出するために、都合4つの事件の過去を渡るホラーミステリーです。認識差異をベースにした構成なので多分に概念的なものを含みます。
文意不明のところがあれば修正しますので、ぜひ教えてください。
●改稿中
見出しにサブ見出しがついたものは公開後に改稿をしたものです。
2日で1〜3話程度更新。
もともと32万字完結を22万字くらいに減らしたい予定。
R15はGの方です。人が死ぬので。エロ要素は基本的にありません。
定期的にホラーカテゴリとミステリカテゴリを行ったり来たりしてみようかと思ったけど、エントリの時点で固定されたみたい。
断末魔の残り香
焼魚圭
ホラー
ある私立大学生の鳴見春斗(なるみはると)。
一回生も終わろうとしていたその冬に友だちの小浜秋男(おばまあきお)に連れられて秋男の友だちであり車の運転が出来る同い歳の女性、波佐見冬子(はさみとうこ)と三人で心霊スポットを巡る話である。
※本作品は「アルファポリス」、「カクヨム」、「ノベルアップ+」「pixiv」にも掲載しています。
呪部屋の生贄
猫屋敷 鏡風
ホラー
いじめっ子のノエルとミエカはミサリをターゲットにしていたがある日ミサリが飛び降り自殺をしてしまう。
10年後、22歳になったノエルとミエカに怪異が襲いかかる…!?
中2の時に書いた訳の分からん物語を一部加筆修正して文章化してみました。設定とか世界観が狂っていますが悪しからず。
ナオキと十の心霊部屋
木岡(もくおか)
ホラー
日本のどこかに十の幽霊が住む洋館があった……。
山中にあるその洋館には誰も立ち入ることはなく存在を知る者すらもほとんどいなかったが、大企業の代表で億万長者の男が洋館の存在を知った。
男は洋館を買い取り、娯楽目的で洋館内にいる幽霊の調査に対し100億円の謝礼を払うと宣言して挑戦者を募る……。
仕事をやめて生きる上での目標もない平凡な青年のナオキが100億円の魅力に踊らされて挑戦者に応募して……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる